もし、漫研部員9人がエニアグラムの各タイプだったら?
今回は図とキャラクターへの活用の方法をまとめました。
キャラクターを作ることに悩んでいる人が結構います。
よくある問題が『どんなキャラクターを作っても結局同じ性格になる』というものです。
そのような方にオススメしているのがエニアグラムを使ってキャラクターを創作する方法です。エニアグラムとは人の性格を9つに分類し、それぞれの欲求や恐れなど詳細に分析している性格診断です。
性格診断で有名なものは『血液型診断』『西洋占星術』『MBTI』『ビッグ5』など数多くあります。
ですが、キャラクター創作にはエニアグラムが最適だと考えております。その理由は、一番記号的であり根源的であるからです。記号的というのはキャラが立っているため、物語の登場人物に使いやすいということで、根源的であるというのは人間の欲求や囚われという根本についての言及があるからです。
今回は、先ほどの図を物語に応用するための例として、『もし、漫研部員9人がエニアグラムの各タイプだったら?』というテーマでキャラクターを9人作りたいと思います。
『もし、漫研部員9人がエニアグラムの各タイプだったら?』
名前→キャラの氏名(わかりやすい様に、名字をタイプ名から取っています)
欲求→漫研においてキャラが求めているもの
恐れ→キャラが恐れていること
囚われ→キャラの『○○しなければならない』という思い込み
行動→実際に部活内でのどういった動きをするのか
タイプ①完璧主義
高潔で、理想が高いタイプ。
完璧一郎〈カンペキ イチロウ〉
欲求 漫画研究部部長で、真面目に漫画を描いている(在学デビューを目指している)
恐れ 自分がサボることで、部員に悪影響を与えること
囚われ 完璧でなくてはならない
行動 部員に最低一日一枚以上漫画を描くことを強いる
部長としての使命感から、レベルの高い漫画を描く部員を育てようという意志があります。ただ単に漫画が好きなだけの部員とは対立の予感です。
タイプ②献身家
思いやりがあり、人間関係を重視するタイプ。
献身花子〈ケンシン ハナコ〉
欲求 漫研副部長で、仲良く漫画が描ける空間を作りたい(プロは目指していない)
恐れ 他の部員から自分が好かれていないこと
囚われ 必要とされなくてはならない
行動 仲良し空間を守るために部長と対決して、プロ志望の部員を排除しようとする
部長と部活動内容の方針が異なっており、エンジョイ勢です。部長の方針のせいで殺伐としだした部室の雰囲気に反感を抱いており、対立することになりました。
タイプ③達成者
適応力があり、成功志向のタイプ。
達成裕太〈タッセイ ユウタ〉
欲求 漫画で佳作を取ってちやほやされた経験から、次は大賞を目指す
恐れ 自分よりも先に他の部員が評価されること
囚われ 成功しなければならない
行動 部員達が争おうがどうでもいい、むしろ焚き付ける
効率を重視するので、無駄な争いなどには興味がありません。上昇志向が強いので、実際には一番先に漫画家になれる素質があります。
タイプ④芸術家
ロマンティックで、内省的なタイプ。
芸術萌〈ゲイジュツ モエ〉
欲求 とにかく推しカプの二次創作がしたい
恐れ 家族に漫画を描くことを隠しているので、部活だけが自分の居場所
囚われ 自分らしくなければならない
行動 対立する部員達にぶち切れ、『ここにしか居場所がないヤツだけ残れ』と発言する
自分の好きなものに対する熱量が強く、周囲の目をあまり気にしません。我が道を征く性格です。
タイプ⑤観察者
強烈に思考する、理性的なタイプ。
観察拓也〈カンサツ タクヤ〉
欲求 部費で買った漫画を好きに読めるので漫研にいる
恐れ 無力であることを恐れて部員たちの意見を整理してまとめる
囚われ 賢くなければならない
行動 取りあえず、部長と副部長のどちらを指示するか投票させる
どちらにもつかないのが観察者らしいですね。あらゆるものを眺めて分析して喜んでいる研究者タイプです。
タイプ⑥堅実家
真剣にかかわる、安全志向のタイプ。
