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雨の日の出会い

雨の日になると、思い出すことがある。
これは、2010年の話。

神田の街中を、仕事帰りに歩いてたら、
道に迷っていた外国の3人組を見かけた。
雨が降ってるのに傘もささず、
一枚の紙を持ちながら、ごにょごにょと相談中。

一回、横を通り過ぎて、どこから来たのかなー、
なんて思いつつ、後ろ振り返り、チラチラみていたけれど、
ずっと、同じ姿のまま。雨はまだ降っているのに。

少し歩いてしまったけれど、やっぱり気になって引き返した。
「あの、、どうしました?」
思いっきり、日本語で聞いた。

すると持っていた紙を差し出して見せてくれた。
地図だった。
そして、日本語で、
「カンジヨメナイです」って教えてくれた。
地図は確かに漢字が多くて、難しいかも、って思った。

ここに行きたいのね!と、その地図を見て、瞬時に判断できたらよかったけれど、残念ながらその時の私は、その辺の地理を把握してなくて、自信をもって案内はできなかった。
だから、一緒になって探すことにした。

えーと、今の位置は…どこだ?
周りの建物で、目印になるようなものがなくて、
地図と照らし合わせても、イマイチ現在地がつかめない。
少し移動して、なにか手がかりになるものを見つけたかった。

ただ、雨の中で傘を持たない3人を連れて、
あてもなく歩くのは気がひける。
とっさに、雨宿りできそうなお店の軒先に3人を残し、
プリントアウトされた地図を持ちながら言った。

「ココで待ってて!探してくる!
この地図持ってっていい?戻ってくるからね!」
不思議なことに誰一人、不安そうな顔をせず、
ニコニコして「ハイー」って答えてくれた。
「待っててね!」
そう言い残して、私は地図を頼りに
少しうろうろし、目的の場所を探し出した。

でも今でも思う、、
なぜ、初めて会った人に、
一枚しかない貴重な地図を渡せるのか、と。
簡単に人を信用しちゃうなんて…!

私が悪いオンナで、地図を持って逃げちゃってたら、、
どうしてたんだろう。

そう時間はかからなかったけれど、
私は走って、3人を置いてきた場所に戻った。
「あったよ!こっち!」
その声に、満面の笑み。私もつられて笑顔になる。

そのあと、自分の傘に1人だけ招き入れて歩いた。
目的地へ案内する間、少し会話をしたのだけれど、
とても流暢な日本語で、すごいなぁと感心するばかりだった。

「どこから来たの?」
「ネパールです。」
「この場所に何の用があるの?」
「先生がいるから、会いにきたんです」

先生って何の先生だ…?気になりつつも目的地の場所に無事送り届け、笑顔の三人と手を振り、別れた。

神田という土地柄、外国の方と出会うことが多くて、よく道を尋ねられるけれど、流暢な日本語の方と出会ったのは初めてだった。話しかけてくる人は、殆ど英語だ。

英語で尋ねられて、うまく答えられなくて、
「えーっと、大通り…大通り…ビックストリート!」
なんていって、大笑いされたこともある。

ちなみに正しくは、メインストリートです。恥ずかしい。

でも、たぶん二度と会うことは無いでしょう。
「あの日本人、ビックストリートって言ってたぜ!」って、笑いの種にされてても、日本楽しかったね、の思い出になってくれたらいい。
こんなこと、思い出にもならないか。

私が海外で、色々な国の人に助けてもらったように、
私はいつだって、助けになりたい。
出会った人たちの、日本滞在が、
楽しい日々でありますように。

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