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映画レビュー(劇場で観たものにかぎる)

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チャーリー・バワーズ上映会はこの記事では取りあげずともよかろう。

「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」(☆☆☆☆)
 編集に独特の粗野さが目立ち☆三つ寄り、とは云っておくが、きっと単に映画としてこの映画を評価する態度自体が軽率なのであって、ダニエル・クレイグの最後のジェームズ・ボンドを堪能させてくれる。どんどん顔も演技も良くなりながら、最後まで駆け抜けてくれたダニエル・クレイグを見送るための映画であり、地元のしょぼい劇場ではなくTOHOシネマズで観た甲斐があった。

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 「由宇子の天秤」(☆☆☆☆☆)
 見事な映画、紛れもない☆五つである。配役はこのような俳優を子役に至るまでよく見つけて来る、という適切さであり、ベストアンサンブルキャストといえる。撮影、編集は適確で、絵的に単調に感じさせるのではなく寧ろひとつひとつのシークエンスが適切に、ミステリアスにかみ合っており、ひとりの人間を善や悪といった物差しで測り得ないものだとする、至って真っ当で穏当な感覚を、サスペンスフルな展開とともに視聴者に賦活させてやむことがない。森達也が「FAKE」で撮ったのと同じようなことを云っている映画でありながら(あれはあれ、あっちはあっで良い映画であるという感想を持っているわけだが)、こちらはフィクションとして、かっちりと効果を狙って作り込んでいる分、評価は高くなる。

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 「DUNE 砂の惑星」(☆☆☆☆☆)
 DOPEなトラックをOSTに使うセンス、文学的な香気、ブレードランナーの新作を堂々と構築できる天才肌の監督が、ついにハリウッド式の大作を作り始めたその一作め。非常にコアなセンスによって、なによりも感覚に訴えて理解をさせていくストーリー運びは贅沢のひとことで、圧倒的な映像的豊かさと音の美しさに震撼させ続けてくれる。今後引き続き上映されていくので、絶対に映画館で確認しておくことをお勧めしたい。

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 「ほんとうのピノッキオ」(☆☆☆☆☆)
 中野翠(一目置いている映画レビュアー)が褒めていたので観てみた。星五つでは足りない! 大傑作である。ジム・ジャームッシュの映画などで存在感を示していたロベルト・ベニーニの奇妙な哀愁をたたえた演技は史上最高(ちなみに昔「ピノッキオ」で酷評されています)、絶妙であり、特殊効果によるピノッキオも終始面白い。日本ではダーク・ファンタジーという売りにしているが、次からつぎへと珍妙なキャラクターが現われては主人公のピノッキオが成長をしていく筋のはこびは、むしろ正統的なピカレスク・ロマンの香気を芬々とさせていてやむことがない。十九世紀の小説を読みながらそだった人間にはたまらない交響性、存分にヒネクレながらもアヴァンギャルド振らず堂々とみせてくれる成り立ちは、かつて小説もこうだったのに……と絶望させてくれるほどの出来映えだ。

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静かに本を読みたいとおもっており、家にネット環境はありません。が、このnoteについては今後も更新していく予定です。どうぞ宜しくお願いいたします。