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『竜とそばかすの姫』を観たはなし①

普段そんなに映画を見る人間ではないのですが、アニメがとても好きなのに任せ、細田監督の最新作を観に映画館へ行ってきました。


感動や感傷の色が薄れてしまう前に、徒然なるままに記録しておきます。忘れたくないことがたくさんあるので、2回に分けて書かせてください。

すっごいネタバレすると思うので、嫌な人はもうここで辞めてください。むしろ、平凡なわたしの話をここまで読んでくださってありがとうございます。



先に個人的な感想を申し上げると、とっっっても好きな映画でした。

すずとお母さん

見ず知らずの人を、自分も傷を負いながら助けたこと

母を亡くしたすずにとってその傷はあまりに大きく、唯一のつながりであった歌からも離れてしまう日々が続いていました。

図らずもその共通点が、すずとお母さんに親子のつながりを感じさせます。

このあたりの描写は、ヤマシタトモコさんの違国日記を思い出しました。

すずには支えてくれる家族や、仲間、友人がいるにも関わらず、それとは別次元に「お母さんがいない」という事実が存在しています。

悲しみは自分だけのもので、誰かが肩代わりすることはできない。悲しみを受け止めることはできても、理解したり、分け合ったりすることはできない。その現実が、ひしひしと感じられました。

すずとお父さん

この映画の大きなテーマに「竜は誰か」が挙げられていますが、終盤までお父さんが竜に違いない!と妄信しておりました。

自分自身も妻を亡くした悲しみを抱え、痛みに耐えながら、自分以上の悲しみに暮れる娘を見守っていた姿に、涙が止まりませんでした。

逆にその強さが、お父さんを竜にしてしまったのでは…と推理していました(違いました)

ここからは邪推ですが、お父さんはあの河原での事故の日、あの場にいなかった自分を責めてはいないでしょうか。何ができたかが問題なのではなく、ただもう、みんなとは何か違ってしまった。ちょうどいま放送中の「おかえりモネ」にもそんなシーンがあります。

すずのお父さんにも、あのお父さんみたいになる可能性だってあったはずなのです。それを堪えて、ずっと娘が立ち上がるのを見守ってきたすずのお父さんは、やっぱりとても強い人なのだと思います。


すずとしのぶくん

しのぶくんとすずのお父さんが似すぎていて、最後まで「実は兄弟なんじゃないか」というコクリコ坂的展開を疑ってしまいました。

すずにとってしのぶくんは、“自分を生かしてくれる人”でした。あの日、手を取って引き止めてくれた、本当の意味で生かしてくれた人であることに加え、自分をいちばんわかってくれる人として、側に居続けてくれた人でした。

彼の存在に支えられながらも、それがほろ苦い重みに変わりつつあったすずが涙するシーンで、わたしも涙しました。

きっとしのぶくんにとっても同じで、一方的に守ったり、守られたりする関係者には、相応の負荷がかかるのですね…
ギブアンドテイクは釣り合わないと、いつかどちらかの首を絞めてしまうことに、改めて気付かされました。

ベルと竜、すずとけい

母を失った痛みと、父が居る苦しみ

2人の傷はよく似ているようで、少し違います。
それでも、お互いを必要とし合ったことに、とても不思議で暖かい気持ちになります。

人のことがわかるって、どういうことなんでしょうか。
わかりあえたと思う瞬間は、どんな時にやってくるのでしょうか。

なかなか起こらないことだからこそ、その尊さが滲みてくるのですね、きっと。

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