発達障害の診断確定後、私と夫のすれ違い

夫が発達障害と診断された後、私達夫婦の仲は悪くなっていきました。

私は結婚前から夫の発達障害に気づいていて、夫も夫自身で発達障害に気づき私にカミングアウト。

診断は受けていないものの、実際に診断を受けるまでのたぶん五年間くらいは、夫婦間で夫に発達障害がある事は共通認識として持っていました。

なので、診断された事で何かが変わるとは、正直私は思っていませんでした。

でも、夫婦仲が改善してきた今、あの時何故、私達夫婦がすれ違ったのか、その原因を考えてみると、その一因には、夫にとっては大きな変化があった事を私が理解しきれていなかった事もあるのだろうと思っています。

診断を受けた事で、夫の中では「自分には発達障害の疑いがある」から、

「自分には発達障害がある。自分は障害者だったんだ」

という認識に変わったのです。

この、当事者の方が受ける衝撃の大きさに気づけないと、診断を受けた後、周囲と診断前よりも上手くいかなくなってしまう可能性があるので、何かの参考になればと思い、今回は当時の夫の様子と私が思っていた事を書いてみようと思います。

さて、貴方はもし自分に病気や障害があるとわかった時、一生懸命調べるのはAとBのどちらの情報ですか?

A

病気や障害が治った話や、治らなかったが努力の結果成功者になれたというような、明るい話。

B

病気や障害が治らず苦しんだ話や、病気や障害が原因の失敗談など、暗い話。

私は前者=Aでした。

夫が診断される前からちょこちょこ発達障害について調べたりはしていましたが、改めて、障害者雇用の事も調べないとと思い、夫と同じような障害を公言している有名人や、障害者雇用の成功例など、上手くいった話を中心に調べて参考にしようと思いました。

夫は後者=Bでした。

夫は、診断される前はそれほど熱心に発達障害の情報収集をしていた訳ではありませんでした。

診断されてからは、本人は調べようと意識したつもりはなかったのかもしれませんが、夫は発達障害の悪い話、失敗談などを毎日の様にネットで検索して読みあさり、どんどんその暗い話に飲み込まれていきました。

発達障害がある方の中には、そういうネガティブな思考に飲み込まれやすい方も多い様なので、本当に注意が必要です。

私が、

「発達障害があっても、生き方は色々あるじゃないか。こんな成功例もあるのか!  凄いなぁ。夫の得手不得手もわかってきたし、これからも夫と二人で協力しながら、幸せになる事を追求して行こう♪」

と思っていた頃。

夫は、

「発達障害があったらこんな問題を起こすんだ…。孤独死する羽目になった人もいる。俺も同じようになるのかもしれない。発達障害を毛嫌いして悪口を書いている人もたくさんいるな…。発達障害というのは本当にどうしようもないんだな…」

と、自ら負のレッテル貼りを自分に重ねていました。

『障害者』という言葉に引きずられてしまったと言う事なのでしょうか。

私は子供の頃、障害や難病持ちの友人が何人かいたお陰か、『障害者』という言葉に特に良いイメージも悪いイメージもありません。

当事者でもないですし(※拡張型心筋症という持病が私にはありますが、難病認定されるほど酷い病状ではない)、私の友人には障害があったな~と、ある意味のんきに思っているだけです。

夫は元々『障害者』という言葉に少し悪いイメージを持っていたのかもしれませんし、何より当事者です。

診断された事実を前向きにとらえる事は難しかったでしょう。

「発達障害」と診断された事で、夫はネットで囁かれる様な「悪い発達障害者」らしく振る舞う様になっていってしまいました。

以前は夫と大喧嘩になった時、夫も私も悲しくなって、二人で泣いてしまう事がありました。

でも、夫は発達障害と診断されてから、喧嘩しても泣かなくなりました。

喧嘩に限らず、診断確定してから、悲しくて夫が泣いたという記憶が私にはありません。

何故なのか?

