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海外旅行の夢が、ジェット気流に乗って。 -昭和、深夜ラジオの思い出

 遠くから、ジェット機のエンジン音が聞こえてくる。
 ついで、『Mr.Lonely』のストリングスアレンジが静かに軽やかに、それに重なっていく。
 そして、「遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休める時、遥か雲海の上を、音もなく流れ去る気流は・・・」という、あの、甘く誠実な名ナレーションが聞こえてくる。
 1967年7月から放送が始まり、今なお放送が続く深夜のFMラジオ番組『JET STREAM』の番組冒頭です。番組開始当初から1994年まで約30年間パーソナリティを務めた城達也さんの声が、脳裏に浮かぶ方も多いと思います。今回は新居浜の若者たちがこぞって聞いた、そんなラジオ深夜番組の思い出です。

 『JET STREAM』という、ラジオ番組。まさに、思い出よね。ぼくらの世代は、みんな聞いとるよねえ。受験生はみんな、聞いとると思うよ。あれを聞いとらんと寝れん、というような人が多いと思うね。あれが11時からでね。いまでも新聞の折り込みなんかに、ときどき出とるよね。城さんが亡くなってから再度、注目されてたりね。追悼の何かがあったり。
 私もあの音楽、『Mr.Lonely』ね。よくね、海外出張に行きよった頃にね、夜、こうやって開けるんよ。窓を。ホテルで。ちょっと目が覚めるから。そうしたら、必ず頭に浮かんでくるんよ。ヨーロッパに行きよるときでも、アメリカに行きよるときでも。「♪た~ら~」いうて。あんだけ、『JET STREAM』の、「何とかの轟きの・・・」とかいうて、得意になって真似してしゃべりよったのになあ、もう忘れてしもうた。いつもの定番の、ね。
 やっぱりね、飛行機とか、海外旅行の思い出いうたら、「♪た~ら~、たららら~ら~」よ。『JET STREAM』というたら、そんなのが頭に浮かぶね。

 長くJAL(日本航空)の単独スポンサー番組として放送されていたFM番組『JET STREAM』は、冒頭のジェットエンジン音や語り、パーソナリティー自身が「機長」「キャビンアテンダント」として番組を進行することなど、海外旅行をイメージさせる演出が随所に盛り込まれました。番組開始に先立つ昭和39(1964)年に海外旅行は自由化されていましたが、JTBが同年に主催した「第1回ハワイダイヤモンドコース旅行団(ハワイ9日間)」の旅費は、今の価格で約400万円。『JETSTREAM』は、‘ジェット気流’に乗って海外旅行する夢をロマンチックにかき立てました。
 『JETSTREAM』と並んで多くの若者たちがこぞって聞いたのが、こちらも今なお続く‘THE深夜ラジオ’『オールナイトニッポン』でした。

 『JETSTREAM』は23時からだったから。受験生は夜中の1時とか2時まで起きとるけど、放送してるのは23時頃。これは、普通に寝るころだから。トランジスタラジオで、寝る前に枕元で。でも寝たらいかんからね、受験生は。朝勉強する人もおるけど、それは3時くらいに起きて勉強するから。だからだいたいは夜に勉強をするんやけど、深夜に勉強しながら、となると『オールナイトニッポン』なんよね。だから、受験生が‘ながら’で聞くのが『オールナイトニッポン』、というイメージよね。

 『オールナイトニッポン』と言えば、おばあちゃんのところに泊まりに行って。で、その時に、「今日はいつまででも夜更かししていいよ」と言われたら一人で部屋でこっそり、『オールナイトニッポン』を聞くのが楽しみでしたね。

これら全国放送に混ざって、愛媛ならではの深夜放送の思い出を語る方も。

 大学でテレビある子は少なかったから、ラジオがせいぜいよね。大学の寮にも、テレビがあるのは、休憩室にしかないからね。持っててもせいぜい、トランジスタラジオ。寝る前くらいに、南海放送で「門田洋子です」いうてね。それはみんな分かりますよ、僕らの頃(1950年代生まれ)の人は。あの、最後に「♪ちゃん、たたんたん」という音があってね。それも覚えとる。「松山の、服部時計店がお送りする、夜のバラード」いうて。「門田洋子がお送りします」というてね。大街道のところの時計屋さんよね。

 『JETSTREAM』が放送を開始したのとほぼ同時期の昭和42(1967)年に放送を開始し、日付が変わる時間帯に毎晩放送していた南海放送ラジオ『夜のバラード』。門田洋子さんは初代パーソナリティーとして毎晩、リスナーからのハガキを紹介していました。
 今でも、様々な番組が聞き継がれている、ラジオの深夜放送。インタビューに答えてくれたある方は「年齢を感じる」と言いながら、こうおどけます。

 いまだったら、『ラジオ深夜便』よね。あれは、目が覚めるんよね。あれ聞きよったら引き込まれて、寝れんようになる。はよ目が覚めて、もう年なんよね。たぶん。

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