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〜18歳シリアに行く〜入国編③



諸注意

この文章はシリア・アラブ共和国への渡航を推奨するものではありません。情報を収集した上ご自身の責任で渡航される事をおすすめします。



※現在、今後シリア・アラブ共和国への入国を行った際に、「ビザ免除プログラム改定およびテロリスト渡航防止法」により米国入国時のESTAを利用した入国が不可となります。またこの旅行記中にある情報は断りのない限り2020年2月以前のものであり、現在の状況は大きく異なると予想されます。

※文章には筆者個人の偏見、勝手な予測、それらに伴う間違った情報、個人的な主義及び思想が出ることが予想されます。間違った情報に対する指摘や質問等がありましたらTwitter→@aka_ikura までお願いします。なお、主義思想に対する批判や未成年者の行動としての妥当性に関するコメントはお控えくださると幸いです。



※今回の記事は前回からの続きになっています。初回の記事はこちらから、前回の記事はこちらから読めますので未読の方はそちらから読むことをお勧めします。



はじめに


今回も相変わらず遅くなってしまった。

遅くとも2020年中にはと思っていた今回のnoteも、いつの間にか書かないまま年が終わっていたという自身の社会不適合性にただただ頷くしかない。

最初は全部を8月までに書き上げるつもりだったが、結局来月でこの旅行に行ってから一年という情報の新鮮さのかけらもないものに成り下がってしまった。

変わらず今回も冗長でなかなか進まない文が続くと思われるがぜひお付き合いいただきたい。

また、これほどの遅筆でも何人かの方々から続編を希望される方々に感謝をすると共に、このシリアのコンテンツ力の強さが一刻も早くなくなる世界になってほしいと願うばかりである。




シリアへの道


さて前回はベイルートのホテルを出ていざシリアへということだったがここで一度地図をご覧いただきたい。

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↑ホテルにあったレバノンの地形を誇張した地図だが赤丸がベイルート、緑がダマスカスである。

これを見ればわかる通り、ベイルートから東に行くにはまず急なレバノン山脈を越えていかねばならない。

ちなみに「レバノン」という地名はこのレバノン山脈が雪を抱える様からエラム語で白を意味する「ラバン」から来ているらしく、それはそれは大変美しいものである。これを見るだけでも冬のレバノンに来るかいがあると思っている。

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(あと前回迷惑をかけてきたゴーン氏は当時この雪の中でスキーを楽しんでいたそうな。クソが。)


まあそんなわけで山道を結構な速度でグングン上っていき、登ったなーと思うといったんベガー高原に蛇行しながら少しおりていく。そしてさらにシリア国境部にあるアンチレバノン山脈にぶつかってまたグネグネと登っていくのだ。


結果見事に車酔いしてしまった

※ワンポイント・・・もしベイルートからシリアへ行くなら酔い止め薬を持っていこう!





入国前に見えるシリアという国家


そんな道にやられているとドライバー(会話によりラタキア出身であることが判明)が唐突に「ちょっと店によっていいか?」と聞いてきた。断る理由などなく承知した旨を伝えると、ほどなくして道路脇にある古ぼけた店の前に停めた。


このとき脳内ではわざわざレバノンで買い物?しかもこんな怪しそうな店で?禁輸品か?と疑りつつ待っているとなんと黒い袋を三つもパンパンにして戻ってきた。え?まじでそういうブツ?と思いながら恐る恐るきいてみた。

すると怪しげな顔をし、にやつきながら袋の中身を見せてくれた。なんと中には大量の





バナナが入っていた。

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笑いながら説明してくれたところによると、初春はバナナの旬でレバノンとシリア両国で栽培しているものの、シリア産のバナナはぶっちゃけ不味いらしく、シリアでもレバノン産のものが人気があるそうだ。

しかしシリア政府もバカじゃないので高い関税をかけるし、前述の通り道がわるく輸送コストもかかるためかとても買えたものではない値段になっているためこうして仕事でレバノン側に行ける時に大量に購入するという話だった。


一昨年までは我が国で中国人観光客が日本製品を大量に購入することが爆買いと呼ばれ話題だったが、シリア人はレバノンでバナナを爆買いしていたのだった。


それも終わりトランクもバナナで埋まったのでいよいよ国境までノンストップか〜、ビザ大丈夫かな(前回参照)と思っていると今度は国境直前のMasnaaという町で車を停めだした。


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↑ベイルートで見られるラテン文字は消え失せてアラビア文字だけが躍っている


