見出し画像

予定外の引越しと菜の花のきなこあえ

もう不動産屋さんと仲良くなっちゃった?
去年の年末、突然言われた上司から突然のひとこと。

若林さんは次は九州じゃない?東海、山陰と経験してるわけだし。。。
私は飲み会で異動の話が出るたびにほぼ毎回おなじことを言われ続けていた。

瀬戸内のまちに来て4年。
全国転勤のメーカーに勤める私は、
嫌いな上司と3年で別れられるのと交換に
素敵な上司とも、街とも3年程度で離れなければならない。

20歳を過ぎてから、長くても3年しか同じ街に住んでこなかった私。
コロナ禍もあって長くなりこの街は最長記録となった。いや違う。
この街ではなく、今はもうあの街。だ。

内示とは別になんやかんや、ある時期になったら漏れたか勝手に湧いて出たかで
当事者の耳に入る人事情報。半年前、自称事情通の上司から
飲み会で少しニヤつきながら大分行きを告げられていた私。

はい。わかりました。
ああついに来たんだなと思った。落ち込んだ時も楽しい時も私を受け入れてくれた穏やかな気候と瀬戸内海。それらにあと半年で離れ離れ。

それから夜な夜な不動産アプリの地図に指で黄緑色の丸を描いては物件を漁り、
中古車のサイトで九州に行ったら乗ってみたい車を漁った。
もちろん、美味しいご飯が食べられそうなお店も。

少し広いワンルームに住み、そこそこに仕事を頑張って、静かに暮らす。
人には期待せず、自分のことは自分でできるように生きる。
27を過ぎたあたりから私が大切にしていることだ。そうすることでどんな街でも不便さや悲しさを感じずに済むと信じてきた。
もちろん、少しの寂しさは感じるけれど。。。

異動まで残り2ヶ月。大きなミスなく仕事を終えて豊後水道をわたるはずだった。
そして言われた冒頭のひとこと。

の:いえ、まだですけど。。。
上:よかった!予定外で、どうやら異動先変わりそうだよ。
  あのね、歴史とか興味ある?

予定外。仕事ではよくあるけれど、異動先までもそれだとやっぱり少し困る。
歴史ある街。と一言で言われてもどこだよ。と正直思ったけど、
ふたを開けるとそこは本当に歴史のある街だった。

瀬戸内から新幹線で1時間とちょっと。

山陽新幹線から東海道新幹線に勝手に置き換わって20分。
私の次の住処は京都だった。
引っ越しを終え、散歩に出かけた。
引っ越しといえばそばだろう。

商店街をそば店を目指して歩いていると、スーパーがあった。
引っ越してすぐ入るスーパー。その街が一気にわかる気がして私は好きだ。
ジャガイモに白菜、にんじんと冬においしい食材が並ぶ。
さすが、旬を大切にする街やさかい。。
そう思っていると黄緑色の束が目に留まった。
薄い紙に包まった菜の花。100円。
これは安い、予定外の菜の花に私は思わず手に取った。
それならばとついでにきな粉も。

家に帰り片手鍋に湯を沸かす。塩を入れて、菜の花を茹でる。

ボウルに砂糖大さじ1、醤油大さじ1。きな粉大さじ3。
茹だった菜の花を軽く刻んでボウルに入れ、さっと和える。

からしも美味しいけど、甘辛くてきな粉の優しい味と少しだけほろ苦い菜の花。
私はこの食べ方が大好きだ。

予定外の京都で出会った菜の花のきなこ和え。
この街がもう少し好きになってきた。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?