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ーあとがきー 今宵はどんなお酒を送ろうか

5章で区切りはあるものの長い小説でした。
お付き合い頂いた方、本当にありがとうございました。

今回は作者が酒をダラダラ飲みながら「今宵はどんなお酒を送ろうか」のあとがきを書く回でございます。

【なぜ、日本酒と薬剤師なのか】

私自身が普段は薬剤師をしており日本酒は好きで飲んでいました。SNSで活躍している薬剤師仲間のリアルタイムを日本酒を飲みながら見てるうちに、この人達の活躍をnoteに書き起こしてみたいなと思い始めたのが、きっかけです。

日本酒の世界も趣味でチラホラ顔を出していますが、日本酒と薬剤師って凄く似てるなぁと考えるようになりました。薬も日本酒も原価は安くなるばっかり。酒蔵の仕事も薬局の仕事も地味で全然目立たない。知恵を応用して酒を造る蔵人と知識を駆使して患者を守る薬剤師。なんだか似てませんか。

こうして、2つのジャンルが混ざった小説が面白半分に始まりました。お悩み抱えてるヒロイン薬剤師に日本酒を送り付けちゃうのって楽しそうっていう発想が発展していってあのような内容になりました。

【なぜ、会津の酒なのか】

会津は私の母方の実家であり、凄く馴染みのある地域でした。東日本大震災の被害を受け、風評被害も乗り越えながら頑張っている酒蔵が沢山あります。実際に現地に行って酒蔵さんや料亭で教えてもらったこともありました。noteを通して読者に会津の酒蔵の背景やお酒のストーリーも知って欲しいと思い、この小説に組み込みました。

ちなみに作中に出てきた酒屋・谷芯は仮名ですが、実在します。

あんな差出人記載なしで送り付けるっていう訳わからんサービスはやってませんけどね。笑

後程、そのことも綴りますね。
ここからは章ごとに記載します。
各章タイトルは主人公の個性○○と酒の銘柄△△というスタイルで統一しました。

1.社畜と蔵粋

このお話は体が弱い私の友人の話を参考にしました。私もドラッグストア勤めなのですが本当にハードです。時間も長いし体力勝負。友人はエリアマネージャー等の上のポジションに就きたかったみたいですが、体が弱く体調を崩すことも多かったので断念してパートになりました。そう、実は早苗ちゃんのモデルです。主人公である夫の颯くんは構想の段階で後から足しました。笑
凄く異動が多いし調剤併設であれば処方せん調剤の他に市販薬の販売、レセプト…やることが多いです。
蔵粋を造ってる小原酒造は家族経営の為、人がいなく仕事が多い。でもリキュールは一切造らず純米酒にこだわる。この共通点をひねって最後まとめました。颯くんは後に何回か出てきますが、ただ単に彼の設定年齢が若かったので出しやすかっただけです。笑 
5章で颯くんが購入している小原酒造の「國光」は市内からあまり出ることがなく開封数日後にバニラ香が出てくる面白いお酒なので見つけたらご購入をお勧めします。

【小原酒造】


 2.ジャンヌダルクとスノードロップ

Twitterのフォロワーさんのエピソードを頂いて、そのまま物語にしました。ある一部の設定を除けばほぼ8割本当の話と言ってもいいでしょう。作中では「薬局の祭典」となっていますが、これは実際にあるイベントをモデルにしたものです。薬剤師だけでなく一般の人も審査員として参加できるイベントで毎年秋に開催されております。興味があれば是非ご参加ください。

【薬局アワード】

主人公の夏帆ちゃんが、一生懸命取り組んでいる緊急避妊薬を薬局で販売出来るようにすることは国単位で揉めていることです。色々な考え方があるのですが…私は緊急避妊薬はいざ必要になった時に一刻を争うものなので、すぐにアクセス出来る薬局という場所で販売が出来たらもっと多くの女性を助けられるのに、と個人的に思います。夏帆ちゃんのモデルになった鈴木怜那さんは2022年10月に一般社団法人を設立しました。第3章に出てくる友里恵ちゃんがお手伝いに加わっているのでそちらで紹介します。

【鈴木怜那Twitter公式アカウント】
https://twitter.com/reinapharma?t=hyUbjSYNZl1iBbcmQkDGsw&s=09

会津坂下の曙酒造はスノードロップよりも日本酒の天命や一生青春の方が知名度は高いかもしれません。スノードロップは福島県の野菜や果物を使って会津乳業のヨーグルトと曙酒造の日本酒で造り上げたヨーグルトリキュール。日本の数あるヨーグルトリキュールの中でもテロワールにこだわったレベルの高い商品となっております。私が過去に飲んだことがあるフレーバーでトマト味が最強に美味しかった記憶があります(期間限定だったので現在はありません)

