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#8 6週間のポラライズドトレーニングは閾値トレーニングよりも効果が高かった

みなさんこんにちは。今回の記事に目を通してくださりありがとうございます。今回はトレーニング方法の違いで体の適応も変わったよという内容の論文をご紹介します。ポラライズドトレーニングとはトレーニング強度を二極化させて、乳酸閾値(ゾーン4)ではなくVO2max(ゾーン5)以上の高い強度帯に重点を置くトレーニングです。今回の論文はポラライズドトレーニングのメタ分析(たくさんの論文の結果を改めてまとめ直した論文)を行った論文が根拠としている論文の一つになります。

論文の検証の結果は、ポラライズドトレーニングの方が乳酸閾値付近でのトレーニング(以降閾値トレーニング、閾値トレと書きます)よりもFTPやVO2max、40kmタイムトライアルの結果が向上しました。しかし後でもお話しますが、決して閾値トレーニングに効果がない訳ではありませんし、今回の論文の対象者が普段閾値トレーニングを実施していることもポラライズドトレーニングの方が効果が高かったことに影響しているとも考えられます。どういった検証がなされたのかを読んでもらって、皆さまの普段のトレーニングの参考になれば幸いです。


論文の強度設定とzwift強度設定の照らし合わせ

ポラライズドトレーニングの論文では、強度を3つに分類することが標準になっています。この強度設定をzwiftの強度設定に照らし合わせると、概ね下図のような関係になります。

  • LOW:エンデュランス~テンポ領域

  • MIDDLE:テンポ~LT(乳酸閾値)領域

  • HIGH:乳酸閾値~VO2max領域


ポラライズドトレーニングとは

冒頭でもご説明したように、ポラライズドトレーニングはトレーニング強度を二極化させて、乳酸閾値(ゾーン4)ではなくVO2max(ゾーン5)以上の高い強度帯に重点を置くトレーニングです。今回の論文ではMIDDLE領域を全く行わずにLOW:HIGHを8:2の配分でトレーニングしています。今回は乳酸閾値付近のトレーニングを重視する方法が比較されていて、LOW:MIDDLEを55:45の配分でトレーニングが行われています。


今回の論文が検証したこと

  1. トレーニングの方法は様々なものがあり、目的とするパフォーマンスを向上するために日夜研究が進められている

  2. 代表的なものにテンポ~乳酸閾値を重点的に行う閾値トレーニングがある

  3. もう一つ代表的なものにVO2max以降を重点的に行うポラライズドトレーニングがある

  4. FTPやVO2max、40kmタイムトライアルの向上にとってはどちらが効果的なのか?←ここを検証


検証方法

普段から週に7時間ほどトレーニングをしている平均37歳の男性が実験に参加しています。普段のトレーニング方法は閾値トレ主体で組まれているようでした。参加者たちは40kmタイムトライアルを1時間以内で走れる実力があり、かなり速い人たちです。参加者には6週間のポラライズドトレーニング(以下ポラトレと書きます)と6週間の閾値トレの両方を、4週間のインターバルを設けて両方実施してもらっています。どちらのトレーニングを先に行うかはランダムに決められます。トレーニング内容は以下の内容で実施。

  • ポラトレ:HIGH領域として4分VO2max-2分レスト×6本を週に3回、LOW領域を週に5時間

  • 閾値トレ:MIDDLE領域として88-100%FTP60分を週に3回、LOW領域を週に4.4時間

予め測定されたVO2maxと乳酸閾値、その時の心拍数をもとに適応が見られた場合は都度ワット数を上方修正しトレーニングが進められました。


検証結果

ポラトレと閾値トレ、それぞれ6週間を実施した結果は以下のようになりました。

  • FTP:ポラトレ8%UP、閾値トレ4%UP

  • 最大酸素摂取量(VO2max):ポラトレ8%UP、閾値トレ3%UP

  • 40kmTT:ポラトレ8%UP、閾値トレ4%UP

どちらも3つのパフォーマンスが全て向上しているものの、向上度合で見ればポラライズドトレーニングに軍配が上がりました。


まとめ

6週間のポラライズドトレーニングと閾値トレーニングの効果を検証した結果、両方ともにパフォーマンスアップが見られましたが、ポラライズドトレーニングの方がより効果が高い結果となりました。この結果からは、同じ時間トレーニングを行うにしてもその内容で効果が変わることが再確認できます。限りある時間を有意義にするためにも、トレーニングの計画は大切ですね。

一つ大事だなと思った点は、今回の参加者が普段閾値トレーニングを重点的に行っている方たちであったということです。ですのでポラライズドトレーニングの方が普段にはない刺激が体にもたらされたことで適応も大きく、パフォーマンスの大きな向上につながったことも考えられると論文の作者は考察されていました。

もちろんポラライズドトレーニングの効果が高いとする論文はたくさんあって、その効果に疑いはありません。しかし閾値トレーニングも効果的なものであり、誤解のないようにしていただければと思います。


最後までお読みくださりありがとうございました。あともう一遍、ポラライズドトレーニングに関する論文をご紹介しようと考えています。その論文では4種のトレーニング方法が比較されていて、大変面白い内容です。是非そちらにも目を通してもらえると嬉しいです。


ご紹介した論文

Neal, C. M., Hunter, A. M., Brennan, L., O’sullivan, A., Hamilton, D. L., Devito, G., Galloway, S. D. R., & Galloway, S. D. R. (2013). Six weeks of a polarized training-intensity distribution leads to greater physiological and performance adaptations than a threshold model in trained cyclists. J Appl Physiol, 114, 461–471. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00652.2012.-This


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