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好きな一冊の紹介📖

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読んだ本の感想を気まぐれに投稿していきます。ジャンルは主に、小説や学術的な内容のものが多いです。好きな著者は夏目漱石。好きな本や良いなと思ったものには、ぜひスキを押して共有してく…
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2020年5月の記事一覧

六千人の命のビザ / 杉原幸子著

(2016-06-03 Soka Book Waveより) 本書は、戦時中の時代背景を追って、杉原千畝の生涯を、妻の杉原幸子が語った一冊である。 当時、ナチスによるユダヤ教徒迫害のため、ヨーロッパから脱出してきたユダヤ人のために杉原千畝は外務省としてビザを発給し続けた。 私は、毎日何千人にも及ぶユダヤ人のビザ発給のために、人道支援として行った彼の行動は、世界中で称賛されてもおかしくないと思った。 それと同時に、ナチㇲによる人権迫害の歴史は、ユダヤ人だけでなく、一人の命

〈中東〉の考え方 / 酒井啓子著

( 2017-04-14 Soka Book Waveより) 本書は、一見複雑で不明瞭に思われがちな「中東」地域の歴史の謎を、日本の著名な中東政治専門研究者、酒井啓子が解き明かした一冊である。 アラブ諸国のローマ時代からの歴史と文化から、現代政治の構造とその発展まで、平易に理解されているため、誰でも手に取りやすい内容である。 また本書は、一般的に誰でも抱くような、”中東地域では一体何が起こっているのか?”や、”そもそもアラブ人とは誰なのか?”などの質問を文頭に投げかけ

現代政治理論 / 川崎修編 ; 杉田敦編

( 2017-04-13 Soka Book Waveより) 政治とは何か、民主主義とは何か、自由な権利とは何か、といった誰でも抱くような疑問点から、歴史的顕著な学者の見解をもとに、現代政治理論の内容が平易に表現された一冊である。 私はこの本の内容の中でも特に、「多文化主義」というキーワードを取り上げたい。多文化主義とは簡略的に、あらゆる言語や民族の異なるグループ同士、互いの多様性を国家内で是認・維持していくという考え方である。 好況時、多文化主義を受け入れてきたイギリ

人道的介入 : 正義の武力行使はあるか / 最上敏樹著

( 2017-04-03 Soka Book Waveより) 無罪の人々が命を落とす世界中の残虐な紛争地で、「人道的介入」を求め、戦争を止める理由で、武力行使をすることは国際社会で認められるか。 認められるのならば、無罪で死んでゆく市民らの人権は誰が保障するのか。 本書は、武力行使のもとで人道的介入は果たして認められるかという是非を論じた一冊である。 英国で顕著な国際政治学者アダム・ロバーツや、アメリカで顕著な政治哲学者の「人道的介入」の解釈をひもときながらその論点を

開発援助か社会運動か : 現場から問い直すNGOの存在意義 / 定松栄一著

( 2017-04-01 Soka Book Waveより) 本書は、筆者の、国際開発に15年間奔走してきたネパールでの国際開発の経験と、そこから感じた筆者の心情を熱烈に物語った一冊である。 政治的に中立な立場をとらざるを得ない国際協力機関NGOがもつ特質は、時に人道支援の邪魔をする。支援の限界や制限を感じる中で、果たして、支援することが当の人々の望みになっているのか、この支援の在り方で現地の人々の状況は本当に改善するのか。 国際開発という分野で現場に立つ一人の人間の葛

海外で恥をかかない 世界の常識

( 2017-04-01 Soka Book Waveより) この本は、これまで世界中を旅し、多様な文化に触れてきた池上彰が著した一冊である。 世界中を旅した実際の経験や、各国の世界史から現代史、雑学、さらに観光名所の紹介などの情報が存分に含まれているため、楽しみながら読み進めることができる。 この本の内容の中でも特に私は、様々な国の食文化と世界史に興味もった。食文化においては、例えばドイツのビールのグラスには目盛りの線がついていて、線の高さ丁度にビールが注がれるように

レポート・論文の書き方入門

( 2017-04-01 Soka Book Waveより) 本書は、大学での講義における勉強の仕方や、レポート、論文のまとめ方など、大学の一般的な学習方法の基礎的な内容から応用の内容までが明確につづられている。 特にその中でも、「テキスト批評」とよばれる、読了した本の内容を簡略的にまとめ、筆者の意見を批評する方法がある。 これは、読んだ本の内容の中で、どの文面が自分にとって関心があると思ったかを明らかにし、そして本文中の自分の関心のある内容に基づき、自ら問題提起を立

