きみの温度を憶えている
「夜が来なければいいのに」
心の底からそう願っている訳ではない。夜空は綺麗だと思うし、花火大会やお祭りといった、夜にこそ映える行事も好きだ。それでも、わたしは夜が苦手だった。
白い光は眩しすぎてそこまで好きになれない。日が出ているうちは電気をつけずにカーテンを開けて窓から射す光を頼りに、夕方からは電気をつけ始め、ベッドに入る頃には部屋の電気を消して暗くする。そのくせ暗闇と無音は怖いので、オレンジ色の常夜灯とテレビをつけないと眠れない。以前は部屋が暗い方が落ち着くと思っていたのに、愛犬のさちが病に倒れてから、わたしは夜に一人でベッドに入っても眠れなくなってしまった。「死んだらどうなるのか」「来世なんてあるのか」「さちを失いたくない」「明日死んでしまうかもしれない」「永遠なんてない」
同じようなことをずうっと考えてしまい、気分が悪くなっていく。眠ろうとして目を閉じれば目眩がするし、自分の鼓動が大きく響いて聞こえてくる。
夜は、わたしという存在のかたちを歪めていく。わたしの身体とベッドの境目が曖昧になって、地層深くまで落下するような感覚に襲われる。精神科の先生によれば、わたしのこういった「症状」は強迫性障害に分類されるらしい。自分でもばかばかしいと分かっていながら、そのことが頭から離れない。わたしの意志に反して勝手に頭に浮かんで払いのけることのできないない思考に苦しめられながらも、それと同時に、不安定な自分の状態に名前があることに少しだけ安堵した。
安定剤と睡眠導入剤をいつものように飲んでからベッドに入った。薄いブランケットをかぶり天井をぼうっと眺めて、わたしは今日もさちのことを思い浮かべていた。
さちはクリーム色のふわふわとした毛並みが可愛らしいミニチュアダックスフンドだ。ペットショップで初めてさちを抱いたとき、わたしの左手首をペロリと舐めてずっと尻尾を振っていたのを覚えている。家に連れて帰ってはじめて箱から出してやると、廊下を気持ちよさそうに走った。大人しい子だと思っていたので少し驚いた。構って欲しいときと、お腹が空いたときにしか吠えることのなかったさちは、誰に対しても愛想が良かった。きっと、人のことが好きな犬だったのだろう。散歩中に出会う人、わたしたちの家に訪れる人、たくさんの人から可愛がられていた。
さちを亡くして五ヶ月が経つころ、わたしたち家族は新しく、毛が黒と白の、顔に眉毛のような白い模様のあるメメを迎えた。メメはチワワとミニチュアダックスのハーフ犬だ。ペットショップで見たメメは、とても大人しそうな犬だった。メメはさちと同じように、はじめてペットショップで抱いたときにわたしの左手首を舐めた。ばかばかしく思えるかもしれないけれど、このとき、この子はもしかするとさちの生まれ変わりなんじゃないかとさえ思った。
「今日はメメと一緒に寝てみたい」
「そう、おとなしく眠ってくれるといいけど」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
ゲージの中で、おすわりの姿勢のままわたしを見つめるメメを抱きかかえ、わたしの部屋へ連れて行く。朝の散歩が終わったあと、リードも一緒にしまったお散歩バッグを元の場所に戻さず部屋に持ってきていた。尻尾を振りながらぐるぐるとわたしの部屋中を周っているメメを見ていると、ふっ、と笑みがこぼれた。有り余る元気さにわたしがついていけないこともあるけれど、身の周りにあるもの全てが自分のおもちゃであるかのように振る舞うメメの自由なところが好きだ。メメと比べると、さちは元気はあるけれど女の子らしい、落ち着いた雰囲気の子だった。
「メメ、この後また散歩に行くよ」
メメはキョトンとした顔でわたしを見ていた。
