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#12 キツくて脚が止まる。それはエネルギーの枯渇ではなくメンタルストップ

人には限界があって、あーもうこれ以上は無理!と感じる瞬間があります。私も今年の富士ヒルクライム途中に限界を感じて失速しました。。

しかし、それは本当の意味で体のエネルギーが枯渇して筋肉が動かなくなったのではなく、メンタルによるストップがかかったものだというのが今回の論文の主旨になります。

なかなか手厳しく、興味深い内容ですので是非目を通してみてください。メンタル関連の論文レビュー第二弾になります。前回の第一弾も併せて読んでみてください。



はじめに

みなさんこんにちは、川崎です。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。しっかりと押さえておきたい、非常に大切になってくるメンタルについてのレビュー第二弾になります。

持久系スポーツは体を持久的な負荷に馴染ませるため、生理学的な適応を日々コツコツと貯めていくことが大切になってきます。徐々にトレーニングの負荷を上げていく過程は楽しくもあり、そして大いに辛くもあります。

その積み上げた適応を存分に発揮するためには、メンタルな強さも体に追いつかなければなりません。火事場の馬鹿力!ではないですが、体の潜在能力はメンタルのはるか先を行っている。このことを改めて検証したのが今回の論文になります。

では、内容をご紹介していきましょう。


今回の論文が検証したこと

みなさんもヒルクライムやトレーニングで限界に挑戦している最中、疲労で失速したり、脚が止まってしまったことがおありかと思います。

これ以上この強度を保つのは無理だ。。悔しいですが私は数えきれないほどあります。

しかし、私たちは心の中で「まだ本当の限界ではない」と感じているふしもあります。「あと一分なら持ちこたえられたかもしれない」と。

そして科学者はこう考えます。「体の機能的にはまだ限界に達していない。これを実験によって検証する方法を考えよう」と。

今回の論文では疲労困憊な状況を作って、そこから更にパワーを発揮できるなら体の限界ではないという検証を行っています。


検証方法

検証には大学ラグビー選手という、いかにも限界突破していそうな選手たちが選ばれました。

まず、彼らに95%VO2max強度で疲労困憊まで自転車エルゴメーターを漕いでもらいます。しかもこの科学者は相当に用心深く、万全を期すためにより長い時間漕ぎ続けられたトップ3の選手に賞金も用意しています。

そして疲労困憊直後にRPE(主観的運動強度)を聞いて、マシンの設定を変更するため数秒間をあけた後に5秒間の全力走を行うよう指示。(ちなみに数秒間ではエネルギーは回復しません)

この5秒全力走、仮に本当に体の限界に達していれば疲労困憊になるまで漕いでいたワット数は出ないはずです。

果たして結果はどうだったのでしょうか?


検証結果

検証の結果、全員が5秒全力走で疲労困憊時に発揮していたパワーの2倍以上の出力を叩き出しました。このことから、筋のエネルギーは枯渇していないと判断できます。

また疲労困憊時のRPE(主観的運動強度)の平均値は19.6(最大が20)と、主観的には本当に限界がきていることが伺えます。

このことから、筆者は脚を止めたのは主観的な疲労度でありメンタルだと結論づけました。


まとめ

疲労困憊でこれ以上は続けられない!とパワーを落としたり脚が止まったりするのは、本当にエネルギーが枯渇したからなのか?を検証した結果、まだ生理学的な限界には達しておらず、主観的な疲労度に左右されると結論付けられました。

まだ脚を動かせたかもと、心の中では薄々分かっているけれど、それを検証してしまうのが科学者らしいなと思った論文でした。

生理学的な限界のかなり手前にメンタルの限界線を引いているとすれば、いかにこの限界線を突破できるかもパフォーマンスアップには大切ですね。

根性だ!と言われるとイラっとしますが、根性の中身を一つ一つ検証して理解していくと納得できることが多々あります。理解した先で受け止める「根性」はすごく大切なものだなぁと感じる昨今です。

次回も主観的な限界が脚を止めたことを検証した論文を紹介する予定です。

最後までお読みくださりありがとうございました。スキ、フォローが大変励みになります!


ご紹介した論文

Marcora, S. M., & Staiano, W. (2010). The limit to exercise tolerance in humans: Mind over muscle? European Journal of Applied Physiology, 109(4), 763–770.


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