欧州複合危機 : 苦悶するEU、揺れる世界 / 遠藤乾著

( 2017-04-01 Soka Book Waveより) 現在のヨーロッパ移民・難民の大量流入は「第二次世界大戦以来の人道危機」と呼ばれている。 そのような世界的危機が逼迫する中、本書は、現代のイギリスのEU離脱に伴う移民・難民が社会にもたらす影響、そしてヨーロッパ諸国の経済的、歴史的背景からひも解くEUの課題などが明確に述べられている。 また、EUが発展していく過程で、民主主義、ナショナリズム、社会連帯とアイデンティティの各キーワードが、現在の国際社会にどのような

地図で見るアラブ世界ハンドブック / マテュー・ギデール著 ; 太田佐絵子訳

(2017-04-01 Soka Book Waveより) この本は、アラブ諸国の世界史、政治体制、武力による戦争や対立など、時系列を辿りながら多様な領域にわたって内容が描かれている。 特に、誰もが混乱してしまいがちな、中東地域の多様な宗派の関係性や、民族間での紛争などの論点が複雑である一方、その内容が図や表などを用いて、平易に表現されているため、誰でも手に取りやすい一冊である。 初歩段階で、中東世界を理解しようと試みる人々にとって必読である。是非推奨したい。

日本一の秘書 : サービスの達人たち / 野地秩嘉著

( 2017-05-21 Soka Book Waveより) 仕事におけるサービスの極意とは何か。 本書は、ホテルのドアマン、日本一の秘書、犯人逮捕のための似顔絵を描く刑事、秋田県のローカルヒーロー、シミ抜きを得意とするクリーニング屋、焼鳥屋の名物店主、薬の行商の、日本各地でサービスに徹する人々の極意に迫った一冊である。 一流を極める人々の人生には、必ず光と影の両極がある。仕事上で、一瞬の喜びや成功を得るために、彼らは莫大な労力と熱を注ぐ。 それは全て「一人の人」のた

移民の経済学 / ベンジャミン・パウエル編 ; 藪下史郎監訳 ; 佐藤綾野訳 ; 鈴木久美訳 ; 中田勇人訳

(2017-05-18 Soka Book Waveより) 本書は、特にアメリカに住む移民が、社会に及ぼす影響について経済的視点で書かれている。 移民が、社会にどのようにして溶け込めるのかを構造的に見た「同化論」という理論がある。私は、難民・移民の人々の社会統合の在り方を深く知りたく、特にこの理論委着眼点を置き、読み進めた。 そもそもなぜ移民が社会に「同化」する必要があるのかという原点に立つと、近年、移民が他国に移住する中で、彼ら独自の文化や基準を切り捨てる必要はないと

生誕100年、混迷の現代を撃つ。ハンナ・アーレント

(2017-05-14 Soka Book Waveより) この本は、ハンナ・アーレントの生涯を物語った話であるが、私はその内容が説明されているイラストが非常に面白いと思った。なかなか口では説明が難しく、またイメージしづらい「実存主義」などの概念がわかりやすいイラストによって、見事に表現されている。 人間は、他者とかかわっていく中で「孤独」になる経験を覚える。 例えば、会話している相手と、趣味や日常について話す時、相手がどんな性格か、理解をしていく。その時に、他者との違

難民問題 : イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題 / 墓田桂著

(2017-05-01 Soka Book Waveより) 本書は、現在世界の紛争などから発生する、難民の大量流入に関して、何が問題点でどのような影響が今後国際社会に及ぼすのかをあらゆる視点から捉えた一冊である。 移民、難民がヨーロッパ諸国に移動するのは、様々な要因がある。 それらの要因を、「押し出し要因(push factor)」と「引き出し要因(pull factor)」の人口移動の理論の考え方をもとに、わかりやすく述べられている。頭の中で整理して読み進めることがで

平和を目指す君に :  ネパールとアフガニスタンで考えた抑止力と平和構築 / 小泉尊聖著

(2017-05-09 Soka Book Waveより) NGO職員、JICA専門家、日本大使館職員、NATO機関の職員など、あらゆる職経験を積んできた創価大学法学部出身の筆者が、平和のためのアプローチに対する意義を見出していく。 内容は、職場経験での人間関係の悩みから著者自身の恋愛関係の話など、実経験の話が当時の筆者の心境と共に、詳しく述べられているため、非常に読みやすい。 現在、国際機関の果たす役目というのは、どのくらい機能しているのだろうか。今日、国の安全を国連