いつも心にエレカシを

2008年2月15日の金曜日。
新宿の居酒屋で初めて友達にブチぎれた日、僕はエレファントカシマシにブチ抜かれた。

社会人3年目が終わろうとする2月。
学生時代からの友達連中と新宿の居酒屋で飲んでいた。

3年目ともなれば、ようやく社会人生活にも慣れ、任される仕事も少しずつ増え、「花金」を謳歌している時期。

僕はと言えば、前年の5月に「過労によるうつ病」と診断され少し休職し、復職したものの寝る/起きるがまったくうまくいかず、悪戦苦闘の日々を送っていた。
夜になっても寝つけず、寝てしまうと今度は起きられない。
目は開いても身体が起き上がらない。
遅刻の連絡を入れ倒れるようにまた眠り、さらに遅刻の連絡をし、の繰り返しでようやく起き上がれたら夜なんてこともザラだった時期。

自分が自分でなくなるようで病気であることを認めたくなくて。
周りに甘えているのにもなお思い通りにならない自分に絶望し。
それでもなんとかもがいて進もうとしていた時期。

そんな時期に気分転換になることと言えば旧知の友との時間。
その日もそんな気持ちで飲み会に行った。

なぜだかその日はよくいじられた。
もともと温厚そうに見えるからなのか、どんなことを言っても拾ってもらえるという過度な信頼があったからなのか。
酔っ払い連中のいじりは加速する。

僕にずーっと彼女がいないこと、そこから派生して僕の人間性を否定するかのような言葉。

いつもなら「酔っ払いの戯言」と流していたところが、その日は無理だった。

「ブチッ」

ちぎれる音とともに湧き上がる怒り。
ただ沸騰したのではない。
突沸。

次から次へと湧く怒りを吐き出すこともできず、無言のままその場から立ち去った。
友達の呼び止める声が聞こえたがコートを片手に店を飛び出す。

急いで新宿西口地下の雑踏を抜け都営新宿線へ。
止まらない怒り。
なり続けるケータイ。

ケータイを見るとそこには友達の一人からのメール。
内容以前に対していじりに参加していなかった人当たりのいいヤツがメールしてきていることにさらに怒りが増す。

電車の中で喚くわけにもいかず何か気持ちを変えられるものはないかと探す。
鞄から取り出したのは吉川英治の三国志。

怒り狂っているのに三国志読んでいる自分が一瞬おもしろかったものの、ケータイの震えが怒りを呼び覚ます。

感情の持って行き場もないままに電車は家の最寄駅につく。

帰宅してなお煩悶する中、どうしようもなくなりテレビをつける。

テレビから流れたのは「僕らの音楽」。
草彅剛の声に導かれて登場したのはエレファントカシマシ。

演奏曲は「桜の花、舞い上がる道を」。

ブチ抜かれた。

音に声に歌に言葉に。

全身を使い、細胞1つ無駄にせず命がけで歌う宮本浩次。

「こんな風に命を使って生きていきたい」

そんな思いが身体中をめぐり、涙が止まらなかった。

取り敢えず行くしかなさそうだ 上り下りの道
ああ 信じて転がるエブリデイ

見ろよ大いなる花
街は昨日よりも鮮やか
確かに感じる 明日は来る さあ今おまえと行く
桜の花、舞い上がる道を

救われた。
この瞬間に。
間違いなく。

そして背中を押された。
どんな状況であろうと、今がどんな自分であろうと。
ドーンと生きていこうぜ、と。

この日を境にエレファントカシマシにハマり、CDを買いあさりたくさん聞いた。
人生は引き続き上り下りの連続だった。

休職と復職の繰り返し。
一番長い休職は2年。
戻る場所はなく退職。
転職後にまたすぐ体調を崩し無職にもなった。

そんな中でもエレカシの音楽に何度も助けられた。

「悲しみの果て」では素晴らしい日々を送りたいと泣き。
「今をかきならせ」にそのまんまで生きていこうと背中を押され。
「曙光」に心燃え。
「珍奇男」で一緒にひねくれ。
「ズレてる方がいい」に勇気をもらい。
「人間って何だ」と考え、それでもスーパーマン目指すしかないのかと途方に暮れ。
「ハロー人生!!」でまた背中を押され。
「偶成」を聞き何度も何度もむせび泣いた。
それでもやっぱり「ファイティングマン」で胸を張って腕を振り。

自信を全て失っても 誰かがお前を待ってる oh yeah
お前の力必要さ 俺を俺を力づけろよ

oh ファイティングマン yeah 正義を気取るのさ
oh ファイティングマン yeah
baby ファイティングマン
エヴリバディ ファイティングマン


泣き、笑い、そしてまた泣き。

エネルギーの大きすぎるエレカシの音楽に触れられない時期もあった。
それでも気づくとまた戻ってきた。

エレカシには喜怒哀楽がぜんぶ詰まっている。
自問自答の葛藤や絶望があふれている。
希望に、勇気に満ちている。

苦しいこと、悲しいこと、思い通りにいかないこと、それらも全部ひっくるめてそれでも必死に生きていこうぜ、そんな音楽。

あの日、あの瞬間にエレファントカシマシに出会えたことが本当に大きく人生を変えた。
エレカシには本当に感謝しかない。

明日、6月12日は宮本さんの誕生日。
本当におめでとうございます。
エレカシの、宮本さんのおかげで今日を生きられている。

宮本さんの誕生日という節目に、なぜ自分がこんなにもエレカシを好きになったのかを思い返してみた。
これからもエレカシに、宮本さんに、何より自分に胸張って生きられるよう暮らしていこう。

俺はお前に負けないが
お前も俺に負けるなよ

これからも楽しく、胸を張ってドーンと生きていく。

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そんなわけで明日6月12日は宮本さんの誕生日。
WOWOWオンデマンドで19時から『宮本浩次バースデイコンサートat作業場 「宮本、独歩。」ひきがたり』が無料配信されるのでみなさま是非!!!

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