「今度は何を買うんだい?」と聞くと、ニヤリとしながら「シリアポンドを持っていないんだろ、ここで両替しな」との答えが返ってきて困惑した。


ここで少々説明を挟むので海外旅行に慣れた諸氏はとばしてもらいたい。


基本発展途上国の両替というものは現地の両替所で行うほうがレートがいいという鉄則があるのだ。

なぜなら発展途上国において大抵現地の通貨の信用は低く、米ドルなどの基軸通貨の方に高い需要があるため、両替業者の利益分を鑑みても国際レートにごく近いかそれよりもいいレートで両替できる国が多い。(もちろん例外はあり、例えば昨年まで海外旅行者数の偏りにより人民元の超過供給となり人民元両替なら新宿や秋葉原の方が国際レートよりずっと安く入手できた

しかも一部の国では経済の不安定化から外貨の需要が高まった結果、公定レートから数倍~数百倍の乖離がある闇両替と言われる違法両替が蔓延しているため、なおさら現地で両替する方が良いことになる。

そして事前調査によるとシリアはご存知の通り内戦やそれに応じた欧米諸国の制裁により物資が不足、急速なインフレが発生し政府が統制できていない事態になっており、シリアポンドの信用は失墜したために物価とは別に1米ドルに対してシリアポンドの高騰が発生しているとのことであった。



つまりどうみてもシリア国内での両替の方がレートがいいはずである。訝しみながら聞いてみたところシリアらしい事情が出てきた。



前述の高騰は確かに事実であり一般的に取引されているレートはシリアの方がいいのもそうだが、訪れる一週間ほど前に政府がそのひと月前の実勢レートに固定し、そこから大きく超えるレートでの取引は違法として厳しい取り締まりを行っているとのことだった。

一方レバノンでは、当たり前に隣国の通貨は時差がありながらも市場原理に基づいて変動する。そのためレバノンの国境部が安全な中では一番レートが良いというものであった。


では自分は替えないにしてもシリア国民はどうなのかというと、「ここしか両替のチャンスはない」といわれたことからの憶測だが、シリアでは闇レートでの両替が主流であり、我々ごくわずかしかいない旅行者が「公定レートでもいいから両替をしたい」と言っても公定レートで替えてくれる合法的な店がほとんどないのではないかと思っている。


第一回にある通りこれはツアーでありもし国で摘発でもされたら会社やガイド、ドライバーとしては終わりを迎えてしまうし、旅行者としても自国の大使館がない国(内戦のため在レバノン大使館内に移転)の警察のお世話になるのは限界が過ぎる。素直に了承した。



では気になるのはレートだが2020年の2月末Masnaaでのレートは1$=1050シリアポンドであり、あの取り締まり基準とやらはおよそ1$=700シリアポンドらしかった。内戦前の旅行記を読んでいると10年前は1$=45シリアポンドだったとあるので凄まじい上がり具合であるし、当然当時のシリア国内でのレートは察するところがあり、今はもっとドル高になっていると思われる。

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↑ググるとこんなのが出てくるが全くあてにならない。朝鮮ウォンと同じようなものである。



結局ここでしか変えられないと脅すように言われたため、多めに100$を交換することにした。

すると105000シリアポンドがすべて1000ポンド札のまあまあな札束が出てきてウズベキスタンを思い出すなどしたが、これはどうやらドライバー氏の配慮によるものらしかった。というのもその後4桁を超えるものなど買うことはなく、道中で5000ポンド(※2000ポンド紙幣の誤りでした)紙幣も見たがおつりに困る場面もあっただろう。


まあ案の定最終日に余って頑張って消費することになるのだが足りないよりはマシだろうし多めの両替がおすすめだ

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↑内戦中の2013年に新紙幣を発行したらしく(おそらくインフレのため)とても先進的かつ状態の良いものだった。


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↑特にインド数字とアラビア語、アラビア数字とラテン文字(まじでややこしいなこれ)という表裏の対比が非常にイスラーム優位の多宗教国家感を出していて美しい。


因みに旧札も50ポンド札が流通しているのを観測できたがどれもボロボロでおすすめしないし6割くらいは下2桁が繰り上げされるのであまり気にするほどではない様子。





レバノン出国


さて第3回にもかかわらずようやくレバノン出国まできたが、レバノン出国は特に特筆することもないような平凡さで難なくスムーズにいった。なによりドライバーが写真をとってもいいよとあっちから言ってくるくらいにはルーズな雰囲気であり、出国は大抵の国で緩い(中国新疆はクソ厳しいが)のは想定通りであったがマスクと銃は当たり前にあり流石だなとは感じた。


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↑プレハブを盛りつけたような作りで中も狭かった。


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↑出国カード。フランス語があるのは流石元宗主国である。(レバノン国内ではフランス語をほとんど見ない)


で問題の再入国時にアライバルビザが取れるのかということについてはフッと笑いながら「ノープロブレム!」と言われた。経験上プロブレムであることの方が多い気がするなと思いつつ出国を済ませ建物を出た。

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再び車に乗り陸路国境によくある何もない中立地帯を2、3キロ進むといよいよシリアの国境審査所がみえてきた。ドライバーがもう写真撮影はダメだと告げる。





