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ありがとうを循環させる

大人にだって「褒め言葉」が必要だ。

私はとある店舗で接客の仕事をしている。今日もいつも通りの仕事をしていた。顔見知りのお客さんが来て、こんにちはと挨拶してくれたので、私もこんにちはと返した。商品について質問してきたお客さんがいたので、調べて答えた。商品の置いてある場所がわからない、これよりもっといいものはないですか?、これに似た別の商品を探しているんですがどれがいいですか?1つ1つ答えていく。

私が接客で心掛けているのは、できるだけ明るく、できるだけ笑顔で、できるだけ正確に、でも1人1人のお客さんを見ながら声のトーンや、スピードを微妙に調節していくことだ。




そんな中1人のお客さんが来店した。見たことのある顔。以前も接客したことがあるが、名前までは知らない高齢の女性のお客さん。商品をピックアップして会計に進む。たまたま私がレジを打った。高齢の女性は私に言った。


「私こういうお店いくつも行くけど、あなたが一番感じがいいわ。」
「親切で、でもきちっと対応してくれるもの。」
「今日もお店に来た時に、あなたのこといないかなー?って探したのよ!」

とても嬉しくて、びっくりして、私は「ひゃひゃひゃ」と変な声で笑ってしまった。接客の仕事、かれこれ10年近くやっているけれど、ここまで直接褒めてもらえることって意外と少ない。接客の仕事と一言で言っても様々だけど、私の職場で私の体感ではここまでちゃんと褒められるのは1年に1〜2度くらいだろうか。前回こんな感じで褒められたのは、1年くらい前だと思う。弊社スマートフォンアプリのコメントにて、有難いことに名指しで褒められたので、本社経由でついでに上司からも褒められた。こういうのってたとえ顔が見えないアプリ越しでだって、伝える側もすごく勇気や労力がいることなのだと思う。だから前回も、もちろん今回もわざわざ伝えてくれたこと、私なんかのために勇気を出してくれたことが何よりも嬉しかった。


私も1人の客として色々な店で買い物をするけれど、店員さんに対してここまで直接感謝の気持ちを伝えたことがない。なるべく「ありがとうございます」って伝えるようにはしているけども…。私も自分が受け取るだけではなくて、ちゃんと誰かに感謝の気持ちを伝えなくてはいけないなぁ。

友人は以前、家電量販店で店員さんに親切にしてもらって本社に感謝の手紙を書いたって言っていた。

そこまではできないかもしれないけれど、今度素敵な店員さんがいたら、そのお店の会社のサイトでお問い合わせフォームか何かに気持ちを伝えてみようかな。本人にちゃんとそういう声が届くシステムの会社かどうかわからないけど、とりあえず自分にできることからコツコツ始めてみようかな。


こんな時代だからこそ、せっかく手渡してもらった「ありがとう」の気持ちをちゃんと世の中に回していこうと思った、ちょっと特別ないつも通りの平日だった。



***


向いてないと思って始めた接客の仕事、たぶん思っていたよりもに私に向いていたんだと思う。人生やってみないとわからないことだらけだ。やりたい仕事が向いている仕事だと限らない。「やりたい仕事は特にないから、どちらかといえば向いている仕事がしたいなぁ」と後ろ向きに考えていた学生の頃。それでも就職難と言われたあの年、たまたま採用されたこの会社。向いてないと思っていたこの世界に飛び込んで、自分の強みに1つ気付くことができた。

私は今転職活動をしている。こんなふうに私を好きでいてくれるお客さんもいるのに、この仕事を辞めようとするのは勿体無いのだろうか。そんなふうに思うこともある。それでもこういうお客さんとの信頼関係を築いてきた経験や、自分の強みを活かしていける仕事が、次に私がやりたい仕事だと信じている。

また明日から、いつも通りの日々が始まる。この経験を私の励みに、またいつも通りに頑張ろう。



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