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ovalから繋がるエクスペリメンタルとアンビエントの関係性

OvalはドイツのMarkus Poppを中心としたメディアデザイン集団であり、Markus Poppのソロユニット。1950年代以降のケージに影響を受けた、主に英語圏のアーティストによる実験音楽の芸術は、最終的な音響結果を確定せずに作られ演奏される音楽として、実験的で前衛的である。ケージを無視できる先端的な音楽芸術はほとんどないそれゆえ実験音楽は、前衛音楽と理念的に対立するものとして規定されるのであるが、結果が予知できない行為として、実験音楽とは最終的な音響結果が意味していることそのものが音楽である。


この前提条件でSystemischから最新アルバムSCISまで聴いていくと、全体を通して生楽器の音などを使うことで、オヴァルの感情や情熱やあふれ出した、生々しくも美しく情感豊かな表現となっていて驚かされる。そして、SCISは最も感性が研ぎ澄まされている美しい作品となっている印象。クラブトラックに近い形でのエレクトロニックポップは、カラフルで煌びやかである。かつてのオヴァルの実験性とは一見対極にあるようにも見えるが前衛的であると言えた。しかし、そこで改めてSystemischを聴いてみると表面上は実験的に見えながらもその曲全体構成としてはPCでしかなり得ない一貫性と全体のトラック1つ1つのアンバランス感が潜んでおり、今では考えにくい情報化社会以前の工業的指針が見られる。特に、Compact DiscはCDを手に取りかけるまでの読み込む感覚やそこにある間を考えるような自然には成し得ないエレクトロへの未知なる冒険を思わせるような楽曲である。


そして、SCISに戻るが一見するとSpotifyのプレイリストにも積極的に起用されそうな表面的アンビエントエレクトロのように思えるが、今の社会においてはこダンス感が損なわれヒップホップが台頭してきている中でより実験的になっている。マーカス・ポップのコンポーザーやサウンドデザイナーとしての非凡なる才能を改めて実証するかのような、非常に革新的で独創的な内容になっており、マーカス関連作品の中でも最もメロディーが際立った楽曲。クラブミュージック的なアプローチは従来であるようでないアップデートであり、ポップにも近づいたアンビエントが様々な関係性を考える。
近年で、印象的なエレクトロでアンビエントな楽曲から付加価値をつけた取り組みをしているのは、友人でもあるAmPm。最新曲はAmPmがこれまでにインスピレーションを受けてきた都市名を楽曲タイトルにした世界を旅するダンストラックとしてリリースされている。

これは、原曲のメロディアスなフレーズをさらに確かなエモーショナルに変えるためのマインド的アプローチで重厚なサウンドや濃密なダンスサウンドが街の外装を印象付ける。様々な背景を持った人々や、独自の文化。成長著しい都市の一面を持っており、とても個性的であり、大好きな街の一つ一つを表現していくそんな都市のイメージや想いを、トラックにして表現することは音楽の枠をこえる音楽かもしれない。

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