【備忘録】浦和レッズの3年計画と2020シーズンのおさらい
はじめに
この記事は、今更ながら浦和レッズの3年計画とはそもそも何か? そして3年計画から逆算した時の2020シーズンの課題とはなにか? を簡単にまとめています。2019年12月に発表された3年計画に沿ったチーム作りができているかを確かめるためにご利用いただければと考えています(9割私自身が利用するために書きましたが)。
※記事の内容は浦和レッズの公式サイトのものを参考にしております。したがって、特に目新しい情報や私独自の解釈などはほとんどございません。
3年計画のおさらい
3年計画の概要
浦和レッズが2019年12月に掲げた計画。今までの浦和は短期的な勝利だけを求めていたが、その代償に様々な課題を抱えるようになってしまった。そのため、3年という中長期的に計画を立ててそれらの課題を解決し、目標を達成することがこの計画の目的。具体的な目標については以下参照。
1年目 ACL出場圏内と得失点差プラス2桁、コンセプトの浸透
2年目 飛躍の年(具体的な目標なし)
3年目 リーグ優勝
これまでの浦和の課題
1.クラブと地域&サポーターに距離感ができた
浦和レッズというクラブと浦和という地域に溝ができた。また、選手自身も浦和という地域をもっと知らなければいけないとあるように、恐らく選手側から浦和への関心が薄くなっている。
2.サッカーの方向性が一貫していない
短期的な結果を求めすぎた結果、監督を短期間に数度交代。その時々の監督の要望によりピッチ上で表現するサッカー、獲得する選手に一貫性がなくなり、試合の質が低下し求めていたはずの結果が出なくなってしまった。
上記の課題を解決するための手段
キーコンセプトとチームコンセプトをチームやクラブに植え付ける。
キーコンセプトについて
浦和の責任という言葉でまとめられている。浦和レッズの選手であるという自覚を持ち、浦和という地域からリスペクトされる存在になる、という意味。具体的には以下参照。
♦「浦和」を背負う責任
浦和レッズの選手は、「浦和」を背負う責任を持たなければなりません。それは浦和レッズを代表し、象徴する存在であることを自覚して、その責任が伴った行動をする必要があるということです。そして、浦和というホームタウンが持つサッカー百年の歴史や地域性を理解し、感謝の気持ちを持つとともに、浦和レッズの選手の振る舞いを見た社会の人々から浦和レッズの選手のようにありたいと思ってもらえるようになる必要があります。
チームコンセプトについて
浦和レッズというチームがピッチ上で示すサッカーの方向性を指したもの。方向性を示すことで、チーム内外に浦和レッズのサッカーを共有し、一貫性を持たせる。そしてピッチ上で示すサッカーに「ブレ」を無くし、継続的なチームの勝利や一貫した補強を目指す。チームコンセプトは3つの要素に分けられている。
1.『個の能力を最大限に発揮する』
個の観点。選手個人が能力を発揮できるようにする。個人が成長するための競争原理が働いているか。
2.『前向き、積極的、情熱的なプレーをすること』
姿勢の観点。失点を恐れず攻撃的にサッカーをする、ゴールを守るのではなく点を取るために守備をする、2点取られようが3点取りに行く姿勢を指す。
3.『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』
チームの観点。ボールを奪われたら際の切り替えの速さや即時奪還、守備への献身性、守備でハイラインを敷く、時間をかけず最短距離でゴールを目指す戦い方を意味する。認知、実行のすべてをできるだけ速く実行することで実現することを目指している。
また、上記3つのチームコンセプトを継続的に表現するためのチーム編成システムを確立したいと考えている。具体的には、チームコンセプトを体現するための選手の評価基準を言語化、数値化する。それによってスカウティングや選手編成に活かす。具体的にはSAPなどのITソリューションなどを活用したい。そして、今後はアカデミーや地域にも広めていく予定。
3年計画を実現するためのフロント陣とその人選理由
1.フットボール強化本部の設置
まずフットボール強化本部を置く。これは、いわゆる経営面と競技面(トップチーム)を分け、競技面の向上に専念する人材を置くのが理由。2019年まで置いていたGM職はトップチームだけでなく育成やレディース、経営なども担当業務に入っていた。今回設置するSD職やTD職は競技面に特化し、トップチームの改革を目指す(ただし、フットボール本部長についてはGM職同様経営面にも関わる)。
2.SD職とTD職の詳細な役割
