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ボクが「『庵治石』の”お墓さん”には温度がある。」と感じている理由。

ボクがひとっさんに弟子入りを懇願して石屋になってまもなく、「庵治石」に関わるようになってすぐに不思議なくらいスーッと入ってきた感覚が「『庵治石』の”お墓さん”には温度がある。」ということ。石屋になって5年経った今、この感覚は確信に変わっています。

『庵治石』には温度…って、どういうこと?

この「温度がある。」というのは、実際の温度のことではありません。初めは、感覚で感じていて、何かうまく言葉にできなかったのですが、不思議な『温かさ』がある…という意味です。

おそらく、これを読んでくださっている方の多くが、”お墓”の出来上がったものはイメージできても、それがどんな風に出来上がっていくのか…ということを知らないと思います。ボクも石屋になるまでは知らなかったので、どんな風に作られているかなんて、全くイメージすることさえできませんでした。

でも、石屋になってから、大丁場で採掘しているところや、切削機で挽いているところ、形をつくっているところ、磨いているところ…などを見せてもらうようになりました。当たり前なんですが、大きな原石を山から採って、少しずつ挽いて、形を作って、磨いて…作っていくのですが、「とにかく時間がかかる!」ってことに驚きました。

そして、その1つひとつの工程の職人さんが、それぞれこだわりを持って、とことん丁寧に仕事をされていることを知りました。普段話していると、ふざけた感じで楽しい職人さんなんですが、一旦仕事に向かうと表情が一変。長年の経験に裏打ちされた技術で、徹底してこだわって仕事しておられます。実際に職人さんとたくさん話をしているうちに、1つひとつの職人さんの仕事で、作られている石に心が入っていってる…ってことを感じるようになりました。

思いを込めて、しっかりと心の入った「お墓さん」を作る。

ボクが最も感銘を受けたのが、うちが扱っている庵治石細目を採掘している大進石材の親方のヒサヨシさんの考え方。庵治石は、まだまだ何百年も採れるだけの埋蔵量があると言われているのですが、ヒサヨシさんは「これからもずっと『庵治石』を使っていけるように…」と、できるだけ無駄なく石を採るということを大切にされています。

そして、山への感謝の気持ちを大切にしておられ、山の神様にお祈りすることについても、とてもとても大切にされています。ヒサヨシさんはいつも「自然からいただいている石で、手を合わせていただくものを作らせていただいている。」という話をしてくださいます。ことあるごとに話をさせていただく、ヒサヨシさんの考えは今、ボクの中心にあります。

こんな風に、庵治産地では、山で石を採るところから出来上がるまで、1つの小さな地域で、心ある素敵な職人さんの手で、丁寧に時間をかけて”お墓”が作られています。「いいものを作りたい…」というたくさんの職人さんの思いだったり、心を入れて仕事されている時間だったりが、出来上がった”お墓”の中に込められていることを確信しています。

このことを知ってから、石屋になる前には当たり前に思っていた”お墓”であったり、”製品”という言い方に違和感を感じるようになりました。ここ庵治産地で職人さんと一緒に作っているのは、そんな無機質なものではない…と感じたからです。そんなことを地元の方と話をしていると、庵治産地のあたりでは”お墓”のことを「お墓さん」と呼んでいるということを知りました。それ以来、ボクは出会った方に「庵治産地で『お墓さん』を作っています。」と話すようになりました。

石屋になる前には出来上がった製品として見ていた”お墓”ですが、ボクらが作っているのは、出来上がるまでのプロセスの中で、たくさんの素敵な職人さんの思いが込められている温かな「お墓さん」です。ボクはこれからもしっかり修行をして、もっともっと気持ちを込めて、その思いがにじみ出るくらいの温かい「お墓さん」が作れるようにがんばりたいと思っています。

よかったら庵治産地に遊びにきてくださいね。「『庵治石』の”お墓さん”には温度がある。」ってこと、庵治産地の空気を感じていただければかっていただけると思います。お待ちしております。

庵治石細目「松原等石材店」 3代目・森重裕二



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