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人と犬の福祉を脅かしてまで、動物愛護を貫くのは善ですか?

犬の激しい問題行動に悩む飼い主

仕事柄多くの犬たち、飼い主さん、ご家族との出会いがあります。
行動問題のご相談でかかわるご家庭は多いのですが、中には吠えや噛みつきなどの深刻な行動問題、または病気などの場合もありますが、一緒に暮らし続けることが難しいのではないかというケースのご相談もあります。

大抵の場合、一緒に暮らしていくために必要な取り組みや環境づくり、お世話やトレーニングについてお伝えすると、理解してくださり上手に暮らしていってくださるばかりなのですが、中には継続した指導が必要にも関わらず、指導を受けるための費用を用意できずに、なんども深刻な行動問題を繰り返してしまう方も、、、

そんな時の飼い主さんは精神的にも落ち込んでしまい、一緒に暮らし続ける自信を失い、管理できない自分自身にも不甲斐なさを感じ、時には相談者様のご家族からの『保健所につれていけ』という言葉にも苦しみ、犬のことに取り組む前にまずは飼い主のメンタルヘルスを保たなければというほど、ひどく落胆しています。

『飼い続けることができないのかもしれない』
『また苦情がきてしまったら』
『家族や他人にこれ以上迷惑をかけられない』
『大切にしようと迎えいれた愛犬なのに、これではどちらも不幸』
『人間の都合で命を奪っていいわけがない』
『でも本当に飼い続けられるの?』

様々な考えが頭を巡り、愛犬への申し訳なさと、自分自身への不甲斐なさとで、やり場のない感情に葛藤してしまう飼い主さんに、これまで何度も出会ってきました。

『犬の福祉』を守るために手放すことも、、、

私たちが犬たちを可愛い、大切にしたいと思う気持ちを『動物愛護』といい、犬たち自身の幸せを考えることを『動物福祉』といいます。

犬たちが生活の中で、吠え続けなければならない、噛みつかなければならないような状況は、犬たちの福祉が守られていない状況です。

犬の激しい行動問題に悩む飼い主の元では、多くの場合、犬たちもまた苦痛を感じながら過ごしています。

一緒に暮らしていく生活が、犬たちと飼い主、双方にとって幸せで『福祉』が保たれていることが、なによりも大切なことだと思います。

愛犬のために、飼い主がどれだけ時間やお金や労力をかけてあげられるのかも、とても重要なことです。 

愛犬のためにと取り組んだ分だけ、手をかけた分だけ、与えてもらう体験や学びはとても尊くなにものにも変え難いものになると思います。

ですがそれが叶わないのであれば、お互いのために、お互いの福祉を守るために手放すことも、私たちができる一つの大きな選択なのです。

別の家庭の方が、その子は安心して幸せに暮らせるかもしれないのですから。

安楽死という選択

吠えに関しては許容できるご家庭はあるかもしれませんが、激しい噛みつきとなると次の引受先のご家庭が見つからない場合がほとんどです。

仮に引き取ってくださるという施設があったとしても、そこでのその子の暮らしは果たして幸せなものになるでしょうか?

命は繋がるかもしれません。

ですが住み慣れた家を離れ、馴染みの人間がいない不安。
もしかすると、他にもたくさんの犬がいるかもしれません。
その中で安心して過ごせる居場所や自由に動けるスペース、楽しい活動や安心を感じられる他者との交流などは、充分に与えられるでしょうか。

ある人は『生き地獄』という言葉を使います。

命があっても幸せではないんです。

そして、思いがあって引き取りお世話をしてくれる方も、攻撃行動に怯えながら危険と隣り合わせでお世話をしなければならないかもしれません。

これではやはり、人と犬、お互いの福祉が守られませんね。

『生きること』ではなく、お互いが苦痛がなく『幸せに生きること』が大切なのです。

そんな風になる前に、飼い主ができる最後の選択に『安楽死』があります。

行動問題が激しくて飼いきれなくなったとき、『保健所につれていく』というのを聞いたことがある方は少なくないと思います。

ですが、保健所での殺処分の方法はガスによる窒息死です。

苦しんで死んでいくのです。

そうではなく、安楽死という選択は、獣医師の元で苦しまずに眠るように息を引き取ってもらうことができます。

どうしてもお互いのためにならない、譲渡が難しいという場合は、動物病院で安楽死させられるということを、もっと日本の犬と暮らす人たちに知っていただきたいと思っています。

身体病気で苦しむのも、精神的に穏やかに過ごせずに攻撃しながら苦しむのも、まったく同じです。

苦痛を取り除くための安楽死は、欧米では積極的に選択されています。

人の福祉を脅かしても、犬の福祉を脅かしても、命を繋ぐということもまた、『動物愛護』という考えに含まれることを知っていただきたいと思います。

誰も幸せにならない選択は、本当に善なのでしょうか。

改めて犬たちの命を預かる責任を考えさせられますね。

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