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ホームの会議  認知症の方に合わせるホームを作るには

前回、
認知症の方に合わせてホーム環境を変える
というお話しをさせてもらいました。

簡単にまとめると

認知症の方でも

  • できなくなった生活行為によって本人は困っている筈なので、困っている原因を探す

  • 困っているのだから、ホームの環境自体を認知症の方に合わせる

  • ホームの環境次第で、生活行為を継続できる事がある

というお話しでした。

介護の現場で働いている読者の方は
理想はそうだけれども
具体的にはどうすれば良いの?
と思ったでしょう。

そこで、
どのようにホームに落とし込んでるのか
と言うお話しをしようと思います。

結論から言うと
会議を大切にしています。


ホームの会議

会議の考え方

ホームでは
月に1回職員が集まって会議をしています。
その会議の内容は、
利用者一人ひとりのケアを考える
というもので、
7年間これ1本でやっています。

「他の事は議題にしないのですか?」
と思われると思いますが、
認知症の方にあわせてホーム環境を変える
には、
「業務」を議題にしてしまうと
認知症の方を抜きにした話し合いになってしまう可能性があるので、
利用者のケアを考える
という内容のみにしています。
つまり、
個別の事例からホームを考える
というスタイルなのです。

会議手順

会議の手順は

  1. 会議前に利用者の担当職員が利用者さんのケアを考え議題に書く

  2. 会議では、担当職員が「考えたケア計画」をプレゼンする

  3. 皆で検討し決定する

  4. 議事録に残し、全体に周知する

  5. 次の月は先月の評価をし、
    当月のケア計画を話し合う

という過程を踏みます。

担当制とメリット

職員には利用者を割り振って、1名か2名の利用者を受け持ってもらっています。

担当制にする事で
利用者さんの事が他人事ではなく自分ごとになり
会議でプレゼンする事で、具体的なケアを考えるようになり
みんなで検討する事で、ケアに納得感が生まれて全員がケアを実施するようになり
毎月定期的に行う事でケアの結果が見え
職員のやる気にも繋がる
と考えています。

成果

最近の成果

最近の成果としては

失禁してしまう方に対して

ケア計画案)
自分でパットを付け替える
という案が提案されました。

会議)
会議での話し合いでは、
1.各トイレに、本人の尿取りパットを、本人が見える場所に置く
2.尿取りパットを捨てるゴミ箱を置く

と決めて実行しました。

結果)
結果は、
・汚れた尿取りパットを自分でゴミ箱に捨てて
・置いてある尿取りパットを自分で付ける事ができる様になりました
・もちろん、尿があちこちに垂れてしまう事もなくなりました

これは、膀胱だったりの身体的な機能は衰えてしまったので、尿は漏らしてしまうのですが、尿取りパットを自分で管理できるように環境を整えた事で、排泄が自立したという事例です。
本人が尿取りパットを用意したりする事は難しいのですが
尿取りパットをトイレ内のわかる場所に置いておくことで
自分で付け替える事ができ、職員が支援する必要がなくなりました。
職員が排泄に関わる事が常になると、本人の自由を奪ってしまうので、
排泄の介助が必要なくなることは、かなり自立度が上がる結果となったと思います。

このように、
本人の困りごとを見つけて(尿失禁)、
それを補えるように環境を整える事で(パットとゴミ箱をトイレに置く)、
困りごとはありながらも、生活行為は自立できるのです。

その他の事例

過去には、
ケア計画)
家でやっていた家庭菜園をホームでも継続する
というケア計画から
バルコニーにプランター諸々をセットして開始した
等もあります。

ファシリテーションのポイント

会議進行で大切にしている事

私が会議の司会をしてファシリテートしているのですが、
とてもとても大切にしている事があります。
それがなければこの会議は成り立ちません。

それが、ゼロベース仮説思考と言う考え方です。

ゼロベース思考

簡単に言うと、「既成の枠」を取り外して考える事です。
その反対が、経験値型で、いままでの経験や習慣の中でしか物事を考えない事です。

介護の世界での「既成の枠」は、「高齢だからできない」「認知症だから…」「施設介護はこうだから…」「今までこうやってきたから…」「失禁したらオムツだから…」等だと思います。

会議でも普段でも常にそういう既成概念は排除して、
目的は「本人の利益」
になるようにファシリテートします。

先程の例で言えば、
もし、「失禁して手間がかかって大変だ」という職員側の目線であれば、
今までの経験値で、
オムツや大きなパットにする
という事が解決策になります。
尿を沢山吸収すれば、床やベットが汚れる事はありません。
しかし、これは本人の利益になっているとは思えません。
個別性が考慮されておらず、誰でも考えられる専門性のない解決策です。

それなので、会議等でファシリテートする際には、話し合いの目的が利用者本人になっているかをチェックして、ずれていたら戻す事を心がけています。

仮説思考

もう一つ大切にしているのが、仮説思考です。
簡単に言うと、
先に結論を持ち、実行に移す事です。

この考え方は、結論のスピードを早めます。
早めて、速やかに実行に移すことができます。

先程の例で言うと、
「尿を抑える機能が衰えてきたみたいだ」→「ズボンの上げ下やパットを付ける事自体はできる」→
仮説:
「パットが目の前にあれば、自分で付ける事ができるのではないか」
と、先に結論(仮説)を出してしまうのです。
後は、仮説を実行するだけです。
実行してうまくいかなかったら、仮説を再度検証して、実行すれば良いのです。

これには、大きなメリットを感じています。
それは、施設介護でありがちなのですが、
職員が「実行しない評価者」になってしまう事が多々あるのです。
利用者のここが良い悪い、家族のここが良い悪い、ホームのここが良い悪い…と。

会議自体が仮説思考の考え方で成り立っていますので、この会議過程を行う事で、職員皆が評価者ではなく、実践者になれると考えています。

とは言え、職員みんな結論(仮説)を立てるのは苦手です。
結論を出す事自体に職員同士の顔色を窺ったりして躊躇してしまいます。

そこで、ファシリテートですが、ゼロベース思考と合わせて、
常に利用者の利益が目的になっているか
職員目線になっていないか
を確認して、利用者目線に戻し
「なんでそう思ったの?」
とか
「やってみたらどうなると思う」
等と質問して仮説を立てやすくしています。

まとめ

今回、利用者の個別事例からホーム環境を変える方策として、会議を取り上げてお話ししました。
まとめると

  • 会議を使って定期的に利用者の事を考える機会を設ける

  • 考える際には、既成概念にとらわれず、目的を利用者の利益にする

  • 支援を考える際には、最初に仮説を立て、実行してから検証する

  • この会議過程は、実行して見直す事で成り立っており、考える事よりも実行する事で利用者の利益に近づく

という内容でした。

認知症の方を権利擁護するにあたり、本人の真意は誰にもわかりません。
それなので、支援する際には、
100回考えるよりも1回実行して振り替える事
そしてそれを繰り返す事
本人の真意に近づくのではないかと考えています。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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