堅実未央〈ケンジツ ミオ〉
欲求 定期的に発行している部誌に自分の作品を載せたい
恐れ 長く続いている漫研がなくなることが嫌
囚われ 不安定な状態はよくない
行動 仲良しの副部長に協力して部長と対立する
日本人に多い性格です。伝統や組織など、大きな存在の一員として頑張ることが好きです。
タイプ⑦楽天家
忙しく、生産的なタイプ。
楽天聡〈ラクテン サトシ〉
欲求 ギャグ漫画で多くの人を笑わせたい
恐れ 自分の楽しめる空間がなくなること
囚われ 楽しまなければならない
行動 漫研を潰して、ギャグ漫画研究部を作るとふざける
辛い時にいてくれると有り難いキャラです。但し、苦しいことを避ける余り、近くの快楽に逃げる悪癖があります。
タイプ⑧統率者
パワフルで、掌握するタイプ。
統率優香〈トウソツ ユウカ〉
欲求 文化祭で発表する部誌で自分の作品が表紙を飾ること
恐れ 強引な部長のせいで漫研を潰してはならない
囚われ 負けてはならない
行動 現部長の責任を問いただし、自分と部長の交代を指示する
喧嘩っ早いのが玉にキズですが、頼もしいリーダーシップを発揮します。正義感が強いので、今回の部長の横暴が許せないのでしょう。
タイプ⑨調停者
気楽で、控えめなタイプ。
調停豊〈チョウテイ ユタカ〉
欲求 男女が仲良く漫画を愛する空間にいたい
恐れ 部員同士の対立、漫研崩壊の危機
囚われ 平和でなくてはならない
行動 退部届を書いて、『仲良し漫画研究部』を創部すると宣言する
平和を愛する彼はどんな選択をするでしょうか。今回の対立を見て、修復不可能と判断したのでしょう。自ら新しい部を立ち上げてしまいましたが・・・・・・。
各部員の意見
《部長派》毎日漫画を1P以上描き、部員全体のレベルを上げる
タイプ①完璧一郎(部長)
タイプ③達成裕太
タイプ⑦楽天聡
《副部長派》特に縛りなく、各々自由に漫画について話したり描いたりするタイプ②献身花子(副部長)
タイプ④芸術萌
タイプ⑥堅実未央
タイプ⑧統率優香
《傍観者》
タイプ⑤観察拓也
《退部》
タイプ⑨調停豊
【簡単な物語にしてみよう】※キャラの名字は太字にしています。
〈3200文字 所要時間約5分〉
起
窓の隙間から入ってきた西風により、教室に墨汁の匂いが広がる。 伝統ある漫画研究部の部長に任命された①完璧一郎は、Gペンを机に置くと部屋を見渡して、漫画も描かずにわいわいと雑談をしている部員達に苛立ちを覚えていた。
昼休みに職員室に呼び出された完璧部長は、顧問に『このままでは文化祭で発表する部誌が、従来の規定ページ数に足りない。最悪の場合は発刊できない』と忠告された。
創部以来、毎年発行してきた部誌が作れないとなると部長として大失態である。強硬手段に出るしかないと考えた完璧部長は『これからは漫画を一日最低1P描くこと』というルールを決めた。
部員達を着席させて、教卓の前に立った部長はその旨を伝えた。
これが漫画研究部存続を巡る大きな争いになる。
承
完璧部長が勝手に決めたルールを聞いた②献身花子副部長は怒りを隠さなかった。本来部活というのは、授業という窮屈な時間から解放されて、一人一人の個性を尊重する活動だ。部長はプロを目指しているから良いかもしれないが、そうでない部員にとっては負担でしかない。継続してきた部誌の発行が止まったところで何の問題があろうか。
こんなルールに従ってしまうと部員間で緊張感が生まれ結束が崩壊するだろう。その方が大事件だ。献身副部長は今まで通り、仲良く楽しい漫画研究部であるべきだと部員たちの前で断固主張した。
献身副部長の反発に、完璧部長の顔は震え、動揺が露わになった。
③達成裕太は新ルールなどどうでも良かった。教卓の前で必死に言い争いをしている完璧部長と献身副部長を冷めた目で見ている。
そもそも一日最低1Pという縛り自体が緩すぎる。プロを目指すなら、最低でも一日2Pは進めたい。部誌が発刊できないこともどうでも良い。大事なのは、商業誌で佳作を取った達成を評価してくれる存在だ。そのためには、みんな漫画を描いた方が良い。そうすることで、漫画を描く大変さに気付き、賞を取った達成への畏敬の念が生まれるのだ。達成は完璧部長を支持した。
