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好きな食べ物

 結構前に書いたが(どれくらい前だかは分からないが、奇蹟的に、とんでもない名文だったかも知れない)、私の「好きな食べ物」(そもそも、この「好きな食べ物」というのが全体に謎であり、要は差別主義者のレッテル貼りに過ぎないことについても、私は以前に書いたはずだが、なにかの弾みで、とんでもない名文だったかも知れない)は病院食である、そういうことだ。エーコにあるような百科辞書的効果を狙って()が頻用されてしまい、非常に蛇行したのでもういちど言い直すと、私の好きな食べ物は病院食である。これを、私にとっての郷里の味、といってもいいだろう。だが最近はボケているので、あなたの好きな食べ物はなんですか、と下らない質問を相手方から受けとっても、たちまち「病院食だコノヤロー!」とは答えられないケースも目立ってきてしまった。昔は食い気味に、「あなたの好きな食べも――」「病院食だつってんだろコノヤロー!」とまあ、こんな感じだったと思う。「あなたの好きな――」「病院食だワリャー!」、とこう、昔はキレがすごかったのだ。
 ところが最近、
「あなたの好きな食べものはなんですか」
「ンアァ!?」
「あなたの好きな食べものはなんですか」
「オォ……?」
 と、こう、健忘状態になってしまう。頻尿もひどい。物忘れ外来に入院した方がいいのかも知れない(病院食も食べられる)。
 本当はこう答えたかったのだ。
 お弁当や、時々定食屋さんなどでも揚げ物の下に敷かれてある、くったくたの味も碌についていない、日伊宗教戦争を用意するかのごときあのスパゲティ。あれが私は好きなのだが、紙幅の都合で(途轍もない大長編になることが予想される。しかもプルーストというよりは「霊界物語」的な長さである)くわしくは後日、私はそれを書くのである。投げ銭くれよ……。

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静かに本を読みたいとおもっており、家にネット環境はありません。が、このnoteについては今後も更新していく予定です。どうぞ宜しくお願いいたします。