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【アニメ感想レビュー】"魔法少女まどか☆マギカ" 今宵の夢の幕開け

 昨年映画館でキラーオブザフラワームーンを見た際、「劇場版魔法少女まどか☆マギカの ワルプルギスの廻天」の予告を見た。面食らったので、アニメの視聴を決意した。
 たった今アニメを見終えた印象としては、劇場で続編を見たいと強く感じた。

評価9/10
・緻密に設計された話の構成と脚本。スピーディな展開で畳み掛けるような伏線回収が見どころ。
・可愛いキャラと息苦しい話のギャップとそのバランスに斬新性を感じた。
・世界設定描写と音楽が優れている。

 呪いや魔女のデザインについて、映画で言えば、デヴィッドリンチ的。
 密室で、身近そうな空間の中で異形が平面的に動く。トラウマを与えてくる。リンチの短編映画Alphabetが近い。
 なお、リンチの鑑賞にあたっては注意されたい。とりあえず安全めなPS2のCMをどうぞ。


 近未来描写は現実と非現実が融合した世界。
・実際の都市東京の存在。
・エヴァンゲリオンのミサトの居宅のような集合住宅。
・映画ツリー・オブ・ライフのようなスケスケの建物。
・BLEACHの虚夜宮のような学校の屋上。
・FF7のプレートのような地面。

ツリー・オブ・ライフより
ツリー・オブ・ライフより。
まどマギでも窓の外には緑が生い茂っていた。
青色はエヴァのようだった。

 音楽については、
・攻殻機動隊のような重厚さ
・ICO(PS2のゲーム)のような神聖さと透明さ・メタルのギターが響く。


 以下、内容にガッツリ触れていく。
 映画に備えた自分のメモとして残す意図があり、ガンガンネタバレしていくので、ご注意頂きたい。
 よろしく頼む。

以下ネタバレあり感想




1〜3話 魔法少女の遭遇(マミ編)
4〜9話   魔法少女の悲運(サヤカ・杏子編)
10〜12話 魔法少女の選択(まどか・ほむら編)

の三つに分解して語ろうと思う。
(サブタイトルは私の方で勝手に決めた)

1〜3話 遭遇

 主人公の背景は幸せだ。
 裕福な家庭、家族仲は良くて、親友がいて、年頃に成長している。客観的に見ればすでに幸福を掴んでいる女子学生。
 この要素が後述のマミの話をうまく引き立てている。また、まどかが最強の魔法少女である謎を引き立てる。
 恐ろしい事件に巻き込まれてもトラウマにならず、夢なのか?と勘違いしてしまうくらいお気楽なまどか。
 安直だからなのか、人助け、貢献するという大義を見出すことに興味津々なまどか。

 マミの話についてミスリードが巧妙だ。
 まず主人公はすでに幸せであって、視聴者からすればマミ達によって事件に巻き込まれていく状況の悪化に、ストレスを感じる。

 マミのクールさと何か隠してる感が、
主人公に迫る"契約"と状況の悪化に拍車をかける。

 魔法少女の大変さについて少し教えるだけで、本当の闇を教えない。まるで大企業のリクルーターのよう。悪い大人が子供を騙している構造である。ひょっとしたら狡猾なキャラクターなのか。ほんの少しマキマっぽい。

 そして、3話で明かされる。マミの真意とは、
「孤独な自分を救う"真の友情"を求めていた」
のだいうことを。
 おどろおどろしい悪夢のような異形に食われ、少女の命の脆さ肌で感じる。
 同時に、マミをリクルーターやら、悪い大人と思ってしまった自分の短絡的な考えを悔いる。

4〜9話 悲運

 魔法少女の選択に納得がいくのは、動機の部分を丁寧にはっきりと描いてるからだろう。
 そして、彼女たちの行動の結果に息が詰まる。
見ていて、苦しくなるような展開である。
 所謂タイムループものでありがちな、運命を変える重みや不利益がテーマであった。

 この5話では新しい魔法少女が次々と出てきた。戦う相手はこれまでの魔女と変わり、魔法少女になった。

・杏子:家族思いで絶望からの脱却から生じた結果から、自分の為に尽くす。
・さやか:生真面目で頑固な性格と正義感によって、他人の為に尽くす。
十字架を背負った魔法少女各々の思想、信念は尊い。
絶望と希望は等価交換。
押さえ込む光が強ければ強いほど、解放された闇の力は増幅される。