④芸術萌は推しカプの二次創作に大忙しだ。家族に漫画を描くことを隠している芸術にとって、部活中だけが自分の魂を解放できる唯一の時間だからだ。部長の提案する新ルールにはもちろん反対だ。そもそも芸術は部誌に作品を掲載する気もない。なぜならBL漫画は部誌に載せることが許されていないからだ。芸術は成年向け漫画を冬コミまでに完成させて同人誌を発行するという目標がある。一日最低1Pなどという制約は障害でしかない。芸術は献身副部長を支持した。
⑤観察拓也は部長と副部長の対立、そして他の部員の反応を黙って観察していた。比較的おとなしい人間であっても利害関係が生まれると豹変する事実が興味深かった。
観察にとって部活は、歴代の部員たちが買い揃えた豊富な漫画が読めるという点で都合が良かった。それが入部した原因だ。
そもそも観察は漫画を描いたことはない。創作という点においては、たまにオリジナルの世界観設定を考えて満足しているくらいだ。如何に矛盾無く全ての要素を噛み合わせられるかに苦心している。漫画を描くよりずっと面白い。
ただ今回のトラブルは興味深い。ここは自分が書記を務め部員達の意見をまとめる役を買って出よう。
観察は黒板の前に立つと、チョークで〈完璧案〉〈献身案〉と書いた。
『みんな注目、一人ずつ投票していってください』
完璧部長にどちら側につくのかと詰問されたが、あくまでも中立だと伝えておいた。
⑥堅実未央は困惑していた。伝統ある漫画研究部の部誌が発行できない可能性があるそうだ。しかも、仲良しの献身副部長が部長と大喧嘩している。もしこのまま部員同士の対立が続き、廃部になったら大変だ。
まずはみんなが一致団結する必要がある。一日1Pというルールは守れない部員もいるだろう。ここは献身副部長の考えに従って特に縛りなく、各々自由に漫画について話したり描いたりする部活であるべきだと判断した。
完璧部長の鋭い視線を背中に感じながらも、堅実は献身副部長の案に一票投じた。
⑦楽天聡は黒板の前に立ちチョークを持つと、部長支持でも副部長支持でもなく、大きな『一休さん』の絵を描いた。
『あわてない、あわてない。一休み、一休み♪』
どういうつもりだと完璧部長に問われるが、笑顔で余裕を見せる楽天。たかが部活動に対して熱くなりすぎていると突っ込んだ。
そんなに意見が分かれるなら、『俺がギャグ漫画研究部を作ろうかな』と軽口を叩いた。副部長は楽天のふざけた反応には嫌悪感を覚えたらしい。何か言いたそうな表情だ。
楽天にとって学校生活は楽しく過ごすことが第一だった。部活もクラスで最初に仲良くなった完璧一郎と一緒が良いから漫研に入ったまで。
楽天は当然の様に親友である完璧部長の方針を支持した。
転
部誌で自分の作品が表紙を飾ることを目標にしていた⑧統率優香は激怒した。完璧部長がいきなり漫研に強引なルールを作ろうとしたせいで、部員同士が対立して今や廃部の危機である。
こういう決め事をする時は完璧部長はあらかじめ他の部員に根回しをしておくべきだ。特に献身副部長との意見の摺り合わせは絶対に必要だっただろう。それにしても、献身副部長では完璧部長に議論で勝つのは難しいのではないか?
この状況を上手くまとめるには、私が新部長になって指揮をとるしかない。
完璧部長のA案、献身副部長のB案、そして新たにC案を統率は立案した。
C案はAとBの折衷案だったが、完璧部長に対する言い方がキツかったため、火に油を注ぐ形になってしまい余計に議論の混乱を招いてしまった。『ここにしか居場所がないヤツだけ残れ』
あまりの喧噪に堪えかねて、芸術は起立して一言そういうと、静かに着席してBL漫画の続きを描き始めた。
結
⑨調停豊は、普段は静かな部室が大騒ぎになることに堪えられなかった。クラスと異なりみんな、同じく漫画が好きで集まっているのに喧嘩する必要があるのだろうか?
