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無差別級!リレー小説④ゆか

「で、ワタシの話なんだけど、」

良く晴れた夜、澄み渡った真っ黒な空。鋭く眩い星々が瞬いて、薄い月が青白く浮かんでいる。

彼女の眼は悪戯っぽく、紅く灯っている。

「ワタシはね、屋根裏部屋にいたの」

「屋根裏部屋?」

「そう、いつもと同じ夜だった」

「そこが君の部屋なの?」

「うーん、半分せいかい、半分はずれ。わかる?」

「あぁ……まあ、うん」

「だいせいかい。でも、ワタシにとっては全然、悪いところでもなかったかも。父さんも母さんも妹も、誰も近づこうとしないもの。ワタシだけの場所」

「いいね」

「うん! ワタシはジッと、ジッとしていたの。ジッとジッとして、月が沈んで日が昇ってくる、その間ジッと、ワタシだけの時間を愉しむの……あの夜は違ったけど」

紅く燃える。

「父さんと母さんと、それから妹の声がしてね、凄く大きくて、凄く五月蝿くて……ワタシは、とにかくジッとして……暫くしたら、とっても静かになった。そうっと、屋根裏部屋から出てね…………それで。」

彼女は立ち上がり、薄い月の下でくるりと回ってみせた。

「……それで、"成った"」

「その通り! ジャーン」

「怖くなかったの?」

「うーん……全くないってのは、違うかも。でも、そうね、ワクワクしたかな」

「ワクワク?」

「そう、ワクワク……ドキドキ……ゾクゾク……ウズウズ……高揚感、ってヤツ。もう、"成って"からずっと、サイコーのキブン。仲間もたくさんできたし。」

「そっか」

「キミは?」

「え?」

「"成って"から、暫く経つでしょ。キミのことも教えてよ」

舞台を創ること以外にも創作がしたい、これまで舞台で表現してきた物語や世界をもっと知っていただきたい、楽しんでいただきたい……そんな思いから始めたnoteです。 細々と更新しておりますが、少しでも楽しいをお届けできていれば幸いです。 もしよろしければ、サポートよろしくお願いします!