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不確実性のリスクとどう向き合うか

以前紹介した「やり抜く力(グリット)」を構成する要素として「リスクテイキング」と言う項目がありました。 多くの人がリスク回避的と言われている中で、どのようにリスクをとっていけばいいのか気になっていました。

そんな時に見つけたのがこの『不確実性超入門』と言う本です。 タイトルの通り不確実性に対してどのように対処するかがメインのテーマになっています。 認知バイアスのように人が陥りやすい不確実性の対応の誤りなども紹介されており、確率論のように無機質なものではなくより良い人間味のある内容を扱っている印象です。

今回はこちらの本の内容について図を交えながら簡単に紹介したいと思います。 興味を持たれましたら、ぜひ本書の方をご一読いただければと思います。

2種類の不確実性

不確実性と聞いたときどのようなことを頭に思い浮かべるでしょうか。 多くの場合は コイントスの裏表のようにランダムな現象を想像すると思います。 これももちろん1つの不確実性なのですが、 本書で扱う不確実性はもう一つ別の種類があります。それは相転移的な事象による不確実性です。 1つずつ詳しく見ていきましょう。

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・ ランダム性による不確実性

人は物事を予測しながら行動を選択しますが、どれだけ正確に予測しても必ずと言っていいほどランダムに予測からのズレが生じます。 このランダムに生じる予測からのズレが不確実性となりリスクを生じる要因となります。

ただしこのズレは何%でどれだけずれると言うことが予測できる場合が多いです。 つまり生じる事象に対する確率分布が想定できることになります。

この場合の対処法は確率と得られる価値のセットで行動の選択をするというものです。 例えば、確率分布を使って一定の確率以上で生じうる最悪の損失を計算することができます。 これをバリューアットリスク(VaR)と呼びます。 このVaRが許容できるかによってリスクを取るか取らないかを選択することができます。

・ 相転移的な事象による不確実性

2つ目の不確実性は確率的に生じるものではありますがその確率事態を予測するのがほぼ不可能な現象です。 仮想通貨のバブルなどがこのカテゴリに当てはまります。

 一般的なランダム性の中では程度の大きな現象はほぼ生じる確率がゼロに近くなります。 一方で現実の世界ではこうした程度の大きな現象はレアではありますが確かに生じることがわかっています。 このように通常のランダム性の中では起き得ないような程度の大きい現象が一定数生じる状況のことをファットテールであると言います。

このような稀で大きな現象と言うのは正のフィードバックループにより生じます。 例えば、あるYouTuberが人気になり急上昇ランキングに乗ることでさらに人気になりまたランキングに乗るといったように起こった事象が増幅する方向にループが生じることです。

このようなループは一度始まるとしばらくの間継続する性質があります。ただし、どのタイミングで生じ始めるかそしてどのタイミングでループが終わるかを予測するのが非常に困難です。 そのためバブルに乗り始めた後下り時を失敗して大損する可能性もあります。 この場合の対処法はタイミングを失うことなく冷静に降りることが重要になります。

4つの不確実性の病と対策

人は不確実性と対面した時、認知バイアスのせいでよく陥りやすい失敗があります。 それらの失敗を4つの病としてその対策とセットでご紹介します。

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・ 成功したのは自分が優れていたから病

人は誰しも成功すると自信を持つものです。 もちろん自信を持つのは悪いことでは無いのですが、過剰に自信を持ちすぎると自分のやり方に固執してしまいます。

相転移的な不確実性のため、 フィードバックループが生じているときは成功が成功を生みやすいような状況にあります。 この場合、成功の要因は成功自体であって自分のやり方や能力とは無関係かもしれません。 こうした体験を引きずってしまうと、新しい状況に対面した時その状況に適応することが難しくなってしまいます。

この病の対処法は失敗から学ぶと言うことです。 何かに挑戦して失敗したと言う経験は成功体験と同じか、それ以上に学習に役立つ情報を提供してくれます。 過去の経験から何かを学びたいならまずは失敗した経験の中から学びを得るようにしましょう。

・ 今までの努力を無駄にしたくない病

ある程度長いスパンでの計画を実行する時、 それまでに費やしてきた時間や労力といったコストを気にして計画の変更や中止が難しくなることがあります。 こうしたすでに支払われたコストは埋没費用(サンクコスト)と呼ばれます。

埋没費用は既に過去の時点で支払われたコストなので、本来現時点で計画をどうするかと言う判断において考慮する必要のないコストです。 計画を続けても、変更しても、中止しても、この費用がなくなるわけではありません。

しかし人はこの埋没費用をどうしても、現時点の判断に反映してしまうと言うバイアスがあります。 この場合の対処法は、選択肢の価値を現時点での価値で評価して判断することです。 この現時点での価値には、将来見込まれる価値や費用を含んでも良いですが、 過去の費用は含まないようにします。

・ ここを乗り越えれば何とかなる病気

人は苦境の中にいると、「この苦境を終えれば必ず良いことがある」と信じて苦境に耐えて身を置き続けることがあります。 ところが相転移的な不確実性でフィードバックループが生じている時、この苦境は更なる苦境を生み出し今よりも厳しい状況に陥る可能性があります。

また、苦境の中にある場合、人は認知判断に使うことのリソースが制限されている場合があります。 そうすると、よりバイアスの強い直感的な判断に頼った決定をすることが多くなってしまいます。 つまり、苦境の中では正しい判断ができなくなる可能性が高くなります。

この場合の対策としては、希望的な観測に頼るのではなく、常に最悪のリスクを想定し、そのリスクが許容できるかをもとに判断するのが大事になります。

・ 空気を読んでみんなに合わせよう病

人は社会的な生き物です。 集団で意思決定を行う場合、他の人に同調するなど意見を合わせようとする傾向があります。 集団として意見が一致している事は良い面もありますが、不確実性に対応すると言う面ではデメリットにもなります。

不確実性に対応するには様々な状況を想定してその対応を考えておくことが大事です。 集団の意見が画一的になっていると、多様な状況の想定が困難になります。 そのため多角的な意見や物の見方を取り入れるように集団をマネジメントすることが重要になります。

まとめ

『不確実性超入門』から2種類の不確実性と4つの人が陥りやすい失敗について紹介しました。 内容に興味を持たれた方は、 本書の方もぜひご一読下さい。


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