シリア入国


一方シリア入国に関してはまあまあ特色があった。写真がほとんどないため言葉での説明になるがご想像いただきたい。

まず手前から建物に入ると横に長い受付があり鉄パイプ製の柵で列が仕切られていた。(中国鉄道の切符売り場みたいな構造)そこにドライバーと一緒に並び順番になると入国カードを渡され、そこで書こうとすると来い!と言われ別室に送られた


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↑入国カード、やはりフランス語がある。


恐る恐る中に入ると白衣の中年男性がアラビア語で何やら聞いてくるが訳が分からないので後から来たドライバーに通訳をお願いしたところ、どうやら新型コロナウイルス波及に伴う外国人(もしくはアジア人?)限定で問診をしているらしかった。

レバノンへどこから来た?や2週間以内に中国に行ったか?などのスタンダードな質問に答えると今は見慣れた非接触型の体温計で体温を測り、終了となった。



最も突っ込むべきポイントはその人がマスクをしていなかったことだろうか。というかレバノン側は全員マスクしていたのにシリア側はほとんどマスクを着けていなかった。それどころか禁煙!と書かれたポスターがあちこちに貼ってあるのに審査官がスパスパ吸っているのだ。あゝ流石はアラブだ。


とまあ問診を終えて入国カードに記入し終えると別の部屋へ移動する。そこでまずは列に並ばずに部屋の隅にあるシリア商業銀行と書かれたブースに行き、パスポートと入国カードを提示すると30$だとぶっきらぼうに告げられ、支払うと下のような紙を渡された。(欧州人は100~150$ほどするらしくシリアにおいても日本パスポートの優位性が示される。まあマレーシアなんかは無料なんですが)


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↑アラビア語は読めないが書かれているシリアポンドの金額から察するにこの時の公定レートは1$=400ほどであると推測できる。


その後また列に並ぶことでようやくパスポートにスタンプが押され入国審査は終了となる。(と同時にESTAが使えなくなった)


正直な感想としては問診はともかく他3つは分かれてる必要ないだろと思ってしまった。一人でできるじゃん。その癖第三国人レーン(地元の人も利用する)があるのだからびっくりだ。


また、ここでもうすでに現シリア大統領であるバッシャール氏の肖像画に飽き始めてきたというか見ても背景として処理できるようになった。

各部屋に必ずあるのはさすがに多すぎないか?と思いつつ望んでそういう国に来たんだろうがと自己返答。


とまあ色々とシリア(アラブ?)の洗礼を受けながらも無事入国できた。

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↑シールタイプだったら目立つし不味いなとおもっていたが大きめのスタンプで済んだ。15日とあるのでそれ以上の滞在はできないか追加料金っぽい。





ダマスカスへ


シリアで撮影について事前に注意を受けたのは国境審査と軍事基地、そして検問所だ。

事前に言うだけありとにかく検問が多い。

審査所を出てすぐに1回、15分ほど行ってまた検問、そして首都ダマスカス市に入る際に再度と1時間ほどの道中で3回もあった。しかしこれでも最盛期の三分の一ほどに減ったらしく、平和を実感するとのことだった。早速国内を自由に移動できることの大事さを実感してしまった。



最後の検問を終えダマスカス市内に入るとまず目につくのは無数の黄色い車、タクシーだ。市外ではほとんど見ないが市内はあふれんばかりのタクシーがうようよしている。

後目立ったのは乗用車の起亜率の高さだ。ヒュンダイが多い国はそこそこある気がするがダマスカスでは起亜のシェアがかなり高かった。

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↑黄色が目立つ



そして驚いたのは公共バスである。

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そう、行ったことのある人なら一目でわかる中国の路線バスまんまなのだ。

ボロさやまんますぎることから中古と見られるが、それにしてもまさかこんなところで会うとは思っていなかった。



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↑通りかかった派手で厳重な建物、ポスターからして分かる通り案の定イラン大使館だった。


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↑内戦の影響か市内では軍服をきた大統領という看板が多かった。


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↑与党のバース党らしい汎アラブ主義的看板(エジプトとの前例をみると現実は厳しいものだ)




軽く大通りを通った印象としてはベイルートより遅れた田舎だなと思わざるを得ない街並みだった。なによりベイルート北部にあるような高層ビルがない

内戦は国を疲弊させてしまうということが改めてわかった。




とオタク的興奮をしているうちに旧市街のホテルに到着した。自称五つ星らしい。

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↑優しめな大統領





区切り


一体どうしてもう6000字にいこうとしているのだろうか。

すっかり疲れてしまったので五つ星ホテルの内部やダマスカス市内観光については大変申し訳ないが次回としたい。


最後にここまでダラダラとした文章にお付き合いいただき感謝を述べるとともに次回にはそこまで期待せずにお待ちいただきたい。(早く書け)



次回、にじみ出るあの国の影






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