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無差別級!リレー小説⑧ゆか

「……また、とは限らないのに、なぁ」

寝床に帰ってからというもの、僕は何度目かの同じ台詞を呟いた。

大嫌いな、大嫌いだったこの街。僕に気づかないフリして笑う朝は、今初めて僕にだけ、笑いかけてくれているのだろう。きっと、今更、なんでもないような顔をして。

僕は朝から隠れるように、学校だった建物の影に腰掛けている。なんとなく、日課で来てしまう自分が恐ろしく嫌だった。けれども、あんなに煩かった場所が、今は静まり返ったただの影を落とすところになっているのをみて、その気持ちも収まった。本当に僕は、サイコーの一人なのだと、思い返す。

そしてすぐに、昨晩出会った彼女のことを思い出す。

「また、とは限らない……」

呟きは影へ吸い込まれていく。

彼女が言っていたように、陽の光に当たっても僕が消えることはなかった。
それなのに僕は、影の中にいる。今更僕に笑いかける朝に、その陽の光に、とてつもなく嫌気がさしたから。
今更、今更僕に、僕に構わないでほしい。誰も、何も。

けれど……。

……あぁ、眠たいんだ僕は。
ずっと、ずっと頭が、心が、身体が、僕の全部が、疲れて。
彼女の言う通り、夜起きていたから昼は眠い……あぁ、瞼の裏に彼女の紅が、張り付いたようだ。
何も考えず、見ず、感じずいられる、そうなれると思ったのに。
あの紅が忘れられない。昨夜の空気が、風が、音が、何もかもが。

僕は"成った"。けれど、そう、……ならなかった。

昨夜から、何もかもが初めてだ、紅に浮かされている。

今晩、僕は……。

とにかく、今は眠たい。

こんなに眠たいんだ、次に目が覚めたら、もう星は3つよりももっと多く、夜空に煌々と輝いているに違いない。

そのとき僕が何を思うのか、わからないまま……影の中で一人僕は、紅に飲まれまいと、眠りについた。

舞台を創ること以外にも創作がしたい、これまで舞台で表現してきた物語や世界をもっと知っていただきたい、楽しんでいただきたい……そんな思いから始めたnoteです。 細々と更新しておりますが、少しでも楽しいをお届けできていれば幸いです。 もしよろしければ、サポートよろしくお願いします!