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最近読んだ漫画、BEASTERS について

 Beastersという漫画を一気読みした。最近色々あって悶々としていたけど、読了後さわやかな気持ちになった。獣たちの哲学に触れられたおかげかもしれない。ほんのりネタバレあるので、気にしない人だけお読みください。

動物たちの物語の中の人間らしさ

 BEASTERSの世界では、動物が人間のように社会生活を営んで暮らしている。なんと現実の世界で「食う-食われる関係」である、肉食獣と草食獣も同じ社会を生きている。体のサイズも食べるものも違う個性的な動物たちがどう住み分けているのかを見るのがすごく面白かった。
 例えば、リスのような「小動物は大きな動物に踏まれないように通路の端を歩きましょう」、というようなマナーがある。実際に、象に踏まれ全身骨折した事故が出てくる。「小動物は廊下の端を歩きましょう」という注意喚起の掲示物があったりする。

あとは、リアルでいうスポッチャ的な存在として、種類によって違う動物の本能的な行動を思う存分できる場所が登場してくる(イヌ科ならボールを追いかける遊びができる)。「スポッチャ行こうぜ」みたいなノリで主人公とその友達はそこへ遊びにいく。この世界では当たり前の娯楽のようだ。もちろん普段の行動も、動物の習性に基づいていて、人間のような生活をしているけど、動物らしさ溢れるキャラクターばかりだ。

 全体として、動物の生態を非常に繊細に反映した作品で、動物好きならもっと楽しめる小ネタが散りばめられている。

強者の責任

 この物語に大きく関わってくるテーマでもあるけど、肉食動物は食肉を禁止されている。じゃあ何を食べて生きてるのかというと、生きていくために必要な栄養素は、殺生をしない方法で手に入れて取り入れている(作中だと昆虫食によるタンパク質摂取は法に触れないでできる)。例えば鶏卵は鶏の女性の賃金が発生する仕事の一環で産み出され、料理に使われている。

 しかし、本能として草食動物を食べてしまい、犯罪者として捕まる動物が後をたたない。でも「本能」だから、肉食獣にとってその行為は「悪いこと」と言えるのだろうか。でも確実に言えるのは、「社会的に食肉は悪」だということ。食肉を禁止するのはみんなが仲良く生きるために必要なルールだ。ルールは守らないと罰せられる。

 こうした問題って僕たちの現実の世界でも似たようなものがある気がした。個性を尊重して、お互いが住みよいように気を遣う。場合によっては、優位だったり、強い立場にある人が、力を抑えることもある。「でもそれって不公平では?」みたいな意見が出たり。一筋縄に行かない議論が作中でも展開されてて、読んでいて面白い。

 ちなみに主人公は大型肉食獣のオオカミで、自分が肉食獣であることに対して、とてつもなく葛藤している。オオカミっていうと、イケイケなイメージあるけど、主人公は大人しくて優しさを持ち合わせたオオカミだ。かなりのギャップだ。草食獣とも、他のさまざまな種類動物とも友情を築く。肉食獣でありながら、食肉を良しとせず、取り締まろうとする。大人しくて不器用で優しいけど、難しい問題にも立ち向かう確かな強さがあって、とてもカッコいい主人公だ。

主人公たちの恋愛で悶える

 そして、本作では大型肉食獣の主人公と小型草食獣のヒロインとの恋愛も描いている。作中の世界では同族のいわゆる純血の結婚が良しとされ、主人公たちはタブーとされるカップルだ。困難のある恋愛って燃えるけど、主人公たちには他にも障害物競走のように立ちはだかってくる。恋愛要素は強く、かなり生々しい。主人公以外にも前途多難な恋路がある。僕は不器用でもどかしい恋が好きで仕方ないので、今後もニヤけながら見守っていきたい。拗らせた恋愛をしてきた同志の方がいれば是非読んでほしい。

 Beastersの恋愛の障壁って、現実で言えば、同性愛とか肌の色の違いとかが当てはまるのかもしれない。今世界は変わってきてるけど、Beastersもそんな感じ。そのことを認めない大衆と、理解ある一部の人たち、みたいな。軽率に当てはめていい問題ではないと思うけど、僕は読んでいてどこか似ているように感じた。

オススメしたい人

・性別や戸籍など、持って生まれたものに対して葛藤がある
・拗らせた恋愛している
・動物が好き
・「完全なる正しさなんてない」ってことがわかっている
・哲学が好き
・不器用だけど頑張っている人(獣)が好き

上記の項目に当てはまったら是非。
作画も非常に緻密で、読みがいがあります。

僕の感想読んで少しでも興味を持ってくれたら是非読んで欲しい。


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