しゃにむに未完ガール

 昼前に目を覚まして、カーテンを開ける。顔を洗ったらキッチンでカップ麺にお湯を注ぐ。麺はかためが好きだから二分半、体を伸ばしながら待つ。がちゃり。パートからいつもより早く帰ってきたママが私の目を見据える。
「将来のこと、ちゃんと考えているの」
ただいまより先にそれを言うのか。
「考えてるよ」
ベッドに散らばっている漫画と小説。机の上で続きの文字が打たれるのを待つパソコン。スクリーンに映る洋画とセリフを書き込んだノートブック。
やりたいこともやれることも、たくさんあるんだよ、私。
「もう大人なんだから、いつまでも遊んでいないでよ」
 最近まで私のことを子供扱いしていたくせに。その狡さに思わず、ふっと声が出てしまう。
「ちゃんと聞いてるの?」
「Copy that」
 どうせママに言ってもわかんないだろうから、今は反抗しないで受け流す。今日の行動計画をゆるりと頭の中で立てながら、伸びてしまったカップ麺をずるずると啜った。
 

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