通年のフレーバーはプレーン。季節によって苺、ブルーベリー、プレミアムが出ます。下記、会津でスノードロップをネット購入出来る酒屋サイトを添付します。興味があればどうぞ。ちなみに夏帆ちゃんのモデルになった鈴木さんもこのスノードロップが大好きだとか。

以下、スノードロップ取り扱い酒屋を添付します。
4章に出てくるロ万や3章の会津中将の取り扱いもあります。

【五ノ井酒店】

【會津酒楽館 渡辺宗太商店】


3.大和撫子と会津中将

第2章と絡む内容になりますが、友里恵ちゃんを取り巻くSRHRの回になります。恥ずかしながら私、このアルファベットの略語を完璧に全部言える自信はないです…(おい)ということで以下黒カッコはネットより引用。

【英語のSexual and Reproductive Health and Rights、頭文字をとって、「SRHR」と呼称されます。日本語では、「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、内閣府や全国の自治体でも使われています。すべての人の「性」と「生き方」に関わる重要なことです】

このお話のとても恐いところは、友里恵ちゃんが退職したような会社がまだゴロゴロと世の中に実在するということです。ほぼ8割実話。これもフォロワーさんからエピソードを頂いております。私も書いてる途中でイライラしたくらいでした。前例がなければやらないのかよ!ってね。

船越先生が登場したことにより友里恵ちゃんは救われましたが、同時に伊根の酒蔵に行くというイベントが発生した為、2022年8月に実際訪問した伊根の旅行を思い出しながら書きました(京丹後行っておいて本当に良かった!)
船越先生もフォロワーさんにいらっしゃる方がモデルで2022年の薬局アワード本選でプレゼンをして賞を取っております。彼は「社会的処方」という考え方を掲げて地域医療に貢献している薬剤師さんです。とても素敵な考え方で作中でも友里恵ちゃんの心を動かす鍵になりました。

友里恵ちゃんモデルのフォロワーさんは、おしとやかな姉御肌で酒が飲める方だったので、それを表現するタイトルが欲しいと夫に相談した結果「大和撫子」という言葉がポロッと出てきたので、それだ!とそのまま頂きました。

SRHRは2章でお話した通り、鈴木怜那さんが2022年10月に一般社団法人を設立しております。
緊急避妊薬や性教育にも深く関わってくる分野になるかと思います。興味があればホームページを覗いてみてください。

【SRHR pharmacy PROject】
(Twitterアカウント)
https://twitter.com/srhrpharmacypro?t=1Z3TkByxPSDxWBMDnZyO1g&s=09

(公式ホームページ)
https://srhrpharmacyproject.org/

会津中将を造ってる(作中では主人公の名前を模した「ゆり」という商品が出ています)鶴乃江酒造。女人禁制と言われてきた酒蔵ですが、最近は色んな酒蔵で女性の杜氏さんも増えてきた印象です。こちらの杜氏さんは結構前から女性が杜氏を務めてらっしゃったので歴史的な苦しい背景もあったと思います。そんな時代も知ってるからこそ、力強いお酒が造れるのだと個人的に思いました。

作中に出てきた「ゆり」は勿論、「永寳屋」は私のお気に入りです。2022年5月に飯坂温泉の日本酒バー付きホテルに泊まった時、スタッフさんに青梅の煮付けと合う日本酒をくださいと伝えて出てきたのがこの「永寳屋」でした。スッキリしてるのに溢れる果実感が癖になり、もう何度も購入しております。

【鶴乃江酒造】

※永寳屋が購入出来る酒屋は確証がないのですが、東京の日本橋にある福島県物産館、2章で紹介した會津酒楽館 渡辺宗太商店で私は過去に購入しております。

【日本橋ふくしま館 ミデッテ】
https://midette.com/


4.女神とロ万

正直言って一番どうやって書いていいか分からなくて混乱していた回です(それ言っちゃう?)
私は病院薬剤師をやったことがなくて新卒からずーっとドラッグストアで務めてきたので、下手なこと書いたら優秀な病院薬剤師さん達に怒られるなぁと思っておりました(怯)
このお話は私のオリジナルですが、私が病院薬剤師の経験がない為、ベテラン病院薬剤師のフォロワーさんに助け船を出して頂きました。その方をモデルに書いております。

初めは薬薬連携(病院薬剤師と薬局薬剤師の連携)で書こうと思っていましたが、構想途中でこんな普通の設定つまらないな。ブッ壊しにいこう!となり、実習生の歩実ちゃんが登場しました。彼女にはだいぶ作中で暴れてもらいました。笑

4年制と6年制の育った環境での見えない壁、病院薬剤師になりたい薬学生が少ない現状や、病院薬剤師の業務の多さ、それに反比例する給料の少なさなど、色んな問題に触れながら物語を進めていてキャラクターに温度が出て来て途中で書くのが楽しくなっていました。
相沢先生も主任でポジション的には大変だったと思いますが、笠松くんも指導薬剤師をやりたいって自分では言ったものの実際の業務内容で考えたらかなり過酷だったのではないかと。個人としては病院薬剤師はやりがい搾取になりがちなので給料を増やして欲しいなと切に思います。

