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「学生が、どんどんのめり込んでくれた」 -「KOSEN-1」開発を支えた教員たち

 2018年12月にプロジェクトが採択され、2021年の打ち上げに向けて本格的な開発がスタートした超小型衛星「KOSEN-1」。高知高専を中心に、新居浜高専を含めた全国10校の高専が、役割分担しながら開発を進めた衛星でした。新居浜高専での開発を主導した一人が、2020年に新居浜高専・電気情報工学科に着任した今井雅文さんでした。

 私はずっと「木星電波」の研究をしていて、2018年頃から「いいアイデアがないか」と言われて。その時は博士課程で「アメリカ・フランス・ウクライナで木星電波を同時観測する」というのをやっていました。その観測地点が宇宙にもあれば、木星からの電波の観測がより良くできるのではないかと考えました。観測地点間の距離が離れれば離れるほど、木星からのビームを分解できるのでいいのでは、と提案しましたね。そこから、「KOSEN-1」と私の関わりが生まれました。
 で、2020年4月に新居浜高専に赴任して。木星電波の観測もしますけど、観測装置をどうするのか、ということと、観測の連携をどうするか、というのを私で担当しました。

 アイオワ大学の研究員だった当時から、NASA(アメリカ航空宇宙局)の木星探査機「Juno(ジュノー)」プロジェクトに参加するなど、木星研究の分野では気鋭の研究者として知られる存在だった今井さん。新居浜高専に着任後は、「研究者」という顔に加え、学生を指導する「教員」という顔も持ちながら、「KOSEN-1」への関わりは続きました。

 私が赴任した時はちょうどコロナ禍で、学生と会って「どういうことができそうか」という議論ができない。面と向かって話ができない。新居浜高専の場合は、夏休み明けまでそれが続いて。それ以降は対面で出来たけど、それまでは遠隔で。ですので、ウェブを使ってミーティングをいろいろやって、学生の進捗を共有して。新居浜高専では、5年生で卒業研究があるので。各先生のところに学生が配属されて、私も4人の学生とウェブでやりとりして。なので実際に面と向かって関わり始めたのは半年後ですね。

 人々の日常生活を大きく制限した「新型コロナウイルス感染症」の急拡大がちょうど始まった2020年春の、新居浜高専着任。打ち上げ予定までは、残り約1年半。学生と議論を深めつつ、「KOSEN-1」については実際のモノづくりも納期通り進めないといけない。そんな中で大きな推進力になったのが、プロジェクトに参画した学生のやる気でした。

 私の場合は「どうやってハードをつくるか」とか「どうやってデータを取るのか」というのは初めての試みでした。その中で、学生と一緒に考えながら、システムを作り上げたましたね。秋葉君という学生が担当したんですけど、彼が熱心に木星電波について興味をもって自主的に調べてくれて、衛星関係にも興味を持っていたので。学生がどんどんのめり込んでくれた、というのはありますね。
 2020年に着任して2021年に打ち上げ、ということで時間がなかったので。打ち上げ後の運用ではもっと学生が関わってますけど、「KOSEN-1」の初期から開発に関わったのは秋葉君のみで、彼には5年生の時に関わってもらって。彼は興味を持って、ほんとうにいろんなことを吸収して。なおかつ、毎回チーム会議をウェブでやってたんですけど、そのときにも木星電波の受信機器について代表してレポートしてもらったり。

 別のところでインタビューを紹介している、2020年度の高専卒業生・秋葉祐二さん。本人曰く「クラスでも決して成績は良くなかった」とのことですが、卒業研究で今井研究室の配属となり、プログラミングや木星電波のことなどを一から勉強・吸収しながら、一年間の濃密な開発の日々を過ごした学生さんです。
 最終学年となった2020年は「KOSEN-1」の他に、大学編入試験など多忙な日々を過ごした秋葉さん。
 今井さんは、そんな秋葉さんとの思い出を、こう語ります。

 ちゃんと意思をもって関わってくれたので、助かりましたね。だから、打ち上げを見ずして彼が高専から巣立ったのは、すこし残念でしたね。

今井さんのインタビューを元にしたエピソードはこれもあります。

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