夜更けのアリア番外編「カフェテリアでの出会い」

 それは、アリアが都にやって来て間もないある日のことだった。その日はレッスンも休みだったので、気晴らしにアリアはまだ見慣れぬ街を一人散策していた。 白壁の輝く街に見入りつつ、人混みの中を掻き分けながら大通りを進み、人を避けて路地裏の方に入ると、そこには小さな喫茶店があった。伝統的な建築を思わせる優美な内装が窓から覗き、何処からともなくバターの食欲をそそる香りが漂ってくる。アリアは上がってきた涎をごくりと飲み、迷いなくそのドアノブに手を伸ばした。

 カランコロン、とベルを鳴らしてそのドアを開けると、店内は多くの人で賑わっていた。細やかな装飾の施された内装は、華やかながらも落ち着きがあり、何より店内で流れているクラシック音楽が心地よい。アリアはカウンター席に着いて、店員にパンとスープを頼んだ。

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