見出し画像

内科医がパーソナルトレーニングジムを立ち上げる理由

診療所勤務の内科医が、今度パーソナルトレーニングジムを立ち上げようとしている。ほんの思いつきから始まったこのプロジェクト。今となっては多くの人を巻き込み、なんだか数カ月後にはリアルに稼働し始めそうな勢いだ。


医師としての限界を感じる

数多くの患者を見てきた。とくにここ数年は診療所でフロントラインを担い、地域に根付いて一般市民に最も近いところでたくさんのことを考えさせられた。

この人たちを、いつまでも元気に、心も体も健康に、幸せに最期まで迎えさせるためにはどうしたらいいんだろう。

この命題に対する答えが医療ではないということは、明確に私自身の中にあった。いや、「医療」という括り自体がナンセンスだと、肌で強く感じるようになった。診療所というセッティングでいつまでも患者さんと向かい合っていても、上の問いには一生答えられないんだなと。
(※本職はここのクリニックの院長です)

診療所からでてみることにした

医師、医療、クリニックという枠組みを解体し、一歩外に出ることで自分自身に見えている課題を俯瞰してみた。そうすると、ちょっとスピリチュアル的になってしまうが、宇宙的時間の流れや「動物」としての人間の在るべき姿を感じ取れるようになってきた。様々な課題が、そこに集約されるのではないかという仮説ができた。
私たちの今いる現代は、科学の進歩や経済の発展に伴ってとても便利で安心な社会である。この文章を書いているMacBook然り、新たなウイルスが出現してから様々な治療薬やワクチンが作られ世に出るスピード然り、本当にすごい世界にいるとつくづく思う。ただその一方で、私たちがいるここは宇宙であるということや、私たちは動物であるということを意識することは日常ではほぼ無く、結果としてそれに逆らって生きていかざるを得ない。
今回「宇宙」のことは一旦置いておいて、動物という観点で話を進めたいと思う。

動物としての人間

いろいろな課題があるが、大きく2つに分けて考える。

  1. フィジカルの問題:ロコモティブシンドローム

  2. メンタルの問題:うつ、不眠、自律神経異常 etc.

大雑把に言って、人間たちをいかに野生動物に近づけるかということを考えたときに、この2つの課題は解決策を見いだせる。

  • 朝から晩までずっとデスクワークで帰ったら夕飯食べて寝るだけ

  • リモートワークで外に出る機会が減り、太陽の光をあびることが少ない

  • 夜遅くまでPCとにらめっこ。寝る時間になっても頭は冴えている

  • 足腰の衰えを感じているために、すべて宅配に頼ってしまう高齢者

たとえばこのような人たちは、当たり前だが野生動物の生活とはかけ離れている。結果として筋力が低下したり、余分な脂肪がついたり、膝が悪くなったり、眠れなくなったり、慢性的な疲労感が取れなくなったりする。
このような状態を「医学」が解決できるか?
答えは「否」である。薬では治らない。

心→体のベクトル

私はもともと総合内科医で、身体に生じる問題を診察や検査を行うことで原因解明し、治療していた。しかし数多くの患者を見る中で、「なにも異常がないのに様々な症状を訴える」ということがしばしばみられるということを実感していた。

Dr:「なにも異常がありません。よかったです!」
患者:「いや、でもまだおなかが痛いんですけど。。。」

このような乖離は医者であればよく経験すると思う。いわゆる不定愁訴で片づけ、患者は追い帰されるのだ。

あるとき心療内科に出会った。しっかりと研修し、数多くの症例を経験した。ある身体的症状に対して、心という別の窓口から覗いてみるとその原因が浮き彫りとなり、そこに介入することで結果として身体的症状も改善するという不思議な経験をした。ただよく考えてみると、なにも不思議なことはなく、その症状を引き起こしている背景(家庭の状況や職場環境など)にフォーカスするとすべてが自然と理解可能になる。このように、心→体のベクトルが心療内科だ。

