母の電話

最近、何不自由もないのに、辛く感じてしまった。

家族から離れた暮らしを嫌になったのだろうか。

仕事はもう、やりたくない。やる気がない。やるべきことがたくさんあるのに、ただただやりたくない。どうして同輩の人や後輩の人がそんなにできているのかなって、不思議に思いながら、ぼーとして日々を過ごしていた。

家族とは、あまり連絡をとっていなかった。そして昨日、実家からの電話がきて、母がいろいろ話しかけてくれた。アパートのリフォーム、父の仕事、新居の整えなど、長く家に帰っていない私にとってはもう実感のない話だった。だからこそ、懐かしく、恋しく思うようになった。

「辛い時はいつも電話してね。母さん聞いているから。仕事やりたくなくてもいいよ、もうながい間、学校で勉強したり働いたりしてたでしょう。はやく、戻れるといいね」

と、母は優しく言ってくれた。

涙が出そうになった。早く、帰りたくなった。

今やっている仕事は、別に嫌なわけではなく、ただ休みたいだけかもしれない。博士課程への進学も、別にどうでもよくなったような気がする。課題をしている最中なのに、こう思うようになって、逃げたくもなった。

そうだ、私は、休みたかった。家族の側にいたかった。

「いつも話しかけてこいよ。いつ帰っても大丈夫だよ」みたいはメッセージを、母から受け取ったのが幸せだった。

これから、家族と一緒にいられる時間は、あとどれくらい残っているのだろうか。私が外で過ごす日々とともに、両親は老いていくだけだ。今はただ外で働いて、自分の生活しか考えなくて、そしてきっといつの間にか親と一緒に過ごす時間がなくなって、悔しくなってしまうかもしれないのだ。

今の歳で、私は同輩の人のように、独立して、外で働くはずなのに、こう人懐っこくて、親の側にいたいのは、おかしいだろうか。

高校から家族と離れて過ごしてきたので、失った時間を補いたかったからかもしれない。

子供っぽくて、格好悪いなぁって思った。

でも、母にとっては、私はきっとずっと子供のままに見えるかもしれないな。

もっと、親と電話するようにしたくなった。

過ごす時間を大切にしたい。

いつか、実家に戻れるといいな。

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