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NHKスクランブル化が達成されたら、どれだけ老後資金が貯められるか試算してみました。

 つい最近ニュースなどで注目された、いわゆる「老後2000万円問題」。皆さんも、なんとなく感づいていたかと思いますが、実際に数字が示されたことにより、資産運用等について本気で考える機会になった方も少なくないのではないでしょうか。
 そして、最近巷をにぎわせたのが「NHKから国民を守る党」ではないでしょうか。先の統一地方選で多くの地方議員を誕生させ、その勢いそのままに参院選では、党首の立花孝志氏が、国政初当選を果たしました。彼らの主張は、NHKのスクランブル放送化により、「NHKをぶっ壊す」こと。つまり、NHKを観たい人だけが、視聴料を支払えるようにすること。このN国の主張については筆者は比較的賛意を持っていますが、そのプロセスについては是々非々で応援してきたいと考えています。

 今回は、この2つの話題を組み合わせた検証をしてみたいと思います。
それは、「NHKがスクランブルされたら、老後資金にどれだけ影響を与えるのか」です。すなわち、現状NHKへの支払いが事実上義務化されている受信料が、スクランブル化によって支払わなくてよくなったと仮定して、そのお金を貯めて、殖やしていったらどの程度の金額になるかを検証していきたいと思います。

まず、前提条件です。
・検証対象者は、18歳で大学入学後一人暮らしを開始。その後大卒で企業に就職し、その後結婚。そのまま世帯主として、直近の男性平均寿命である82歳で死亡し、契約が終了する方を想定。
・契約内容は、通常多くの世帯で実装されている衛星契約を律義に払うものとして、衛星契約。
・支払いは、2か月払いと12か月払いの中間である6か月払いを利用。継続振り込みを行っている。
・スクランブル化により、NHKに支払うはずだった額はすべて資産運用に回し、複利で資産を運用していく。資産運用は、直近の東証一部の加重平均配当利回りがおよそ2.52%であったことから、3%と仮定(加重平均配当利回りは株主優待を反映していないため)。
 例:1,000円を3年間運用した場合、1,000円×103%×103%×103%≒1092円となる
・支払いのための資金は年度初めに用意しているものとする。

それではやっていきましょう。

 まずは、最初の4年間大学生をしていますので、家族割引により50%割引が適用されますので、年間13,015円の支払いが発生します。スクランブル化により、その分の金額をすべて年利3%で運用に回していきます。
 これは、試算のあやですが、たかが年間13,015円と侮るなかれ。NHKスクランブル化により得られた機会利益はなんと82歳で死ぬまで64年間運用していきます。すると大学1年目に支払った13,015円は、64回複利計算され、なんと86,303円になるのです。2年目は83,789円、3年目は81,349円になります。
 次に晴れた大学を卒業し、就職します。すると世帯主になりますので、家族割引は適用されることがなくなり、年間26,030円の支払いが発生します。こちらも社会人1年目に支払った26,030円は82歳で死ぬまで60年間運用していきます。すると社会人1年目に支払った26,030円は、60回複利計算され、なんと153,358円になるのです。同様に2年目の分は59回複利計算されます。

 こうして、①死ぬまで世帯主のまま律義にNHKに支払いをした場合と、②スクランブル化によりNHKに支払っていたはずのお金を賢く年3%で死ぬまで運用していった場合の、機会利益の差は、

4,702,030円 になりました。

 なんと、老後2000万円問題のおよそ1/4は、NHKスクランブル化によって、自助努力できる選択肢を生むことができることが分かりました。もちろん、NHKを視聴することにより得られる効用は、さすがにゼロということもないと思いますので、必ずしも470万円得するという試算ではありませんが、金融庁の志向する「貯蓄から投資へ」政策と、スクランブル化、老後2000万円問題を組み合わせれば、こうした選択肢を生むことができることになります。これからのNHKの在り方にも示唆することがあるのではないでしょうか。

 なお、本試算は極めて簡略的に行っているため、現実発生する事象のうち反映できていない事項がいくつかあります。気が付いたものとしては、
・半年払いを仮定しているので、半年ごとの複利計算をしたほうが正確になる
・現実の消費行動を考えると、例えば年金生活に入る頃から資産運用に回していた資産を生活費などで費用化していくことが想定され、死ぬまで運用し続けるよりも現実的な試算が出せる
・得られた資金をイデコや積立NISAに回すことで、試算より高い利回りを現実的に想定できる可能性がある。特にスクランブルにより得られた資金を、イデコによる節税に回した場合の試算をすれば、より大きな額になる。
などが挙げられます。

 時間があれば、次スクランブル化により支払わなくて済むようになったNHK受信料分をサラリーマンがイデコに全力で回した場合の試算をしてみたいと思います。

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