午前二時五十分。念の為設定しておいたアラームが鳴る前に止めた。部屋で動き回るメメと遊んだり、疲れて仰向けで寝ているメメを撫でたりしながら時間を潰していた。
わたしが立ち上がると、メメは目を覚ました。髪をとかして、乾燥した唇にリップクリームを塗る。薄いグレーのパーカーを羽織って、ポケットには家の鍵がついたパスケースとスマホをしまう。
「おはようメメ、今からふたりで外に出るよ」
メメにハーネスをつけて抱え上げる。音を立てないように気をつけながら玄関に向かい、いつも履いているサンダルを履いて家の鍵を開ける。ドアをそうっと開けて、できる限り優しく閉めた。
ガチャリ、鍵をかける。今の音で物音に敏感なお母さんが目を覚ましませんように。
とりあえず、家の外に出ることができたのでわたしの勝ちだ。誰と争っているわけでもないのだけれど。
真夜中の澄んだ空気を吸い込む。顔を上げると大きくてまるい月が見えた。始発電車よりも前の、夜以上朝未満の真夜中。そんな時間に家を出たのは初めてだった。こんな時間に黙って外に出ていることが両親に知られたら、確実に叱られるだろう。
二十歳になっても、わたしは親が望むような子供のふりを続けている。友達とオール、どころか日付が変わるまで遊び歩くことも、そもそも大人数の集まりにも参加したことがないし、外出するときはどこに誰といるのか逐一連絡しなければならなかった。人間関係で悩むことがあっても、そういったことを気軽に話せる空気が私と両親の間にはなかった。両親の機嫌を伺って本当のことを話せないことも、余計にわたしを息苦しくさせた。
それらに嫌気がさしたから、眠れないまま朝を迎える夜の時間を無駄にしたくなかったから、今日、わたしは行動を起こした。わたしの意思や行動は、少し遅めの反抗期と捉えられるのだろうか。
抱えられたままわたしの顔を見上げているメメに、「月がきれいだね」とつぶやく。まだ六ヶ月、お散歩に慣れ始めたばかりのこの子を夜中に連れ出すのは動物虐待になっちゃうかな、なんて考えながら、ふらふらと歩く。行きたい場所なんか、特になかった。ただわたしにとって禁忌に近いことをしてみたかっただけ。せめて日が昇る頃までは家に帰りたくない。暗い道が怖いのだろうか、おとなしく抱かれているメメの長い爪がわたしの腕にきりり、と刺さる。少しだけ、痒さに似た痛みを感じる。
「帰ったら叱られちゃうかなあ」
メメに話しかける。わたしの問いかけの意味もわからないだろうこの子は嬉しそうに尻尾を振っている。
八月の半ば。太陽が昇ればジリジリと汗が体のうちから染み出すみたいに暑いのに、真夜中に吹く風はさらさらと肌を撫でる。
「公園にでも行こうか」
メメは幼い犬が受けなくてはならない予防接種が終わってから、散歩に出られるようになって日が浅い。家の周りの景色しか知らないメメにとって、公園ははじめての場所だ。
サンダルがペタペタと道路と擦れる音が聞こえる。しんしん、と虫の声を聞きながら歩く。この辺はアパートの灯りが夜も眩しくて、暗い夜の怖さが薄れていく。
昔通っていた小学校への通学路を歩く。メメは通ったことのない道をじっと見つめながら、わたしの腕に顔を乗せている。
五分ほど懐かしい道を歩いていくと、ブランコや滑り台、砂場がある八代公園に着いた。砂場の横にある、公園内にあるものの中で一番背の高い照明の明かりが優しく広がっている。
抱えていたメメを地面に下ろす。メメは尻尾をピンと張り、地面にぴしっと四本の足をくっつけて、はじめて来た場所を注意深く眺めていた。自分にとって危険そうなものがないか確認して、害のない場所だとわかると尻尾を緩めて地面にぺたりと垂らした。伏せの姿勢でわたしの顔を見つめてくる。こっそりクッキーを持ってきていたけれど、まだあげないでおく。
