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失恋2週間後の上空で流した涙

私は2週間前、帰省をした時に高校の時から好きだった人と、半年ぶりに会う約束をして、帰り際に告白して振られた。

ダメ元だったけど、でも付き合えるかも、ってほんのちょっとだけ、いや、まあまあしてたのかも。高校を卒業してからお互い家を出て離れている間に電話をしたりしていて、その間に私のことを好きになっていってくれてるのかなと心の端っこの端っこで期待していた。

でもやっぱりダメ元だった。もうこの曖昧な関係に蹴りをつけようと思って、会う約束をして告白した。

結果、「ほんとにごめん、好きな人がいる」で終わった。
その後にもし○○がしたかったら電話とか今まで通りするで、とか言われたけど頭に入ってこなかった。何それって感じだった。私のこと好きじゃなくても、まさかこの半年に好きな人ができているなんて、自分なりに彼に好きになって貰えるように頑張ってた私はかなりショックだった。いや、もっと前から好きだったのかもしれないけど。初めて彼の前で泣いた。彼も泣いていた。夜のベンチでの事だった。


私は今帰りの飛行機に乗っている。

数年前に放送していた「表参道高校合唱部!」というドラマに登場する歌、「愛の歌」をイヤホンで聞きながら、私は乗り継ぎの今日2機目の飛行機に乗りこんだ。



めぐるめぐりめぐるめぐり

席に着いてすぐに、友達にオススメされた小説を開いた。「四月になれば彼女は」。帰省中に買ったのだがなかなか読み進めていなかった。先程乗っていた1機目の飛行機でも読んでいたので続きを読もうと思った。

読み進めて数分、登場人物の2人が夜の電車で並んで座り、片方がが「あなたの事が好きです」と、もう片方が「私もあなたの事が好きです」告白しあうシーンを読んだ。イヤホンからは愛の歌のサビの歌詞が聞こえてきた。



怖がらないで明日なんか
集めないで約束なんか

追いかけないで昨日なんか
数えないで思い出なんか




急に彼を思い出して涙が出てきた。もう今は連絡もしてない彼と、ほんの少し前に2人で並んで電車に乗って出かけていたのを思い出した。正面の窓に姿が映っていた、というのが本の内容とリンクした。急に、ほんとに急に、振られてからこんな感情になったことなかったのに、かなり大粒の涙を流してしまった。急に、めちゃくちゃ好きだったと思ってしまった。隣にはかなりの大人の男の人が座ってる、こんなの見られたらなんだなんだと思われる。それでも涙がでてきた。思わず本を閉じた。
暫くその人の姿が頭の中に浮かんでた。腕とか、後ろ姿とか、髪型とか。上を見上げたら天井に設置されてる小型テレビに何かの番組が流れていた。その間も愛の歌は止まることなく流れ続けていた。

めぐるめぐり

少し泣くことで疲れてしまったが、10分20分もすれば涙も止まり落ち着いてた。
再び本を読み進めた。作中で付き合い始めた2人を見て一瞬また彼の姿が浮かんだ。
その暫くあと、機内のキャビンアテンダントのお姉さんが飲み物を配りにカートを引いてやって来た。喉も乾いていないしいいやと思ってた。泣いたあとだし顔あげなかったら通り過ぎてくれるかなって。
でもお姉さんは一人一人聞いているようだった。私は通路側で、窓側から3人並んでいる状態だったから、窓側の人から順にお姉さんは声をかけていった。
自分の番が来て、「お水いかがですか?」と聞かれた。私は本に向けていた視線をお姉さんに向けて、「要らないです」と答えた。わざわざありがとう、の気持ちで少し笑顔で答えた。お姉さんは「失礼しました、」と笑顔で答え、また次の列のお客さんに顔を向けた。その瞬間、涙腺がブワッッと緩む感覚を感じた。すぐに下を向いた。また涙が出てきた。びっくりした。えっっっっなんで今
多分声を発したからだ。今日は昼に人にお見送りされてから1度も声を発していなかった。なんか、さっき感じたずっと心の中にとめていた「好き」の気持ちを声に出したように錯覚したのか。またボロボロ涙が出てきた。マスクが濡れて顔に引っ付く感覚がした。

何を思ったのか腕時計を見た。丁度19時だった。




今はもう飛行機も私の一人暮らししている県に到着した。まだ愛の歌を聞いている。


めぐる
めぐりあい




もうすぐで21時だ。もう少しでまた一人暮らしに戻る。でももう彼とは電話しない。

付き合ったふたりが今後別れてしまうような内容が読み取れ、少し安心してしまうクソ女。まだ私はそんな女。

「表参道高校合唱部!」のドラマの中の人のような、この「愛の歌」を歌い人の愛の復縁を心から願える人間に、私はなるのかな。




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