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2022年 秋の小冒険② 札幌初日

キャンプのいいとこは自然に早起きができること。たいていは強烈な尿意といっしょに夜明け前には目を覚ます。だから家で寝てたら絶対に見逃す日の出シーンも普通に見ることができる。
PCもネットもテレビも本も無く、LEDランタンの薄暗い光の狭い空間でトランジスタラジオの小さな音だけを友に夜を過ごすわけだから、できることといったらラジオと会話するか、どーでもいいことをどーでもいいように考えるかしか時間の過ごしようが無い。だから焼酎の酔いを睡眠導入剤代わりに大量に導入して早く眠る。
もちろんこれは私の例で、テント内を家並みの環境に整えて夜更かしを苦にしない人もいれば、機器に頼らず夜を過ごす術を習得している達人もいる。暗闇の時間を過ごす術を知らない私は、まだまだキャンプ修行中だと思う。

目覚めると軽く身支度をして内股気味にトイレに急ぐ。勢いよく水分を抜くと、日の出だ。タバコを咥えてしばし日の出鑑賞。防波堤越しのまん丸お陽様も悪くない。

名取トレイルセンター野営場の夜明け

湯を沸かしてインスタントコーヒーとカップ麺の朝食。
テントの中で持っていくものと車に置いてくものを分別する。身に付けてるもの以外で持ってくものはパンツ1,Tシャツ1、タオル1、スマホと財布。持ってくものはごく少量、これならトートバッグひとつで十分だ。
テント内の小テーブル、クッカー、アルコールストーブをパッキングして外へ出す。寝袋と銀マットも畳んで外に出せばテント内は空っぽ。最後にテントを畳んで撤収完了。
あとは駐車場から車を近くまで持ってきて積み込むだけ。ちょっと時間が早すぎるかも。もう2杯はコーヒー飲めたな。なんてことを思いながら駐車場まで歩きポケットに手をいれる。「ん?」あるべきものの感触がない。車のキーがない。こりゃあ大変だ。

ヤバい、マジでヤバイぞ。建ててあったテントの周囲を探したり、トイレまでの道筋を探したり、バッグをひっくり返して底を漁ってみたり、あたふたあたふたパニック状態。
「待て待て待てぃ、一旦座れ。落ちついて考えろ。」と必死に引戻し、昨夜をリプレイする。

呑みながら「キャンプに行っていちばん無くしたら困るものってなんだろ?」なんて考えたよな。車の鍵と結論が出た。いつもズボンのポケットに入れてるけど歩き回ってるうちに落としたら探しようがない。ポケットはやめて置き場所を決めておこう。だったらどこがいい?テント天井のランタンフックにカラビナで掛けておけば落としようがない。そしてランタンと一緒にフックに掛けた。寝袋に入る時にランタンは懐中電灯でもあるからフックから外して手元に移動した。そしてランタンを消して眠った。

「あそこだ!」畳んだテントを広げて捜索。あるべき場所にあるべきものを見つけて一安心。そしてまたテントを畳む。
普段と違ったことをしたもんだから余計な時間を浪費してしまった。十分ゆとりがあったはずの時間も余裕がなくなっていた。急いで車に積み込んで出発。

空港近くの民間駐車場に車を入れ、帰り便の時間を申告して精算。送迎バスで空港まで送ってもらってチェックイン。手荷物検査を通過したのは締め切り10分前。
こんな慌ただしさを避けるための前泊だったはずなのに。不甲斐ない。

仙台から新千歳は1時間ちょっと。ベルト着用サインが消えて水平飛行を15分もすれば、またすぐにベルト着用だ。この短い時間にコーヒーのサービスなんていらない。自販機の缶コーヒーを持てば済むことだし、両膝が前席にぶつかる窮屈さも我慢できる。ANAやJALの快適さよりLCCの料金の安さのほうがずっと魅力がある。

空港のゲートを出たのは10時半。このままホテルに行ってもチェックインも出来ないし、マジスパでゆっくり昼食を済ませてからでも十分すぎる。マジスパに着いても開店一番乗りくらいかも。
それならもう一便遅い便にすればと思うのだが、朝イチの便だから激安価格という理由があるのだ。

そんなに久しぶりではなく2ヶ月半ぶりのマジックスパイス。
迷いなく朝ビールとチキンカレーの虚空。オープン直後の来店で飲むビールは格別に美味い。汗と鼻水の体液を垂れ流しながら完食。すっかり整って仕上げにビールをおかわり。
昼時で行列ができ始めている時間にゆっくりビールは厄介な客と思われたかも。忙しそうなのでマスターにも会わずに店を出てベンチで順番待ちの人達を眺めながら至福の一服。いつも変わらぬルーティンだ。

いつものチキンカレー虚空


札幌にはスープカレーの店がたくさんある。いろんな店を味わってみたい気持ちはあるけど、マジスパ以外は行ったことがない。
初めて食べたスープカレーがマジスパの虚空であり、虚空に満足以上のものを感じてしまったから他の店で冒険はしたくない。滅多に来れない地であるが故に失敗だけは絶対したくない。他を知らなきゃ今がいちばん、那覇の亀かめそばと同じシアワセ理論だ。
マスターとの繋がりがなかったとしてもそれは変わらないと思う。

大通公園で地下鉄を降りてホテルを目指すには、まだちと早すぎる。
シーズンは終わり間近だけど、ここはやっぱりベタ中のベタ、屋台で「トウキビ&じゃがバター」を買ってベンチで時間つぶし。トウキビは焼きと茹でをハーフサイズで売っていたので両方買ったけど、焼き1本のほうが良かったかも。

やっとアパホテルにチェックイン。
4連泊で10900円という破格値だったので、カード決済済みだけどちょっとドキドキだった。ごく普通のシングルルーム。
地下鉄大通駅とすすきの駅からは7-800m、JR札幌駅からは1500mという微妙な立地条件で不人気なのかも知れない。幸いずっと天気も良さそうだし少々長い距離を歩くのも楽しい季節だ、別に不満はない。
露天風呂付きの大浴場へ。部屋のユニットバスよりずっと気持ちいい。チェックイン開始時間が過ぎて間もないので独り占めだった。
部屋の風呂で今日着ていたTシャツとパンツを手洗い。風呂に干して換気扇全開。朝には乾いているはず。小分けにした洗剤と洗濯ばさみは旅の必需品だ。

目覚めたらすっかり夜。ベタに狸小路をぶらついて「士別バーベキュー」という店で夕食。~自社牧場や契約牧場から一頭買い!ジンギスカンの概念を変えるサフォーク羊専門店~と言うふれこみ。
どうせバカ舌だからサフォーク羊と普通の羊の違いもわからんと思うけど、お薦めの「特製タレで仕上げた名物『サフォーク丼』1350円」と生ビールを注文。
とても美味しくいただいたけど、やっぱりサフォーク羊の有り難さはよくわからなかったってのが本音。

サフォーク丼

明日は8:15札幌駅の観光バス乗り場集合、その前に乗車手続きも済ませなければならない。早く寝なきゃと気はせるけれど昼寝のせいでぜんぜん眠気がやって来ない。
コンビニに走って安い赤ワインを一本購入。八分目ほど飲んでやっと睡眠導入剤が効き始め札幌初日が終わった。

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