一人と一匹に随分と広く感じる公園内を歩く。ブランコから砂場まで行く途中にある階段をメメと一緒に上り下りする。メメは尻尾をブンブンと振って楽しそうにしている。
わたしが小学生の頃、さちともこの公園を訪れて、放課後に遊んでいた同級生がさちのことをよく可愛がってくれたのを思い出した。
わたしがメメを散歩に連れ出す場所には大抵さちとの思い出がある。メメのことをさちと同じかそれ以上に可愛がったりしつけをしたりして一緒に暮らしていても、同時にさちのことを思い出してしまう。ふたりのことを比べる必要なんてないのに、メメのことを知るたびに、さちはああだったなあ、と思わずにはいられない。
階段を上りきって、砂場の周りをふたりで歩く。メメは砂場を囲う網に興味しんしんだ。網目に鼻をくっつけて砂の匂いを嗅ごうとしている様子が可愛らしかったのでスマホを出して動画を撮る。ストーリー機能を使い、「夜中の公園」と文字を入れて、親しい友達にしか見れないよう設定して動画を投稿した。
「行くよ」
リードを軽く引いて、意識をこちらに向ける。上ってきた階段と反対の方向にある、手すりのついた太く緩やかな坂道の方へ歩く。平坦な道ばかり歩いていたメメにとって今日の道は新鮮だろう。長い胴に対して短い四本の足をてとてと素早く動かしながら坂を下りていく。わたしが少し早く歩いてみると、メメもそれに合わせて走り出した。
坂を駆け上がったり下ったりを繰り返して、わたしもメメも息が上がってきたので休憩することにした。坂をおりて、公園の真ん中にある太い木が植えられたレンガの花壇に腰掛ける。お散歩バッグから犬用の給水ペットボトルを取り出し、メメの口元に飲み口を寄せると、ぺちゃぺちゃと音を立てながら勢いよく水を飲んだ。
わたしも自分用のお茶が入った小さいペットボトルを取り出して喉を潤す。
目線の先にあるブランコを見る。公園の中でわたしが一番好きな遊具はブランコだった。
「あっち行こうか」
二つのペットボトルをバッグにしまってからブランコの方へ歩き出す。ブランコの下には緑色の、地面より少し柔らかいマットのようなものがある。メメはにおいを嗅ぎながらわたしの後を追う。ブランコの赤い座面のでこぼこを見下ろす。鎖の錆臭さが懐かしい。数年ぶりにブランコに座ると、きい、と金属の擦れる音が鳴った。
「ブランコ、怖い?」
わたしを見上げるメメを抱き上げた。バッグを持つ左手で鎖を握り、膝の上に乗せたメメを右手で抱きとめる。
「こうやって遊ぶの」
四歩くらい後ろに下がって、地面から足を離す。ブランコの軋む音とともに体が前後に揺れる。体感したことのない浮遊感にメメは驚いてわたしの膝の上で固まった。
「ごめんごめん、怖かったね」
足を地面に擦ってブランコを止める。揺れるのをやめてブランコから左手を離し、メメの頭を優しく撫でていると、公園の外の道路に人影が見えた。
夜中に出歩いているのが世界でわたしとメメしかいないなんて思ってはいなかったが、少しだけ緊張した。人影が徐々にこちらに向かってくる。変質者の可能性もある。ああ、やっぱり真夜中に一人(と一匹)で出歩くなんてやめておけばよかった。どうしよう。などと頭がぐちゃぐちゃになりかけていると、
「早川」
低く、少し掠れた声で名字を呼ばれた。聞き覚えのある声だった。
「……神田くん?」
わたしはブランコに座ったまま、彼の名前を呼ぶ。人影の正体は、白いシャツに長い脚が映える黒いパンツを履いている、中学の頃の同級生だった。顔つきはあの頃のまま、身体が締まった大人の男性、というようないでたちだった。
「久しぶりだね」
まさか、知り合いに会うなんて思っていなくて、当たり障りのない言葉を選んだ。