ロ万を醸している花泉酒造ですが、モデルになったフォロワーさんのイメージかつ、私の大好きな酒蔵さんです。ただでさえ病院薬剤師の話なんてやったこともない仕事の話を書こうとしてるのに、そこに自分がよく知らない酒蔵なんて掛け合わせられない(汗)

花泉酒造さんは2019年にお酒の会に参加したことがあって、そこで社長さんにお酒のコンセプトやお酒の造りについてプレゼンして頂いたのを個人でメモしていました。まさか、このメモがここで役に立つなんて。笑
Twitterで面白いと反響があったのはこの病院薬剤師の回でした。恐縮です。

季節ごとに色んなロ万が出荷されておりますが、私の一番の推しはゼロ万です。12月最初に出荷され、2週間くらいしか出回りません。ロ万の中でもフレッシュでかつバランスの良い味わいを楽しめます。

【花泉酒造】


5.やさぐれ男と弥右衛門

フォロワーさんのツイートから全てネタを提供してもらったような物語です。かかりつけ薬剤師制度に関しては批判的な意見もありますが、点数を取る取らないに関わらず、あのように患者に寄り添えるのか?と書いてる自分自身も日頃の行いを振り返る機会を頂きました。薬の供給不足問題を取り入れてみようと考えたのは書いている途中からでした。薬がなくて大変なんだ!と大雑把に物事を伝えるよりも私達がきちんと薬を渡したい1人1人の患者の薬がないんだと細部の現状を知ってもらいたかった。最後にも書きましたが、自分を認めることは良いことだけれど、そのままにするのは驕りになる。驕りになればそこから成長はありません。きっと薬剤師だけでなく全ての仕事において言えることだと思います。モデルのフォロワーさんに好き勝手書いて良いと言われたことをいいことに人の繋がりや自身を見つめ直すことを好き放題書かせて頂きました。ありがとうございます。

大和川酒造は私が凄く感銘を受けた蔵です。
作中には書きませんでしたが、大和川ファームという自社の田んぼも持っていて米も作っています。
彼らがソーラーパネル事業をやっているという情報を教えてくれたのは、広島県の瑞冠を醸している山岡酒造さんでした。広島の日本酒イベントのワークショップで同席させて頂いて、その際にお聞きしたことです。それがきっかけで私は大和川酒造さんに訪問しております。

また、喜多方のオーベルジュを経営されている志ぐれ亭さんにお伺いしてお酒を提供して頂いた際「桃の涙」誕生経緯を知り、食事中にも関わらずボロ泣きしてしまったことがありました。こんなにも地域に貢献している酒蔵はないと、この物語の主人公とマッチアップさせました。

弥右衛門シリーズは勿論お勧めですが、私はsun(サン)というお酒が好きでリピート買いしております。空けたてはレモンみたいな味をしているのですが、開封翌日以降は酸味の利いた旨味どっしりの味に変貌します。こんな短い期間で明らかに顔が変わるお酒があるんだ、と驚かされた記憶があります。興味のある方は飲んでみてください。

志ぐれ亭さんに関しては私が別でnoteを書いております。こちらも良かったら読んでください。

※酒屋・谷芯について

この酒屋、実はモデルが喜多方の市内に存在します。
「しんたに」という酒屋さんです。5章で書いた通り、大和川酒造から徒歩5分くらいのアクセスです。

パッと見、酒屋には見えませんね。
牛の人形がベンチに腰かけています。

「これって何屋…?」と、颯と拓也が2人で言ってしまう気持ちが写真で伝わったと思います。 
作中で送られていたスノードロップとロ万の取り扱いはありません。逆にその他は取り扱いがあります。ホームページでご確認ください。

喜多方のお酒に関しては鬼のような取り揃えです。
現地に行ってみて試飲や買い物もありですが、ネットショッピングでも「こんなの販売しているの?」というお酒が出ていたりします。1章の蔵粋、3章の会津中将、5章の弥右衛門の蔵元さんのお酒はこちらで購入が可能です。商品はその都度チェックしてみてください。

お酒の説明文も見ていて、酒蔵やお酒への愛を感じるものばかりです。
作中の手紙部分で一部、しんたにさんのお酒の説明文を引用させて頂いている回もございます。

私もお歳暮や大切な人への贈り物に、しんたにさんのネットショッピングを利用させて頂いております。

雪中百姫の正体を最後まで明かさなかったのは、主人公に各物語を全うして欲しかったのと読者に番外編を読んで欲しかったという私の我が儘が故です。

番外編出して反応しだいで違うタイトルで続編を書こうかなと模索中です。皆さま読んでください。涙

以上、酔っぱらいながら書き上げた後書きでした。
「今宵はどんなお酒を送ろうか」シリーズは終わりますが、今後ともよろしくお願いします。

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