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(500)日のサマー (2009) (500) DAYS OF SUMMER 監督 マーク・ウェブ

フリーハンドでビルが描かれてゆくオープニングを見た瞬間から、ああ、絶対に好きな映画、って思いました。

トム君のへなちょこ具合がどーしようもなくかわいいんです。建築家を目指していたけれど、挫折してグリーティングカードの会社で働く彼。運命の恋を信じているけど、恋した子に声もかけられない彼。声をかけるまえに勝手に深読みして落ち込み、友達を巻き込む彼。一瞬、恋がうまくいったようにみえて世界が薔薇色になりいきなりミュージカルが始まり、仕事もノりまくる。そして関係がうまくいかなくなると、わかりやすく落ち込む(ちなみにこの時の社長のアドバイスがおかしかったです)。そんなへなちょこだけどトム君は、未完成ながら彼独自の世界というのを持っていて、古く美しい建物を愛してる。それでもっと街を生かしたいという夢を持ってる。

サマーと一夜をともにした翌朝のトムの幸せ感、高揚を表現する、ディズニーばりのミュージカルシーンは超大好き。トムの期待と現実を二分割の画面でみせてゆくシーンは残酷だけれど面白い。

サマー演じるゾーイ・デシャネル。見た目もかわいいけど、「フラニーとゾーイ」に由来するという名前もカッコいい。ものすごい美人でもスタイルが良いわけでもないのに、アンティーク雑貨屋さんから抜け出したお人形のような独特な、ややレトロでグッドガールなファッションと髪型、北欧の湖のように深く青い瞳が印象的です。それでいて行動はエキセントリックでドライ。純朴でやや幼いトム君は振り回されてしまうんです。

映画「卒業」が恋の転機になってしまいます。あのサマーの涙は、永続する恋なんて幻想だ、という悟りと諦めの涙だったんでしょうか。

500日目。ビターだけどスイート。トム君はちょっとだけ、大人になりました。

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