「おう。って、その前にこんな時間に何してんだよ」
眉をひそめながら問いかけてくる。
「……散歩?」
犬を連れているし、真夜中に家出のようなことをしているなんて同級生に言うのはどこか恥かしくて言えなかった。
「こんな時間に?」
「そういう気分だったんだよ」
神田くんは視線をわたしの膝の上に落として、メメのことをみた。
「犬、可愛いな。さち、だったっけ。あの子も可愛かったけど」
わたしは何かの授業でさちのことをクラスのみんなに紹介したことがあった。よく遊ぶ子の中には実際にさちと触れ合ったことのある人もいたけれど、さちと会ったことがないはずの神田くんがさちを覚えていたことに驚く。
「ありがとう。この子、メメっていうの」
「めめ、触ってもいいか?」
「うん」
神田くんはメメに近寄ってしゃがんだ。メメは、家では暴れん坊なのに、外に出るといつも大人しく、内弁慶なところがある。
神田くんの大きな手が、メメの頭を優しく撫でた。
「はは、ふわっふわだな」
神田くんが笑うと、縮こまっていたメメの緊張がほどけるのがわかった。わたしの上半身と腕の隙間から尻尾を出して元気よく上下に振った。
「神田くんはなんでこんな時間に出歩いてたの?」
「俺はバイト終わって家に帰るとこだった」
「ふうん」
「で、お前はなんでこんな時間に犬の散歩してんだ」
「気分って言ったでしょ」
少しだけ語気が強くなってしまった。
「今回はたまたま声かけたのが知り合いの俺だったからよかったけど、この辺不審者が全くでないってわけでもねえから気をつけろ」
立ち上がってわたしのことを見下ろしながら神田くんはそう言って、わたしの隣のブランコに座る。わたしはメメを地面に下ろした。
「何時になったら帰るつもりだ?」
「朝が来る前」
「あと二時間くらいか。俺も付き合ってやるよ」
「別に頼んでないんだけど」
「はは、確かに。まあ、久しぶりに会ったんだしちょっと話そうぜ」
それから神田くんは、中学時代の思い出話や近況を話し始めた。同じクラスの時、一緒の委員会だったことがあるくらいで、そこまでよく話す間柄ではなかったけれど、彼はいつも温かい空気を纏っていたことを覚えている。話し上手で、所々で面白いことを言ってくるので楽しくなってしまう。わたしも少しずつ自分のことを話した。
大学のこと、最近誕生日を迎えたこと、親が過保護だということ、さちを亡くしたこと、夜が怖いこと。笑われるかもしれない、とは思わなかった。神田くんはメメの頭を撫でたり、時には「抱っこしてもいいか?」と言ったりしつつ、わたしの話を聞いてくれた。適当に返事をしないところから、慎重に言葉を選んでくれているのが伝わる。
「べつに、夜が怖くてもいいし、夜を好きにならなくてもいいんだよ。朝が終わって昼が過ぎれば夜になる。死ぬまで毎日それを繰り返す。ただそれだけ」
わたしが話し終わると、神田くんはそう言った。
「それだけのことって、自分でもわかってるんだ。それでも考えてしまうんだよ」
「必ず訪れる最期のことを毎日考えて時間を無駄にするよりも、今日より明日を楽しくするために何ができるかを考えた方がきっと幸せになれるよ。今はまだ難しいかもしれないけど」
神田くんの言っていることは正しいのだろう。達観しているなあと思った。
「今はさ、めめもいるし、前より不安な時間は減ったんじゃないか?」
「それは、そうだね」
「なら、少しずつでもきっとよくなるよ。そのうち」
メメを撫でながら、神田くんは言葉を続けた。メメは神田くんの膝の上で眠ってしまったみたいだ。
「いろいろ悩んでることあると思うけどさ、早川はいろんなことを大事にしすぎてるんだと俺は思った」
「大事にしすぎ?」