体→心のベクトル

心と体はこんなにも密接に関わり合っているということを体感した私は、またその逆も体感することになる。
慢性的な疲労感を感じる毎日。仕事も終わって帰って寝たい!という気持ちにあえて反抗しガッツリ筋トレを行う。そうするとあら不思議、気分はすっきりと晴れ、慢性的な疲労感は筋肉の心地よい疲労感へと変わり、なんだか元気が出てくる!
これが、体→心という心療内科とは逆ベクトルで作用するコンディショニングだと実感したのだ。
これは、日常的に運動したりスポーツをしたりする人たちにとっては至極あたりまえのことだと思う。ただ、もともと医師として身体だけを診ていた自分が「心→体」のベクトルを理解し、さらに自分自身の体で「体→心」のベクトルを体感したのは、ものすごく大きな発見であった。

頭ではわかっていても

ここまでの話を聞いて、「目からウロコの落ちる話!」とか「全く思いもよらなかった発想!」と感じるひとは少ないと思う。「いや、そりゃそうでしょ」という感想をお持ちだと思う。
ただ、頭で理解しているのと、実践し習慣化できるのは、天と地の差がある。診療所でいくら食事や運動の重要性を口頭で伝えても、そのとおりにやってくれて習慣化できる人は非常に稀だ。
実践し、習慣化するところが人類最大の課題と言っても過言ではない。

だからパーソナルトレーニング!

そう。だからパーソナルトレーニングなのだ。
前置きが長すぎてごめんなさい。でもここまでの文脈がないと「なんでパーソナル立ち上げるのか?」という疑問に答えられないのです。

しっかりと、医学的な知識をもとに、医学的「ではない」観点から解決策を見出そうとすると、やはり動物に戻るという方向性を指南することが大切となる。
サバンナで生き延びようとする野生動物のように、太陽の出入りに合わせて覚醒を繰り返し、日中はお腹を空かせて交感神経MAXでエサを獲りに行く。それを現代社会に生きる我々に求めるのは酷だが、筋力トレーニングをメインとした運動を定期的に行い、食事や生活リズムを含めた日常を指導し、しっかりとしたフォローアップを行うことができるのがこのパーソナルトレーニングなのだと思う。人類最大の課題である「習慣化」まで持っていき、卒業となる。
ここまでの話でお分かりだと思うが、ただ筋トレして終わりというジムを作るつもりはない。医師監修のもと、各お客様の現在地点を認識し、最終目的地を設定し、そこまでのナビゲーションを丁寧にさせていただく。余計なお世話と思う方もいるかもしれないが、決して安くない料金を払うのだから、それくらいの真剣さをお客様にも求める。時にはコーチング、カウンセリングのようなことも織り交ぜ、「なりたい自分」に近づけられるようなお手伝いをさせていただきたいと思っている。


おまけ:ファスティングのお話

パーソナルトレーニングというと、「痩せいたい!」というボディメイク目的の人がかなり多いと思う。はじめに言っておくが、痩せたいのならトレーニングだけでは無理で、食生活の見直しが重要性としては大部分を占める。
そこでもっとも手っ取り早く、健康的な観点でもとてもおすすめなのが「ファスティング」だ。
私自身も5日間のファスティングを経験した。空腹による辛さは無く、むしろ体が軽くなり、集中力が上がり、瞬間的には4kg痩せた。いまは増量中で筋力アップを目指しているので継続的には行っていないが、私の妻は驚くほどの効果を実感し定期的にファスティングしている。
(私たちがやった岡田サリーさんのファスティングはこちら)
しかしこのファスティング、運動も併用していかないと確実に筋力も低下してしまうところが難点だ。余計な脂肪が削ぎ落とされて見た目はとても美しくなる。さらにそこへトレーニングを加えることで、引き締まったより美しい体となり、老後に(かなり先の話だが)寝たきりになるリスクも減る!まさにファスティングとトレーニングの相性は抜群だと思う。ということで、こちらも強くおすすめする。

最後に宇宙の話をちょっと

ビッグバンから始まり今も拡張し続けている宇宙にたまたま存在している私たち。
そのとてつもなく大きな流れの中にいることをたまには思い出し、抗わずありのままでいるのも大切かなと。続きはまた別の機会に。。


Akala Fitness(2022年3月オープン予定)
Facebook
Twitter
Instagram

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?