ピンクの雨

桜吹雪。
スカートが捲れそうな風がピューッと通り過ぎて行った。
満開の桜はその風に煽られサァサァと木々を揺らしながら花弁を振り散らす。

私はその幻想的な光景に思わず嬉しくなり、桜吹雪の下で両手を大きく広げクルクルとスカートを揺らしながら回った。
視界いっぱいがピンクの雨。
笑顔が零れるが油断していると一枚の花弁が口の中に飛び込んで来た。

慌ててべーっと舌を出す私を見て彼はパシャリとカメラのシャッターを切った。
そんな瞬間を切り取られ私は恥ずかしくて頬を桜の様にピンクに染めた。
よく見ると彼の頭にもたくさんの花弁が乗っていた。
何だか可愛らしくて私は彼の頭を指差し、笑った。
彼は、そんな私の笑顔の瞬間を待っていました、と言わんばかりにサッとカメラを構え直してまたパシャリとシャッターを切る。

ずっと降り続くピンクの雨が幸せを運んでくれる。
暖かな雨に打たれて私達はいつまでも笑っていた。