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#終 「邪視 核臓図」

邪視信仰において蛇というものは切っても切り離せぬ存在で、水と蛇は合綱になっています。我が国でも水辺で人を招く蛇のことを螭(ミズチ)と呼び畏怖されているし、蛇を龍の使いとする龍神信仰とします。

南方熊楠十二支考「蛇に関する民俗と伝説」 https://www.aozora.gr.jp/cards/000093/files/2536_20184.html が個展のメインタイトルにもなった「邪視 核臓図」の座標です。

邪視 核臓図

出雲大社の祭事には強い風が吹くと云われており、神々が降り立ち会議を行っているからだと信じられています。

インドにおいても水蛇の神ナージャが存在しており、インドから中国に蛇信仰が伝来し、中国で蛇が龍と結びついたという見方があります。その後紀元前一世紀に此邦へ。当時もともと日本にあった蛇信仰と合致し受け入れられ「龍神信仰」が誕生しました。

素戔嗚尊(NO.2参照。伊邪那岐の鼻から出た海神)が倒した八岐大蛇(ヤマタノオロチ)伝説も、古代から人々が蛇に特別な念を抱いていたことが裏付け出来ますね。

私の故郷でも「海辺は神様が鎮座して束の間の休息をなさる」と考えられており、故に地名が八幡の神の浜、八幡浜とされています。
近くには伊邪那岐と伊邪那美を祀る神社があり、地元には龍神信仰が強く根付いています。古い家屋には井戸と祠がセットでおわし、個々で住民が管理します。日々の祈りと奉納はかかしません。
蛇はトーテムの守護霊として、敬意を一身に集め、更に古代エジプトの宝玉にも邪視忌避として蛇が刻まれたアミュレットが存在しているのです。(ヤーン論文図像「エトルリア ギリシャ ガリア骨董集」より)また、メドゥーサはまさに邪視の象徴です。憎悪に満ち満ちた女性の髪の毛は全て生きた蛇で、勇者に切り落とされたとて、持ち主の首からズルズルと這い出て何処かしこに消えていったと……

忌まわしき口から囁き声が
この世ならざる未知の調べ。
荒々しき地獄の笑いに
骨の髄まで震え上がる
しかし、否。
忌まわしき死神のごと
歯が光るだけで、石の静寂のみ。

蛇信仰が時代を通じて永遠を象徴するものであり、無窮の結合のシンボルであるということ。獰猛な爬行の悪魔とされながら、一方で神聖なる守護神とされてきたこと。

偶発的なものでなく、歴史上で何度も蛇が登場するのは 邪視を防ぐ重要な役割を果たしていたからだとヤーンは記しています。その為のアミュレットやキャラクターは次々と現れますが、起源となる大切な「信仰」の気質を、今一度皆さんと考える機会を設けたく、熊楠の視点で制作しました。

更に今回の展示において、あらゆる恩恵と指針を獲たのです。予想以上に繁茂たる成果となり、独りで居る時ほど1人ではないことを改めて思い知りました。この場において関係者各位様に厚く御礼致します。今後とも若輩者に御批正を乞うと共に、指南と愛顧のほど 何卒 宜しくお引立て願い申し上げます。

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本日、最終日。

12:00から在廊しています。

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