曲がる信号と曲がらない私【旅する日本語】【碧空】

台風は過ぎ去っていった。

幸いというべきなのか。この地域の被害は、ニュースで流れるそれに比べれば大したことがないようだ。それでも遊覧の道すがら、街路樹が斜めになっていたり、カーブミラーが折れ曲がっていたり。そんな光景がいくつも目に飛び込んでくる。

数多の車を取り仕切っている信号も、台風の影響を受けたようで、二つ並んで僅かに傾いている。まるで「こんな雨風の中まで仕事させやがって」と文句を垂れているみたいに。

旅先の解放感とは無関係だろうけど、本性ここに現れたり。

彼の、見てはいけない部分を覗いてしまったようで、不謹慎ながらちょっとドキドキする。でも、私が帰路に就くころには、いつのまにか機嫌を直してしまって、いつものように、しゃんと背筋を張った勤勉な彼に戻ってしまうんでしょう。私の見ていないその間に。

旅先の記念に、彼のそんな一面を焼き付けておこう。晴れ上がる青い空と、ひねくれた彼と。