結婚指輪を取りに行って「たいめいけん」で食べた日
結婚ネタが続くが、忘備と自己分析を兼ねて。
単なる日記ではアレなので、「結婚とは」を発展させて「ちょっといいレストランで二人で記念にお祝いする」とはどういうことかを考えたい。
何度か書いたが、私たちは40代50代の再婚同士ということもあり、コロナもあり、親や親戚との食事会もせず静かに籍を入れた。
別に「40代50代の再婚同士」だからって派手に祝ってはいけないことはない。そういうカップルがいたら素敵だし、外国でそういう光景をみたこともあるし、実際に私たちが結婚式を挙げたら、来てくれる友人はいるだろう。
ただ自分たちにその気がないので、しないだけ。「みっともないから」という感情はない。
「自分たち」と書いたけど、彼氏、もとい夫Sが「みっともない」と思っていたら悲しい。私以上に「いいよ 報告は親だけで」「年賀状でそっと伝えるだけでいいよ」みたいな言い方をするので。心が弱ると「バツイチの妻と再婚するのはみっともないんだろうか」ぐらいのどマイナス思考が働いてしまう。
ま、いいけど。私も「ちょっといいレストランで二人で記念にお祝いして…」とか、「オシャレして写真館で記念写真だけでも…」とか、素敵だなあとは思うんだけど、こういうイベントごとにはしゃぐ強い気持ちがない。というか前の32で結婚した時もはしゃがなかったので、まあ、元々の資質がないのだろう。
けっこうなお金をかけて「結婚式」をするカップルと、全くしないカップル。神や親親戚友人一同の前で愛を誓った方が離婚しなさそうだけど、今「結婚式 する しない 離婚率」でググったら、「挙式しないカップルは離婚率が上がる!(by ウェディングプランナー)」「離婚率上がるはデマ!」「挙式する方が離婚率が上がる!」などなど、結論出てなくて笑った。
さて、日曜は結婚指輪を取りに日本橋高島屋に向かう。買いに行った日も取りに行った日も雨となった。
「日本橋高島屋」だけで私にはもうハレの舞台。クラシックな吹き抜けの底の一角に構えられた創業100年というお店で、さすが老舗の応対をしていただいた。
「せっかくだから、何か食べよう」と、今日のために私たちは1万円を握りしめてきていた。上階の高島屋特別食堂は帝国ホテルや野田岩、「いちまんえんでたりるか…?」的なのが並ぶ。新館だとトレンドを抑えた美味しそうな店が並ぶけど、決められずぐるぐるしてしまった。
ここで夫Sさん、「たいめいけんで食べてみたい」と言う。「たいめいけん」に罪はないのだが、以前私は編集長と「たいめいけん」帰りに大喧嘩したので、なんとなく避けていた。でも、せっかくだからと「たいめいけん」に行った。
たいめいけんもクラシックな店内と老舗のおもてなし。ここで値段を気にせずに頼んだ。私は牛タンシチュー、彼はあのたんぽぽオムライス。
「ちょっと待って、動画モードにするから」と私がスマホを構え、彼がぎこちなくナイフを入れて、でも、綺麗にたんぽぽが開いた。
シチューもオムライスも、コールスローもアスパラサラダもみんなみんな、美味しかった。
帰りに台湾のオシャレ書店&雑貨「誠品生活」に寄ったら、楽しすぎてずっと滞在してしまった。
Sさんは昼間ワインが聞いて、ずっと座って寝ていた。私が何度も彼の元に戻ってきて、「まだ見てていい?」「いいよ」を繰り返した。
棚差しより面陳が多いディスプレイは、本の表紙も喜んでるかのよう。テッド・チャンの『息吹』を買った。
入籍の日のことを思い出した。区役所を出て、まっさきにある友達にラインした。「また結婚したよ。あの時お世話になってありがとう」
年上の女友達。私が前の離婚のときに何度も話を聞いてくれて、時には泊めてくれて、自転車で引っ越してきた私を待って、荷解きを手伝ってくれた人。彼女がテキパキと段どってくれたおかげで寝るスペースができ、私はその夜、久しぶりに少し寝られた。出ていく直前に「鍵を返せ もう戻ってこないのだから」とひどいことを言った男のこと、8年間の付き合いの最後の言葉としてはあまりに酷いその言葉を「考えない、考えない」と念じながら、天井を見つめて寝た。それから何人かうちに来た男はいたけど続かず、私は8年間、独りだった。
「歳のせいか、涙が止まらないよ」と彼女から返事が来た。それを見て私も涙が出てしまった。銀座で二人でコース料理を食べていたときのことだ。
8キロぐらい痩せたあの離婚時のゴタゴタを知っていて、私のために泣いてくれる友達がいて。たいめいけんで一緒にたんぽぽオムライスをはしゃぎながら食べる人がいて。私は本屋に夢中になって、子どもみたいに時々寝ている彼の元に歩き寄って、「まだ見てていい?」と言い、そのたびに彼は「いいよ 見てきなよ」と言う。私の薬指には、まだ収まり慣れない感じで、小さいツブツブがキラキラしている。彼にも真新しいプラチナの。
「みっともない」どころじゃない。幸せな日曜日。
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