 正直いまだに良くわかりません。

ただ、診断確定された事で夫の心の中はどこかおかしくなったのだと、私は徐々に気づいていく事になります。

夫は泣かない代わりに、喧嘩になると怒鳴る事が増えました。

理屈の通らない事をわめく様になりました。

騒音の迷惑も考えずドタバタと暴れる様になりました。

私から見たら、どれも診断確定後に起きた事です。

発達障害と診断される前は、夫はそんな事はしませんでした。

確かに多少、衝動的に行動してしまう事はありましたが、以前は私が指摘すれば直ぐにハッとなって謝ってくれました。

基本的に穏やかで、話せばわかる人でしたし、人様に迷惑をかける様な粗暴な振る舞いをそもそも嫌う人でした。

私はそういう人だと夫の事を信頼していたので、

「発達障害」と診断されたショックで夫は苦しんでいるのだ。今まで仲良く過ごしてきた夫を一時の心の病の様な振る舞いだけを理由で見捨てるのは違う。私は本当の夫の良さを知っている。彼の気持ちが落ち着くまで待とう。

と、思いました。

発達障害と診断されてから、夫は『普通』という言葉を毛嫌いする様になりました。

どうやら『普通』ではない自分を馬鹿にされている気持ちになるようでした。

私は『普通』という言葉を極力使わない様にしました。

例えば、

「普通はそういうやり方はしないよ」

と言う代わりに、

「私はそういうやり方はしないよ」

と言ってみたり。

この時に、大概の人が口にする『普通なら』という言葉は、『私なら』や『理想としては』に置き換え可能な危うい言葉なのだと気づかされました。

なんて変な言葉なんでしょう。『普通』って!

色々私なりに考えて行動してみましたが、夫は私に嘘をついたり、私との大切な約束を破ったり、という事までし始めました。

二人で楽しく出掛けたり、優しく接してくれる事ももちろんありましたが、私が怒っても泣いても冷静に話しても、嫌だと言っている私の気持ちを夫は踏みにじる様な行動を時々する様になったのです。

今考えれば、子供がする様ないわゆる『試し行動』だったのかもしれません。

『障害者』である自分から、妻が離れていってしまうのではないかという不安から、かえって相手が離れていってもおかしくない、悪い状況に夫は自らを追い込んでいっている様でした。

「そんなに夫はショックだったのか…」

そう夫を心配する気持ちとともに、

「自分の事を『障害者』だから、とあきらめている人を助けるのは無理だな。夫がどこかで踏ん張って気持ちを切り替えてくれないと、このままだと私が壊れるな」

と私も思い始めます。

やはりそういう夫の態度にイライラして怒鳴る事が、私自身増えました。

不眠症状が出たり、過食ぎみになったり、逆に食欲不振になったり、身体にも変調が出始めました。

夫はスマホ依存性の様な状況にもなっていました。

なんとかしようと思い、スマホを絶対触らない時間を夜の二時間だけ作ろう。その時間に家事をしたりお風呂に入ったり、二人でドラマを見たりしよう、と決めたりもしました。

けれども、努力の甲斐もむなしく、ある大切な約束を破られている事に気づいた時、もう限界だ。離婚しよう。と私は強く思ってしまったのです。

しかし、諦めが悪かった私は、少し考えました。

夫婦関係がどん底になっていた時は、夫婦二人とも無職で、まだ職探し中でした。

そういう不安定な状況ではどうしたって夫婦ともに暗い考えになりがちです。

夫婦二人ともが無事に仕事を見つけて、お互いに一人で生きていける様な生活費を稼げる環境が整って、仕事をする事で自信を取り戻して、それでもなお夫の精神が安定せず、夫婦間での振る舞いがおかしければ、その時は我慢せずに離婚しようと考えました。

