見出し画像

帰国旅行を控えて

唐突だが、私はここ数ヶ月スイスなる国で暮らしている。俗に言う海外赴任なるやつである。

ありがたいことに会社から「故郷に帰れる券」をいただけるので、いくばくかの休みを取って日本に帰ってみることにした。

所詮数ヶ月ごとき海外で暮らしただけなので、正味のところ「日本に帰れるなあ」感はあまりなく、どちらかというと「だらけるにしてもお買い物するにしても為替影響的に東京にいた方が得なのでは?」と散財ありきでどこでお金を使うかという観点での帰国である。

がしかし、いざ予定を立ててみると、意外と「これ恋しくね?」と頭をよぎるものが多い。主に食べ物。現在の食生活に特段不満があるわけではないが、いざ日本に行くとなると話は変わる。
寿司、そば、焼肉が先陣を切って頭をよぎり、次陣にはラーメン、牛丼、洋食屋、喫茶店が控える。あの店この店とグダグダ考えると明らかに回りきれない数の飲食店が脳内でリスティングされる。

持病の定期観察等のマスト予定を埋めたのち、なんとなく各ジャンルで予約可能なお店を探して予約をしてみると、ある程度自身の予定が埋まってきたところでふと気づく。「どの予約も人数1人だわ」と。

この事実についてなんら寂しいなどと感じることはない。家族か友人、はたまた同僚と行かない限りは予約人数は1人になる。旅程の関係で当該の予約は全て平日なので、仕事が入っているであろう家族や友人には声すらかけていない。「帰るからメシ行こうぜ」とすら言っていない。そう、誘ってすらいないのである。

元来、人と食事をするのは好きな方である。メニューを見て共に悩み、数品を共に楽しみながら談笑などする。食事を口実に古い友人に声をかけることもあるわけで、1人の食事の時間を何よりも大切にするという主義があるわけでもない。食べたいものと行きたい店、付随して近隣でやりたいことを先行して予定を立てたため、他の予定調整が億劫になってしまったのだ。

さて、この帰国旅行が終わった時に私は何を思うのか。だれか誘っておけばと後悔するのか、特段何も思わないのか。はたまた誰かしらかがふとしたことで捕まり、独り身外食旅行ではなくなるのか。
いずれにせよ予約先でおいしいものをたらふく食べようと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?