見出し画像

働きたくない人の脳内

これは私が普段いかに労働から逃げているかを示すものです。

前提となる考え方

私は働きたくない。実際には仕事にやりがいを見出すこともあるので必ずしも働きたくないわけではないが、基本的には常に働きたくないと言っている。

ことプロダクト開発になるとこの傾向は顕著で、「何も作りたくない」「何も作らずにお金を稼ぎたい」などとよく言っている。プロダクトは作った瞬間に負債になる。世の中は絶えず変化・進化していくので、作った瞬間から陳腐化が始まる。それを防ぐために継続的なメンテナンスや改善が求められる。

通常、その負債が問題視されないのは、そのプロダクトが負債以上に大きな果実つまり価値をもたらすからである。アジャイルの名のもとに incremental delivery などと言うと聞こえはいいが、要するに負債より多くの価値を生み出すための自転車操業をかっこよく言っただけである。少しトゲのある表現になったが、価値が負債を上回っている間はその自転車操業は正当化されてもよいだろう。

ただし人は機会損失に鈍感であるということを忘れてはいけない。その自転車操業をしている間に、もしかしたら競合はものすごい花火を上げるための準備をしているかもしれない。または、そこで疲弊しているエンジニアは、実はゆっくり考える時間を与えたらプロダクトの価値を10倍にするようなものすごい新規性のあるアイディアをチームにもたらすかもしれない。ROIを追うのは重要だが、ROIは隠れた機会損失を見えにくくするということは肝に命じてほしい。

私は生産性をアウトプットで測定するのが好きではない。ゴミを高速で生み出し続けることに意味があると思っていないからである。生産性は付加価値で測定してほしい。そしてこの前提に立った時、最も生産性の高い状態とは、最大限の価値を最小限の仕事(≒アウトプット量)で実現している時だと言える。「何も作らずにお金を稼ぎたい」という私の主張はここに立脚している。

問いかけ

私は一時期、プログラムマネジメントという部署で新規プロダクト開発のゲートキーパー的な役割を果たしていた。新規開発のリクエストが発生した際、大体以下のことを問いかける。

オペレーションで代替可能か

これがYesなら作らない。

もちろん状況にもよる。例えば時給1万円超のスペシャリスト人材が何人も必要なオペレーションで代替するより、サクッと1スプリントで開発できる機能がありがたがられることは普通に有り得る。このように、ここで言う「代替可能」にはテクニカルに代替可能であるか否かという点のみならず、ROIやブランディングやビジョンなど様々な面での代替可能性を考慮する必要がある(これは次の項で書く市場にあるプロダクトでの代替も同じ)。

しかし、大体の場合、オペレーションでそもそも代替可能なのであればまずオペレーションで代替したほうがよい。開発コストなしで初期検証が可能だからである。一旦回してみることでプロダクトがどうあるべきかがもっとシャープに見えてくることが多いし、実際それが回らなかった時には「オペレーションでの代替はできなかった」と言うことができる。

市場にあるプロダクトで代替可能か

これがYesなら作らない。

世の中には既にとても便利なツールがたくさんあり、少しの工夫でいろいろなことができるようになっている。その中でわざわざ作るということは、ユーザーがわざわざそのプロダクトを使う理由が存在しているということである。

前の項のオペレーションでの代替と同様に、テクニカルに代替可能であるかどうかだけでなく他の観点も含めて検討する必要がある。例えば「工夫すればどうにか使える」という状態を心地よいと考える顧客は少ない。しかしこれも、そもそもの仮説をどう検証するかの設計次第では、まず代替してみるというのはひとつの有力な手段である。

プロダクトが競争優位性に繋がるか

これがNoなら作らない。

これは、ざっくり言えばリーンキャンバスでいうところの unique value proposition が明確かどうかということであり、言い換えれば「なぜ他でもない私達がこれを作るのか」が明確かということである。それが明確になっていない状態で何かを作るよりも、もっと他に作るべきものがあるはずである。

SLA定義に整合した保守が可能か

これがNoなら作らない。

チームが疲弊し特にエンジニアの離反を招くし、顧客への約束も果たせないからである。もちろんプロトタイプ段階ではSLAの考慮が必要ないことが多く、この縛りは受けない。しかし、その場合も正式な公開までにこれをどう定義しどうクリアしていくかは定めなければならず、その見通しが立たないのであればまずその整理をするところから始めたほうがよいと思われる。

ROIが出るか

これがNoなら作らない。

ROIが全てではないというのはこれまで書いたとおりだが、プロダクトを作るからには何か達成したいことがあるはずであり、そのリターンに対して投資が適切かというのは常に気にする必要がある。

今やるべき理由が明確か

これがNoなら作らない。

先に書いた機会損失の話がここに繋がる。なぜ今、他の何かを押しのけてまでこれをやる必要があるのか。それが説明できないのであれば私達は何か大きな機会を、もしかしたら気づかないうちに逃してしまっているかもしれない。

ここまでの全てのゲートを通り抜けた場合

念の為もう一周してみて。それでも同じ結果だったらやるわ〜

ありがとうございます。いただいたサポートは、脳の栄養補給のため甘いお菓子となり、次の創作に役立つ予定です。