プロローグ

男は空を見上げていた。

男はギャンブル依存症。
この1ヶ月パチンコスロットで30万近く負けていた。
しかもこの30万は消費者金融からの借入である。


一昨日、男は出張先で夜またパチンコにいき更に5万負けた。この5万ももちろん消費者金融からの借入である。

そして昨日、その5万を取り戻そうと消費者金融から借入をしまたパチンコへ...

泣け無し以下の人の金を さも自分のものかのようにサンドに入れていく。
5万円を取り戻すためにまた5万円が吸われる。
そんな異常な状況にも関わらず「しかたない」と。

残念ながらこいつの脳は麻痺しているようだ。

男はやめるわけでもなく財布に残っていた最後の千円札2枚を取り出した。
しかも、なぜかこの二千円で先バレがくる。と
その先バレでラッシュがひけるかも。と
謎の期待、謎の自信である。
まったく意味が分からない。

そのまま負けた男はその後
5万円以上負けたとは思えない太っ腹な食事をとったようだ。ヤケ食いなのだろうか。
その後、近くの喫煙所で1人タバコを吸った。

いつもは「今日も負けた」「くそ」とイライラするところだが、この時は真逆であった。

妙に落ち着いて

「おれは、何をやってんだ...」

男の頭の中で何かが切れた。

「おれは何をやってんだ」は得意技だが、今回は何か違かった。
具体的には説明が難しいが、とにかく何かが。

空を見上げると星が綺麗であった。
自然と 大切な家族の顔が浮かび、そしてこれまでの人生を振り返った。

これは、人間のクズが人間になる為の更生記録である。

人生を立て直す為の

死に際に「良かった」と言える為の

数日でこの決意が終わってしまうのか。
数年でこの地獄を終わらせることができるのか。

それは分からない。

しかし、このめんどくさがり屋がこうしてこんな文章を打っている時点で
少なくとも、今までよりも本気で決意しているようだ。

俺は、しばらくそのまま空を見上げていた。