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#3 20分間テストで推定されたFTP値で実際に60分走るのは難しい

みなさんこんにちは。今回の論文レビューはFTP値にまつわる疑問を扱った論文になります。論文を簡潔に、サクッとご紹介するために気にしている点をこちらの記事にも掲載していますので、併せて読んでもらえると嬉しいです。


FTP(Functional Threshold Power)とは

まず、FTPとはFunctional Threshold Powerの頭文字をとったものです。このパワーは、1時間維持し続けられる最大のパワー値を意味していて、トレーニングの強度を決めたり日々のコンディションを数値化する(トレーニングストレススコア)ことにも使われている大変便利な指標です。トレーニングストレススコアに関して以下の記事も書いていますので、良ければご参照ください。

指標として大変便利なFTP、しかし実際に計測しようとすると結構ハードルが高いもの。”1時間本気で走ること”が最も妥当な数字になりますが、心理的にもハードルが非常に高く、なおかつ実走で計測するとなるとローラー台か富士ヒルクライムのような長時間止まらずに走れる環境が必要です。

そこで1時間本気で走らずとも、もう少し短い時間でFTPを推定できる方法が開発されています。こちらに関しても記事を書いていますので、是非読んでみてください。

その中でもポピュラーな方法として、今回の論文も取り上げている20分間テストがあります。方法は単純で、20分全力維持し続けられたパワーの95%をFTPとするものです。FTP生みの親、アレン&コーガン博士によって作成されたテストでもあります。

しかし、実際にテスト計測を行ってみた方は、「本当にこのパワーを1時間も維持できるのか?」と思ったことがあるかもしれません。私もその一人です。こんなパワー、出せる自信がない。。。どうやら同じような疑問を持っている人は多いようで、2022年に今回紹介する論文が発表されました。


20分間テストで推定されたFTP値で実際に60分走れるのか?

今回の論文が検証したことは、以下の2点です。

  • 20分全力走の95%で本当に60分間走りきれるのか?

  • 選手のレベルによっても走りきれる時間は変わってくるのではないか?


検証方法

今回の論文ではまず20分全力走を実施しFTP値を推定。その3日後に推定したFTP値で何分間走れるかを検証しています。また、色々なレベルの選手が参加しているということが今回の論文の特色でもあります。選手のクラス分けは以下のようになっています。

  • 愛好家:平均FTP3.0ワット/kg

  • 日々トレーニングしている人:平均FTP3.8ワット/kg

  • 良く鍛錬されている人:平均FTP4.3ワット/kg

  • プロ選手:平均FTP4.8ワット/kg


検証結果

検証の結果、以下のことが分かりました。

  • 20分全力走で推定されたFTP値で実際に走ってみた結果、維持できた時間は全体平均で44分と、60分を大きく下回った

  • クラスによって維持できた時間が異なり、サイクリストの鍛錬度によっても維持できる時間が異なる傾向

  • クラスに関係なく60分以上継続できた人もいれば、30分に満たない時間にとどまった人もいた。このことから鍛錬度によらず、個人によっても維持できる時間が大きく異なる


まとめ

FTPをより短い時間で求められる20分間全力走ではありますが、実際に求められたFTP推定値で60分間継続することは多くの人にとって難しいことが分かりました。私の場合は20分全力走の90%あたりが実際に60分間維持できる値になるかなあという実感です。

FTP値を高めに見積もってしまうと強度設定が高くなりすぎてしまったり(Zwiftのメニュー強度が高すぎて完遂できない)、トレーニングストレススコアの管理にも若干の偏りが生じます(なかなかトレーニングストレススコアが高まらないなど)。

実際に1時間全力で走ってみることが最も妥当なFTP測定方法ではありますが、やはり難しい場合には推定値の95%ではなくもう少し低い補正(90%)をすることが現実的なのかもしれません。


最後までお読み頂きありがとうございました。スキ、フォローをいただけると大変励みになります。これからもよろしくお願いします。


参考文献

Sitko, S., Cirer-Sastre, R., & López-Laval, I. (2022). Time to exhaustion at estimated functional threshold power in road cyclists of different performance levels. In Journal of Science and Medicine in Sport (Vol. 25, Issue 9, pp. 783–786). Elsevier Ltd.


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