SD(スポーツダイレクター)はトップチームに特化した責任者で、チーム編成や他クラブとの交渉、契約業務を担当。
TD(テクニカルダイレクター)はSDの補佐や選手のスカウティング、選手のリストアップ、監督や選手、スタッフの評価を担当。
3.各役職の人選
フットボール強化本部の部長 戸苅さん
スポーツダイレクター 土田さん
テクニカルダイレクター 西野さん
それぞれ浦和レッズのOBであり、クラブのことをよく熟知していることが共通の専任理由。戸苅さんはフロント側として、土田さんは現場で浦和レッズに長期的に関わってきている。また西野さんは浦和レッズから長年離れているが、スポーツマネジメントに精通し世界のサッカー事情やトレンドに熟知しているため、それらの知識を活かすことが期待されている。
上記3人に立花社長を加えた4名で風通しの良いクラブを作り、変革を目指す。風通しの良さとは、外部からの意見や批判を受け入れていくことを指す。
2020シーズンの監督について
監督は大槻さんが続投。キーコンセプト、チームコンセプトを浸透させることができると判断された。
2020シーズンのチーム目標
前述の通りACL出場と得失点差プラス2桁、またキーコンセプトとチームコンセプトを浸透させること。
2020シーズンの総括
参照資料:ファン・サポーターのみなさまへ「2020シーズン振り返りと2021シーズンに向けて」
成績について
ACL出場と得失点差プラス2桁は達成できず。
キーコンセプトの観点から
試合の最後まで浦和レッズの選手として戦える試合もあった。しかし、ホームで負け越しており、またたとえ勝てなくても全力を尽くす姿勢を見せ続ける必要があったが、できなかった。
チームコンセプトの観点から
1.『個の能力を最大限に発揮する』
チームの戦い方に順応し最大限能力を発揮できた選手もいたが、一方で発揮できないままシーズンが終わった選手もいた。この点はチームの戦術にも問題があったとしている。
2.『前向き、積極的、情熱的なプレーをすること』
シーズン中の振れ幅が大きく、できた試合とできなかった試合があった。要因としては「リーダーの不在」「チームの型がない」「リアクションベースの試合が増えてしまったこと」を挙げている。
3.『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』
特に2020シーズンは切り替えの速さと高い守備への献身性を重視。切り替えの速さの中でも「守備からの攻撃の切り替え」はよくできており、献身的な守備は表現できた。一方で、ハイラインを保つこと、即時奪還、最短距離でゴールすることについては課題が残った
監督について
大槻さんにはキーコンセプトを浸透させてくれたが、ピッチ上での結果が出ずチームコンセプトの実現が伴わなかった。そのため、スタイルとサッカーの方向性が伴い、尚且つチームコンセプトにおける課題を解決できる監督を新たに招聘する。
今後のチーム編成
チームコンセプトを基に、年齢も加味して中長期的に編成していく。特に、若く伸びしろがある選手、独力だけでなくコンビネーションプレイができる選手の獲得を目指す。そしてチーム内競争を起こしチームを活性化させたい。
リカルド招聘理由
2020年に掲げた『即時奪回』『最短距離でゴールを目指す』サッカーに、常に『主導権』を持ち、より『攻撃的』で、ハイブリッドなサッカースタイル(カウンタースタイルとポゼッションスタイル)を実現することを目的に、リカルド ロドリゲス監督を招聘することにしました。
あとがき
2021の6月時点で、リカルド率いる浦和レッズは徐々に結果を出しています。一方で、ピッチ上で見えるサッカーを見てみると「3年計画で打ち出したチームコンセプトに基づいたサッカーができているのか?」ということに疑問を持ちました。今回の記事は3年計画を改めて理解することで、浦和レッズの状況を正しく認識したいと考え執筆いたしました。
ご覧になった読者の方にも「3年計画ってなんだっけ? 何が浦和のなの?」ということをご理解いただく一助になれば幸いです。
時間があれば2021年7月の中断期間に入った時期に、3年計画という観点から2021シーズンの前半を振り返る記事を執筆する予定です(やらない可能性のほうが高いですが…)。もし投稿した暁には、ご覧いただければ嬉しいです。
※もし重要な箇所の記載漏れや、誤った箇所があればコメントにてご指摘いただければ幸いです。
※現在3年計画発表時に公開されたパワーポイントの画像を探しております。5年後にACL優勝などと記載あったかと思いますが、ご存じの方はコメント欄にURLなど貼っていただければ幸いです。