調停は黒板の前でチョークを持って固まった。完璧部長のA案、献身副部長のB案、統率のC案のどれに投票したとしても、部員同士の関係の悪化は避けられない。
だったら、こんな部活はない方が良い。
机に戻り、白紙に筆ペンを走らす調停。
『こんな状況で漫画を描くなんて真の漫研部員だな』
ふざけた楽天の笑い声が響く。しかし、書いたのは漫画ではなかった。
『退部届け・・・・・・!?』
『調停は漫画が大好きなんだろ? もう描けなくなっても良いのかよ』
『僕が新しく部を創設するよ。
その名は「仲良し漫画研究部」。
部のルールは漫画が好きなこと、それだけ』
突然の宣言に驚く部員たち。いつも大人しい調停の大胆な行動に仰天した。
『・・・・・・だったら俺、その部に入部するよ』
『私も!』
『オレも!』
続々と転部を主張する部員たちは調停に詰め寄った。
『みんな、ちょっと待ってくれ!』
完璧部長の大声に一同が振り返る。
『俺は、部長を辞める。
今回の騒動は俺の浅はかな判断が原因だ。
もっとみんなの意見を大切にすべきだった』
『私も副部長でありながら、部長を支えられなかった。
副部長失格ね』
反省する二人の横で、観察がポンと手を叩いた。
『じゃあ、調停がここの部長になればいいよ。
わざわざ新しい部を作らなくても、ここの設備や漫画を利用できるし』『僕が、新しい部長・・・・・・。
いいよ、わかった。でも副部長は観察君にしてもらうからね』
『なんでオレが!?』
『だって今回の騒動で僕たち二人だけが中立だったでしょ?
禍根を残さないためには僕たちがやるしかないんだ』
『ちぇっ、ここにある豊富な漫画を利用するために提案したのに、とんだとばっちりだ』
不満を口にしながらも、しぶしぶ受け入れる観察。
『それにしても、調停新部長さぁw』
BL漫画を描く手を止めて、口を開いた芸術にみんなが注目する。
『「仲良し漫画研究部」は流石にヒドイよw』
『新たな火種が投下されたね・・・・・・。
さて、次の議題は部の名前を変えるかどうか』
静かに微笑む調停新部長の言葉が本気か冗談か、その真意は誰にもわからなかった。
文化祭当日、漫画研究部の部誌が発表された。
新部長(調停)の方針で従来のページ数より大幅減になった。しかし、BL漫画の研究(芸術)やオススメ漫画紹介のページ(観察)、商業誌デビュー経験のある部員(達成)の漫画などバリエーション豊かな冊子となり見応えは抜群だ。
秀美な表紙イラストは女性部員(統率)のものだそうだ。一方で裏表紙は素朴で柔らかいキャラクターが描かれていた(堅実)。シリアスで読み応えのあるストーリー漫画(完璧)の次には、クスッと笑えるギャグ漫画(楽天)が挟まれておりメリハリが効いている。ほのぼのしている愛くるしいキャラクターが出てくる四コママンガ(献身)も優しい気持ちになれる。
『今年も何のトラブルもなく、無事に間に合ったな』
漫画研究部顧問は満足げに呟くと、歴代漫画研究部の部誌が並んでいる棚に少し薄い今年の部誌をそっと差し込んだ。
〈完〉
■まとめ
『もし、漫研部員9人がエニアグラムの各タイプだったら?』いかがだったでしょうか。
もし、自分だったらどういう行動を取るかを考えてみても面白いと思います。私はタイプ⑤なので、対立に与せず傍観しているかもしれません。どっちつかずの卑怯者と批難されるかもしれませんが、みんなの意見を整理して論点を明確にするなどの役割が得意でもあります。
同じタイプであっても、能力の高低がある場合や調子の良い悪いでも取る行動は全く異なります。
なので、9タイプの分類だからだとしても9種類の行動しかない訳ではありません。エニアグラムは奥が深いので、理解していくとより細やかなキャラクターの描き分けができるようになるでしょう。
また役に立つ図が作れましたら、今回の様にブログでまとめたいと思います。
それでは★
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