◆番外編.Rちゃんとの再会—ごめんなさいの理由が言えない③
ビジネスホテルみたいな作りのラブホテル。部屋に着くと言われる通りにベッドの端に座り、Rちゃんは照明を少し暗くすると服とスカートを脱ぎました。そして下着姿になるとそのまま僕の横に座り、お客さんを相手にするフリをして
「初めまして、Rって言います。お兄さんお若いですね〜」
そういうと、Rちゃんは僕のふとももに手をのせて耳元でこう言うんです。
「ちょっとお兄さんの上に座っていいですか〜?」
向かい合いながら、僕の上に座るRちゃん。目の前には女の人の胸が…僕はとても恥ずかしくて、顔が熱くなるのが分かりました。
「ほら、恥ずかしがらないで触っていいんですよ〜」
僕が目のやり場に困ってると、Rちゃんはいたずらっ子みたいに楽しそうな顔をしながら「どう?」と聞きます。
『どんな人が相手でもできるの…?』
「仕事だからねー(笑)」
『大変な仕事なんだね…』
「でも本当は…やっぱりなんでもない(笑)たいはこういう仕事してる人ってどう思う?」
『すごいと思うよ』
「嫌い?」
『好きではない…かな』
「じゃあ辞めよっかな(笑)」
『…?』
「…もし辞めたら付き合ってくれる?」
『僕がRちゃんと?』
「そう」
突然のことに僕は驚きました。
『仕事は関係ないけど…』
「私じゃダメ?」
僕は答える言葉が見つかりませんでした。『もし僕が今は男の人が好きだって言ったら…』と言いそうになったけど、言えませんでした。こんなに誰から見たって魅力的な女の人に告白されてるはずなのに。それから、僕は『男の人が好き』と誰かに言うことがこんなに難しいことなんだと、この時初めて気付きました。
『Rちゃんは可愛いし魅力的だと思うけど…ごめんなさい』
「そっか…人生で初めてフラれちゃった(笑)初めて会ったときから気になってたのにな〜」
『ありがとう…』
「あんまり言うと惨めになるからもうやめるね!無理矢理誘ってごめんね」
『ううん、とっても楽しかったよ…』
「また…Sくんの飲み会とかで会えたらいいね(笑)」
『うん』
僕たちはその場を離れるように外に出て、本当は同じ駅に帰るはずなのにホテルを出たところでお別れをしました。
「じゃあ…バイバイ!」
Rちゃんはそのままどこかへ行ってしまいました。この後、僕はRちゃんと連絡を取ることはありませんでした。
人生の中で、もしこの時僕がRちゃんとお付き合いをしてたら…きっと女の人にしか興味を示さない男になってたような。なんでかは分からないけど、今でもそんな気がします。
僕はお気持ちだけでも十分嬉しいのです。読んでくださってありがとうございます🥰