記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画「トラぺジウム」の感想(7月8日追記あり)

※ネタバレを含みますが、ネタバレを見てから見ても面白いので大丈夫です。
ある日ツイッター(現X)を見ていたらこんなツイート(現ポスト)が目に入ってきた。

変だよ!怖いよ!だが、去年の映画感想でこんな話をしたのを思い出した。

今年は熱量のある感想に引き寄せられて見に行ってだいたいよかったので、来年もそんな感じで見に行きます。

2023年、見た映画の話

有言実行だ。こんな異常な熱量の感想を引き出す映画、あたりでもはずれでも話のタネになるに違いない。これは見るしかない!ということで行ってきました。


1.1回目(6月6日TOHOシネマズ渋谷)

渋谷は何と今日が最終。封切りしてまだ一か月なのにそんな…。しかも特典もらえず。渋谷っていつも手ぶらのイメージがある。なんで?

我ながらひどい感想すぎる。他の人の感想見たら鬼退治に鬼が島に行って鬼にぼろ負けして帰ってきた話って表現してる人がいて、感覚似てる人見つけるとうれしい。
後日振り返った初回の感想。


あらすじとしてはアイドルへの野心に燃えるJK・東ゆうが城州(千葉)の東西南北から集めたアイドルグループを作ろうと各地の有望JKと友達になり、目的を隠したままデビューすることに成功するが、彼氏バレ、メンタルブレイクとトラブルが続き、セコンドからタオルが投げられてグループは空中分解、夢も希望も失い廃人となってしまった東ゆうを周りの大人たちが説教ではなくさりげなく導いていき、人間性を取り戻した東ゆうが向かった先にはなんと…?という話なんですが、基本的に東ゆうの露悪的な視点で全編お送りしているので他のキャラの感情や客観的な事実を読み取りにくい、ということもあり、2回目を見に行きました。


2.2回目(6月12日新宿バルト9)

オリジナルドリンクがあったので頼みました。ドリンクの特典は品切れでした。もしかして人気なの?

存在しないテレビシリーズの総集編という位置づけ。しかしながらよくよく考えるとテレビシリーズだと仲間集めや胃がキリキリするシーンで脱落して最後まで見られなかったかもしれない。90分強制的に見させられる映画というメディアの強み。インベスターZのキャラ達なら何分でトラぺジウムを切っただろうか?

3.3回目(6月17日109シネマズ川崎)


3回目ともなると楽しみ方がわかってきた。信号、天気、非常口、広告、すべてが表現なのだ。(グループがうまく行かなくなると赤信号になったり天気が悪くなったり、現代文のテストであった風景に気持ちを込めるやつ)

4.4回目(6月19日Tジョイ大泉学園)

5.5回目(6月20日TOHOシネマズ立川立飛)

立川立飛は音が良かった。

6.6回目(6月20日イオンシネマ板橋)

なんかスクリーンが汚れていた気がする。


7.7回目(6月21日ユナイテッドシネマ豊洲)

性格と往生際の悪い運営によるトレーディング特典(全5種)による犠牲者が…。合掌。豊洲は音響が素晴らしく湾岸民に嫉妬した。内陸民は立飛に行って対抗だ!

8.8回目(6月21日グランドシネマサンシャイン池袋)

音響いい映画館で見ると感動もひとしお。みんな新しい映画館へ行こう。

8.5トラぺジウムPOP UP STORE(6月22日千葉ロフト)

東が光っている…!(集中的にスポットライトを当てているらしい)

並びも東⇒西⇒南⇒北と細かい心遣い。

9.9回目(6月24日川崎チネチッタLIVE ZOUND)

ここの音響は神。文化祭の雑踏の音声まで聞こえる。エンディングテーマの音圧にやられる。

9.5天空の贈り物展(6月24日そごう横浜店)

本作の天体写真で協力しているKAGAYAさんの個展。本編を彷彿とさせる。「ウユニ塩湖に行って人生変わった!」はもう古い!今は「テカポ湖に行って人生変わった!」の時代!

コラボメニューもおいしゅうございました。

10.10回目(6月24日横浜ブルク13)

東出すぎである。(東出昌大ではない)

10.5スイパラトラぺジウムコラボ(6月26日スイーツパラダイス上野店)


お腹パンパンなのに全部は頼めなかったので、複数人で行くべきだった。ABABよさようなら。

11.11回目(6月26日TOHOシネマズ上野)

リピーターだけではなく初回の方がいるのはいいことです。(←後方彼氏面)

12.12回目(6月26日ユナイテッドシネマアクアシティお台場)

FLEXOUNDすごい!マジ!(語彙力)チネチッタLZと双璧かもしれない。駐車場の位置がわからなくなり帰るのに苦労した。

13.13回目(6月28日下北沢トリウッド)

45席の小劇場で見るのもそれはそれで面白い。(予告がなくてびっくりした)


14.14回目(7月1日イオンシネマむさし村山)

トラぺジウムを見に来た観客4人でアイドルグループを作る!(作りません)

15.15回目(7月2日川崎チネチッタLIVE ZOUND)

星街すいせい「なんもない」のドンツードンツーもめちゃ響いていいよ!前回のチネチッタで見た人もいて、毎日通ってるのかと思った。(自分もそう思われてる説ある)なお星街すいせいステッカーは終わっていた。わーい!

