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美食と美酒はすべてを溶かす

「この魚、うまいな」思わず口をついて出た。

やってきた旅館は、海辺で海鮮自慢。
実は、今日の今日までそんな情報も知らなかった。旅行をしたいと言い出したのも妻なら、段取りをしたのも妻。もとより特別旅行が好きではないとはいえ、我ながら少し負い目を感じていた。

「そうでしょ!色々探したんだからね」
「いやほんとうまいよこれ、ここ選んで正解だね」

着くまでは、正直旅行自体が億劫で、なんとなく仕事からも頭が離れなくてモヤモヤしていた。でも、この料理のおいしさによってすべてが吹き飛んだ。

「選んでくれてありがとう。どうぞ一杯お飲みください」
「うむ、苦しゅうない」

2人してちょっとおどけながら、妻のおちょこに日本酒を注ぐ。
もはや仕事のことなどみじんも気にならない。来てみれば料理はうまいし、大浴場は気持ちがいい。旅行とはいいものだ。

そうだ。今度は私が旅行の準備をして、妻の労をねぎらってやろう。
お酒のおいしいところにしよう。

「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)