 さやかは、片思いの幼馴染を救った。親友を救った。しかし、それら2人が結ばれる。仁美ちゃんが恋敵となってしまった。
 自己犠牲の強迫観念に潰されたさやかは魔女となった。(ガンダムUCのよう。)

 世界についての秘密が明かされていく。
・ソウルジェムとは魔法少女になることを決意した人の魂が具現化したもので、その肉体はただの器でしかなくなること。
・魔法少女のソウルジェムは濁り、将来的に魔女になる。


 さて、まどかは理屈とかじゃなくて、
感覚で動くタイプ。純真無垢。
魔法少女の闇の世界に光る太陽のようだ。
特にこの4〜9話は暗い話で、多くのキャラが涙している。このため、まどかの涙は見ていて辛い。

涙するまどかを誘惑する悪魔きゅうべえは言う。
私と契約して魔法少女にならないか?

きゅうべえはひろゆきか呂布カルマのようで論破野郎。(ただの説明不足な輩で草。)
地球外生命体で、人間の上位者的存在であった。この点は、序盤のミスリード(ほむらがきゅうべえに襲われて、まどかに保護される描写)が上手く効いていた。

4〜9話については、
 これまで積み上げてきた友人関係や描写が有機的に息の詰まるような鬱展開を組成していく。
素晴らしい。
 そんな辛い話ではあったが、杏子がさやかと友達になろうとしている姿に希望を感じた。

10〜12話 選択

 多くの魔法少女の命が絶たれて、まどかとほむらのみ残された。

 そしてやってくる。

ワルプルギスの夜。
正式名称・舞台装置の魔女。(本名不明)
その性質は無力。回り続ける愚者の象徴。歴史の中で語り継がれる謎の魔女。
魔法少女にとって最悪の強敵。災厄。

劇場版魔法少女まどか☆マギカ ワルプルギスの廻天予告より

 ワルプルギスの夜の存在って、
チェンソーマンの銃の悪魔みたい。

 10話でほむらの秘密が明かされた。
ほむらにとってのたった1人の友達、まどか。
ほむらは、まどかを救う為という一心でタイムループという永遠の迷路に閉じ込められていた。
 このタイムループにより、まどかを中心軸に並行世界が乱立することとなった。そして、それら世界の因果線がまどかに連結された。この現象はタイムループの副作用であり、最強の魔法少女に育成してしまっていた。なんとも悲しい因果である。
10話のオープニングがエンディングになるという演出は妙だった。

かつて希望を運び、いつ呪いを振り撒いた存在。
【円環の理】によって救われた。

劇場版魔法少女まどか☆マギカ ワルプルギスの廻天予告より

まどかは魔法少女になることを決意する。
「全ての宇宙、過去も未来も含めた全ての魔女を生まれる前に消し去ること」を願いとした。
結果的に、この世から魔女を消滅させ続ける概念となり、誰からも認識されない神のような存在となる。

ほむら「これがまどかの望んだ結末だって言うの。これじゃ死ぬよりももっとひどい」

まどか「ううん。今の私にはね、過去と未来の全てが見えるの。かつてあったかもしれない宇宙も、いつかあり得るかもしれない宇宙もみんな。
だからね、全部分かったよ。いくつもの時間でほむらちゃんが私のために頑張ってくれたこと。
何度も泣きながらキズだらけになりながら、それでも頑張ってくれたこと。ずっと気づけなくてごめんね。
あなたはわたしの最高の友達だったんだね。」

 ほむらだけじゃない。さやからも救われた。呪いは形を変えて、魔女の存在が魔獣に置換された。ほむらはまどかのリボンを携えて、まどかの記憶を大切にし、魔獣との戦いに挑んでいた。ここで物語は幕を閉じる。

 個人的に最終盤の展開については、自己犠牲という、ありがちなオチではあった。ただ、まどかがその役割をやってのけたのは珍しいなと感じた。能天気な性格とあのデザインからは想像できなかった。コードギアスのルルーシュみたいなのとは訳が違うわけです。

 攻殻機動隊の草薙素子のネットに消える的な普遍的存在となってしまったまどか。まどかとほむらはまるで素子とバトーのよう。

 終盤で話のスケールが急に大きくなった。上手くまとまっていたと感じたけど、同時に急拵え感も少し感じた。まどかの決断が大きすぎたたからだろうか。
 一つの超常現象が、過去未来そして神に繋がる構成はゲームのSIRENのよう

 余談ですが、宇宙がどうのこうの、地球外生命体が、、とかBloodborne的なものを感じた。
 頭の中はヤーナムなんすかねぇ。

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