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「経験知」が、選ばれる士業になるための差別化になる 赤井塾16

今回のテーマ

「士業の理想の姿」を実現するために必要な4つの条件として、既にお伝えしたテーマの中からいくつかの話をセレクトして少し深掘りをしていきます。

今回は、選ばれる士業になるための差別化についてです。

主たるサービスについての差別化としては、①専門分野での特化と②ターゲットとする顧客の属性での特化が考えられます。

このうちの専門分野での特化に属することになると思われますが、現場での「経験知」を有しているということも差別化のための一要素となります。

ここで言う「経験知」とは、経験者にしか分からない現場での知識のことです。

前には、この点にまで触れることができませんでしたので、今回は、この点についてお話しします。

各士業における具体例

分かり易いところでは、税理士の中でも、前職として国税の調査部門に在籍していた方であれば、税務調査について、経験者でなければ分からないような現場での知識を有しておられるでしょう。

どの程度の情報を持って調査に入るのか、さらに調査により情報を獲得するためにはどういった手法をとるのか、どういった対応をされると調査がやりにくいのかなどといった現場での経験に基づく知識です。

そして、こういった現場での経験に基づく知識がクライアントのために活用できるのであれば、このような「経験知」があるということは、十分に差別化の要素となります。

クライアントからすれば、相手の手の内を知り尽くしている税理士の方が、頼りがいがあって、安心して任せることができると思うであろうことは容易に想像できることです。


また、社会保険労務士の中でも、労働基準監督署での仕事をしていたことがあるとか、年金事務所での仕事をしていたことがあるといった方は、そこで仕事をした経験がなければ分からない現場での知識を有しておられるでしょう。
役所内部の事情も含め、役所としての仕事のやり方、進め方などといった現場での経験に基づく知識は、こうした役所の内部で実際に仕事をしてみなければ分からないものです。

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役所だけでなく、民間の企業で経験した現場での知識も大きな「経験知」となり得ます。

大企業の人事部に勤務したことのない者には、大企業の現場でどのようなリクルート活動や採用活動がなされているのかといった実情を知ることはできません。
この「経験知」を有している社会保険労務士であれば、採用人事関係の業務に関しての差別化が可能です。

金融機関の融資部門にいたことのある税理士であれば、どのようにすれば融資を受けやすくなるのかという「経験知」を有しているので、資金調達に関しての差別化は容易でしょう。


弁理士の中には、企業の研究部門に在籍していた方が少なくありませんが、そのような方もある特定の分野については、他の人では知り得ない「経験知」を有していると言えます。

ほかにも、宗教関係への勤務経験なども、内部にいなければ分からない「経験知」を得るための貴重な経験となり、この「経験知」を有している行政書士であれば、宗教法人関係の許認可をする際にも、他との差別化を図ることができるでしょう。

私自身の例

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私には検事としての「経験知」があります。

検事については4年間と短い期間の経験ではありましたが、現場での経験のない方には分からないことをいくつも知ることができました。

そして、その「経験知」は独立した当初に手がけていた刑事弁護の分野で、他の弁護士との差別化に大いに役立ちました。

検事は、取り調べの際にどのようなことを考えているのか、どのようなスケジュールで動いているのか、事件の決裁に行くタイミングはいつか、どういった要素によって処分を選択しているのかなど、こういったことは現場での経験がなければ分かりません。
そして、これらを分かっていれば、どのタイミングで検事に面談に行くのがベストなのか、どのような行動をすれば不起訴にしてもらいやすくなるのかといった、刑事弁護における活動での判断や行動を的確に行うことができます。

私には、このような「経験知」があったことから、当時は、多くの同業者から刑事弁護についての相談や紹介を受け、また一緒にやって欲しいというオファーもよく受けました。

そして、「経験知」を生かした弁護活動の積み重ねや同業者の口コミによって、そのうちに刑事弁護の分野では一目置かれるようになっていました。

経験知を生かす方法

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以上のように、経験者にしか分からない現場での知識である「経験知」を有しているということも、十分に差別化の要素となります。

あとは、これを生かすべく、どうやって周りに上手く伝えるかという点です。

そもそもこの「経験知」を有しているということが差別化の要素になるということを意識している方が少ないためか、あまり上手く伝えられていないように思います。

クライアントの立場からすれば、行政機関内部の事情に精通している、相手の手の内を知り尽くしているということはかなりのアドバンテージになりますから、是非とも、ホームページにはその旨を詳しく記載し、自己紹介のときなどにも「経験知」を有しているいうことを上手くアピールするようにしましょう。

まとめ

今回は、「士業の理想の姿」を実現するために必要な4つの条件のうち、「顧客と他士業から『選ばれる士業』になること」の1つ目の方法、「差別化すること」について深堀りしました。
経験知(経験者にしか分からない現場での知識)を有しているということも差別化のための一要素となりますので、ぜひ上手く伝えていって下さい。

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