「さちのことが大切だから毎日思い出して、悲しくなって、親のことが大切だから反抗しきれなくて、こうやって出歩いている今もきっとさっぱり気は晴れてないだろ」
そうなのかもしれない。
「さちとめめや親のことと同じくらい、いや、それ以上に自分のこと大切にしていこうぜ。これからは」
「どうやって?」
「親の言いつけ破ってみるとか、親に言えてないけどやってみたいと思ってることをやってみるとか。自分で考えて行動を起こすっていうのが大事なんだろ、きっと」
「俺たちもせっかく大人になったんだからさ」
神田くんの話を聞いていると、彼はなんて眩しい人なんだろうと思った。わたしを無意識に縛っていたものを解く方法を、たくさん知っている。わたしも、君みたいだったら、きっと今より生きやすかったのだろうな。わたしにとって新鮮な意見を聞くと、少しだけ心が軽くなったような気がした。
気がつくと青い空に赤い光を纏う雲が浮かんでいた。むらさきじみた空を眺める。公園の時計を見ると、四時半を過ぎていた。
「そろそろ朝だな」
「うん」
「今日、こっそり家を出てきてよかった」
誰かとふたりで朝を迎えるのは初めてだった。
神田くんと話せてよかった。気恥ずかしくて声には出せないけれど。
「そうか」
わたしは、今までやり過ごしてきた夜を振り返った。ベッドの上でいつ寝落ちしてもいいように何度も観た映画を再生しながら結局寝付けないまま朝のニュース番組が始まった日、眠気に耐えきれなくなり、気づいたら朝になっていた日。ぜんぶを肯定したくなった。
一度でいいから、親の目を盗んで、叱られるようなことをしてみたかった。夜中にこっそりと家を抜け出して、メメと一緒に寝静まった真夜中の街を歩いて、馴染み深い公園のブランコに揺られながら、昔の同級生と一緒に夜が明ける瞬間を目の当たりにしただけでこんなにも心が満たされるなんて。
「そろそろ帰ろうかな」
わたしが帰りたいと言わない限り、本当に神田くんも帰らないような気がした。
「家まで送るよ」
神田くんは膝の上で眠っていたメメの背中を優しくとんとんと叩き、メメが目を覚ましてから地面に下ろし、立ち上がった。
もう明るくなってきたのに、神田くんはわたしとメメが家にはいるまでを見届けてくれた。
「ありがとう」
「おう。またな」
優しい笑顔に見守られながら、メメを抱えゆっくりとドアを開けて、静かにドアを閉めて鍵をかけた。中に入るとさっと自分の部屋に戻り、ベッドにメメを乗せて、わたしも寝転がった。
くたくたに疲れきってベッドに溶けるようにくっついている、胴が長く黒い毛玉を抱く。胸からおなかの辺りの白いふさふさした毛の感触。ちいさな心臓がわたしの鼓動よりさらに小刻みにとくとく、と音を立てている。わたしの手のひらいっぱいにぽかぽかとした熱が伝わる。
さちのことを思い浮かべる。さちとメメ。似ているようで全く違う、ふたりの愛おしい、いのちの温度を感じていた。
朝日がてっぺんに登る前に、カーテンを開ける。窓から見える空は、いっとう眩しかった。外に出ていることがバレたらまず、親に叱られるだろう。それでも構わなかった。ゆっくりと目を閉じる。きっと、こういう満足感を味わうためにわたしは生きているのかもしれない。連続的な日常に、時々訪れる変化の兆し。未体験のこと、未知のものに出会うために、当たり前の毎日があるのかも。眠気のせいで自分でもよくわからない曖昧な思考をしてしまう。なんだか今日は久しぶりに薬を飲まなくても気持ちよく眠れそうだ。
おはようと言うべき時間におやすみと呟こうとしてやめる。
「わたしも、もう子供じゃないのよ」
とろけた声を出して、そのまま微睡んだ。
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