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仕事は好きですか、いいえ。

 遅い時は23時ごろに仕事が終わる。
 職場から家まではゆっくり歩いても20分ほどの近い距離で、時折1時間ほど散歩をしてから帰ることも多い。
 仕事が比較的早く終わっても20時ぐらいで、大体毎月の残業時間の上限を超えてしまう。超えるとサービス残業になるけれど、もうそんな生活もとっくに慣れてしまった。

 反発した頃もある。まだ、同期と呼べる人たちがたくさんいた頃だ。
 彼女らとよく語り合ったものだ。
 この会社を辞めたら都会で働くねん。
 アフターファイブを堪能するねん。
 素敵な人と出会って結婚するねん。
 エトセトラ、エトセトラ。
 私もその熱に煽られて、「会社辞めたる!」って奮起したことも何度かあった。
 エージェントサービスに登録して、遠方の大都会まで行って面談したことだってある。

 今、私は一人ここに残っている。
 8人くらいいた同期たちは、まるでドミノ倒しのように辞めていった。
 始めは寂しくて、悲しくて、なんで私は一人で仕事をしているのだろうと絶望していた。
 しかし、あることにふと気づいた。

 喋る相手もいないけれど、誰かの愚痴を聞くことも無くなった。
 一人でもそもそと昼食を食べていると、平和であることに心底ホッとする。
 同期たちがいた頃は、必ず誰かが会社や仕事の愚痴を言っていた。女の子たちはそれに同調して、よく知りもしない架空の敵を生み出して突っつくのだ。

 私は仕事が大好き、というわけではない。
 働くのが得意なわけでもない。
 生きるために必要だし、そのついでに達成感も得られたらラッキーだな、くらいに思っている。
 けれど、大した働きもしないくせに文句ばかり言う人や、できない理由を並べ立てる人は好きではない。
 やるからにはやってやろうと思うし、そこから見える新しい景色に期待感を持っている。
 これはきっと「仕事が好き」ということなんだろうけど、あまり認めたくないので否定しておく。

 いつも仕事が楽しそうやね、と色んな人に言われる。
 連日連夜遅くまで働いて、一体どこが楽しそうやねん。と思うけれど、疲れている時ほど元気な振る舞いをしてしまう。
 私と関わるからには笑顔になってほしいと思う。
 疲れた気持ちが少しでもほぐれれば良いなと思う。
 だから、私は楽しそうに振る舞うし、笑顔を湛えるし、元気に声を出すのだ。
 ただし、朝は除く。朝だけは本当に駄目なんだ。寝起きの機嫌の悪さを知られたくはないけれど、滲み出ているだろうなとは思う。

 そして今日もこうして夜更かし。
 早く寝ないと、また機嫌が悪くなりそうだ。
 おやすみ世界。またあした。

 おわり。

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