離婚は大きな決断です。出来るだけ環境を整えて、冷静に判断をしたいと思いました。

それから時間がたち、二人とも仕事が決まり働き始め、夫は少し本来の夫の良さを取り戻し始めました。

けれど夫は、また私との大切な約束を破ってしまいました。

「次、約束を破ったら離婚しますね。その時は覚悟を決めて、約束を破ったあなたが家を出ていってくださいね」

と事前に伝えてあったほど、私にとってはとてもとても大切な約束でした。

何とは書きませんが、守れない様な無理難題ではないです。特性がゆえにうっかり忘れてた、なんてたぐいの話でもありません。夫も「約束は守るよ」と同意していた事でした。

たまにチラリと見える夫のスマホ画面からは、相変わらずネットで発達障害の不幸話を読んでいる様子も見えました。

ああ、自ら幸せになる事を諦めて、むしろ不幸になろうと努力するような人とは、障害あるなし関係なくもうやっていけない。私との約束さえ破らずに、笑顔で楽しく過ごしてくれていたら、貧乏でもなんでも、それで私は良かったのに。もう本当に駄目だ。

そして、感情を爆発させた私は、夫を家から追い出し、離婚届けを書いてもらうところまで一気に進む事になります。

離婚届けを書いてもらう前後は、夫に約束を破られたショックでほとんど食事がとれなくなり、数日の間に数キロ痩せてしまいました。

お陰様で、その時の不摂生が祟り、食欲が戻ってからめっちゃ太りましたけれどね!

今はその負の遺産をなんとかしようと、夫と一緒に筋トレに励んでいるところです。

今思えば、夫が『障害者』とわかって苦しんでいる時、もっと強くはっきりと

「あなたの事を変わらず愛している!」

と怒鳴っておけば良かったと思います。

実際に、色々あって別居から同居に戻してもう一度やり直そうとしていた時期に、喧嘩になり夫が「うるさい!」と怒鳴ってきたのでムカついて、

「お前の事をどうでも良い人間だと思っていたらこんなに色々言わないんだよ! 大切な人と楽しく生きていきたいから、一生懸命話しているんだよ! 愛情がなかったら、疲れるだけだし、わざわざこんなに言い返さないよ! 愛しているから、仲良くしたいから言ってるの! うるさいじゃなくて、お前の事を愛している人間の話はちゃんと聞け!」

と(切れていたので口が悪いですが、ほぼこのまま)、言ってから、なんだか夫が精神的に安定して、怒鳴ったりする事が減ったんですよね。

思い返してみれば、その前にも、夫が喧嘩で暴れて音が響く事があったので、

「近所の人から苦情がきたら、ここに二人で暮らせなくなるよ! あなたは二人で暮らしていたくないの!? 私は二人でここに暮らしていたいと思っているよ! 二人で暮らしていたいなら暴れるのはやめて!」

と怒鳴ったら暴れる事がなくなったりという事もあったので、「愛している(要約)」「あなたと一緒にいたい(要約)」ともっと前に怒鳴っておけば良かったのかな、と思ったのです。(怒鳴らずに、静かに伝えて伝わるならその方が良いと思います(・・;))

当事者の方も周りの方も、障害を受け入れる事は大変な事だと思います。

でも、どんな障害をお持ちの方でも、成功者になる人がいます。

飛び抜けた功績が残せなくても、幸せになる事は出来ます。

自分自身で悪いレッテル貼りをする事なく、ちょっとでも良い方向に転がれる様に、自分が好ましいと思えるものは手放さずに大事にして欲しいと、心から思います。

夫婦仲が上手くいかなくなった時の話を書いておいてなんですが、診断されたショックから立ち直りたかったり、

幸せになりたいなら、

失敗例より、成功例に目を向けましょう!


※2022年10月4日、部分的に修正を行いました。

夫いわく、取り分は8(私)対2(夫)という事なので、もしも夫の事を話題にしたnoteでサポートしてくださった場合は、夫にもきちんと分けます。「分け前はまだですか! 先生!」と笑顔で言われる今日この頃です。