16.16回目(7月2日109シネマズ川崎)

エレベーターと等身大POP見納めに。

17.17回目(7月7日イオンシネマ守谷)←7月8日追記


あらかじめ角川つばさ文庫版トラぺジウムを摂取させていた子供と二人でトラぺジウム。車酔いが激しいために電車を乗り継ぎ1時間以上の長旅で守谷まで。
94分しっかり見ることができて、「小説はカギカッコ(←セリフのこと)と文章の部分があるけど、映画だとカギカッコの部分だけだね」とメディアの特性の違いまで理解していてなかなかやるなと思った。ノベライズから入っているので南さんを(華鳥)蘭子さんと呼んでいるのがちょっと面白かった。(ノベライズは地の分で蘭子さん呼び)「小説だと大事な部分は太字になっているんだよ」と教えてくれた。確認してみると「こんなすてきな職業ないよ!」は太字にはなっていなかった。そんなのおかしいよ!!

18.なぜ「トラぺジウム」を何回も見てしまうのか?

初回や2回目見たときは、メンバーを傷つけ、グループが爆発してから最後の結末に至る流れがさすがにご都合主義じゃないか、もっと仲良くなるパートを丁寧に描いた方が良かったんじゃないか?とか思ったんですが、何回か見ていくうちに確信しました。これは意図的に描いていないんだと。じゃあなんのためにそんなことをしてるのか?それは「観客への信頼」でもあり後半の種明かしを踏まえて最初から見ると印象が変わっていくとか、「(東ゆうには)嫌なところもそうでないところもある」というどんでん返しをより効果的に魅せるためなんだなと。独善的にアイドルになりたいという思いで他人を巻き込んで壮大に爆発させたのは事実、だけどもその邪な意図に基づく行動であってもそこで培われた友情や思い出は本物で、それに救われた人たちがいる。嘘から出た実(まこと)だ。美嘉の小学生の時のエピソードも東ゆうの独善的な性格が知らぬ間に他人を救っていた、すなわち東ゆうには嫌なところもそうでないところもある(美徳も悪徳も同じ根から発している)ということが明かされていく流れは圧巻である。孤独にさいなまれていたカナダ時代の東ゆうはビデオの中のアイドルを見て、その光る姿に救われて、アイドルを目指そうと決心した。(余談だが、この幼少期に見たアイドルは大人になった東ゆうの姿かたちをしている。つまり未来の自分が過去の自分を救ったというジョジョ第四部の雪の日のリーゼント男=仗助と同じ構造になっている)

幼少期ゆうを救ったアイドルは大人ゆうの姿をしている(トラぺジウム本編冒頭映像より)


しかし別に光り輝いて人を救うのにアイドルである必要はなく、むしろ東ゆうはアイドルになる前から光っていて周りの人を無自覚に救っていた、ということが明かされていくのである。光っている人は他人を救おうとしなくても勝手に他人が救われていく。魯迅の「故郷」ではないが、東ゆうが進んで行ったところに道ができる、そんなイメージ。そして自分が進んでいくことによって勝手に他人が救われていくのだから、徹頭徹尾自分の話になるのも、最後のシーンであるキャラがトロツキーされているのも当然で、トップアイドルの原作者が現場で感じた頂点に立っていくのはこういうやつだという変な説得力がある。
元の話に戻ると、なんで何回も見るかというと、何度も見るうちに東ゆう視点ではなく他の3人はどう考えていたのかとかアイドル活動を許可するに当たって3人の親は東ゆうとの関係や東ゆうと出会ってからの変化をどうとらえていたかといったところまで目線が向くようになり、話が重層的に立ち上がってくるのだ。描かれていること、秒でしか描かれてない(東ゆう視点では重要ではない)が各人にとっては重要なこと、まったく描かれていないが他の行動から類推できること(亀井美嘉の電話シーンやお揃いと思われるLINEアイコンや鞄の飾りなど)などなど。初回視聴時はものすごい勢いで伏線を回収して綺麗にまとめていってあっけにとられたが、何回も見ていくうちにその展開が必然であったと理解できるようになる。(といっても10回以上見ろと言わないが、1回見て東ゆう最悪!チッ!最低!と思ったらもう一回だけ騙されたと思って見てほしいと思う)
最後になるが、グループが爆発して気力を失った東ゆうが、グループ解散を今までぞんざいにしてきた爺さんに伝えたら、「これからどうするんですか?」と声を掛けられるシーン、とてもよい。高校生としては人生おしまいだと思える絶頂からの転落、でもそれで人生は終わらない、続いていく。Life goes on. Ob-la-di, ob-la-da. その言葉にハッと気づかされて再起へと向かっていく。若者がめちゃくちゃ頑張って爆発するのもいいけど、お爺ちゃんの気持ちがわかる感じになってきてしまった。いかんいかん。
と、今回はこんなところで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?