私怨は終わりましたが文学フリマに出ます

生活をしている。どうしようもなく。

目が覚めてキッチンに行き換気扇をつけて煙草を吸った。これが私の日常だった。たまにえずく。

朝食はいつからか食べなくなった。昔の私には、朝食を食べなければならないと言う決まりがあった。何故だろう。ずっとそれをしていたからそれをしていた。でもそれをしなくてもいいことに気がついた。重いパソコンを持って仕事に向かう。どうしようもなく生きている。

二年前、初めて付き合った男に振られた。好きじゃないと言われた。最初から最後まで、私のことを好きじゃなかったらしい。行き場のない悲しみと怒りは、大好きだったはずのその男に矛先を向けた。

文学フリマに出店した。その男がかつて文学フリマに出ていたから真似して私も出た。何でそんなことをしたのか。わからない。もしかしたら、私も同じところに行きたかっただけなのかもしれない。

私は何もしていない人間だった。ただ生きていた。生きているだけだった。何かになりたいと思いながら、それを切望するだけで何もしていなかった。あれがしたいこれがしたいと言うだけで、口だけで何も行動してこなかった。それがめちゃくちゃダサいと思った。だからやった。私にだってできると言いたかった。それこそダサいかもしれない。でもたぶんそれだけだった。

本は15冊くらい売れた。自分にしては上出来だった。よかったじゃん。でも何にもならなかった。何かになると思っていた。この経験は、自分の人生の糧になるのだと期待していた。別に何にもならなかった。それに気づく。

文学フリマの帰り道、最寄駅で元彼に出会した。私に一切気づかない、9ヶ月ぶりに見るその顔は、その月日を感じさせないくらい何も変わっていなかった。何も変わらないのだと思った。私もお前も。生活をしている。どうしようもなく。私の人生とこの男の人生は、交わることなんてない。生きている。違う場所にいる。その男にはその男の生活がある。あの汚いキッチンで一緒に煙草を吸うことはもうない。

ZOZOTOWNで服を買った。私はいつもZOZOTOWNで服を買う。生活をしている。生きている。

文章を書かなくなった。もう言いたいことは何もない。どうしようもなく自分の気持ちを消化させたかった。もう自分が誰かに何かを言いたくなることはたぶんない。よかったじゃん。この経験は糧になったじゃん。意味のないことを知れたじゃん。

自分を殺したくなった。何も書けなくなった自分。私には何もないのだと気づいた。それでも書こうとした。書きたい。書けない。その繰り返し。書いても書いても死にたくなるだけ。もうやめちまえよそんなの。生きてりゃいいんだって。どうせ何にもなれやしないんだから。

いろんなことが終わった。私怨も終わった。元彼のことなどどうでもよくなっていた。ただ生活をしている。可愛い鞄を買った。今度の土曜日はこの鞄で出かけよう。服は何を着よう。可愛くしていこう。可愛い間は生きられる。私はまだ生きていられる。

生活をしている。どうしようもなく。

5月29日開催 文学フリマ東京
出店名  完全に私怨
ブース  ス-42
タイトル 終わり

追記
今回出す本は、曖昧な怒り任せに書いた文章です。私怨本です。頭が馬鹿になって書き切った時はこれでいこうと思い入稿しましたが、自分が本当に書きたかったものなのか、今はわからないです。でも、私怨の終わりには相応しいかも知れません。最後の足掻きです。

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