とおの屋 要 で感じた発酵の力
こんにちは。sainokuniです。
今回は岩手県の遠野にある、とおの屋 要 さんについてお話したいと思います。
無肥料、無農薬で米を作り、自家製どぶろくも造る。
かつ民宿を経営されているとのこと。
以前から気にはなっておりましたが、やっと訪問出来た。
こちらの民宿、何が凄いか。
もう、料理と酒でしょう。
民宿に料理を食べに行ったと言っても良い。
自家製のどぶろくもとっても美味しい。
そう、遠野はどぶろく特許をとっている地区なのだ。
もともと恵比寿の日本酒バーで飲んでいたときから、こちらの民宿は知っていたけれど、料理を通じて発酵というものを凄く身近に感じられる。
これだけ料理と酒とは言ったけれど、民宿じたいも雰囲気があってとても素敵。
今流行りのオーベルジュってカテゴリーに入るお宿さんだと思う。
今回は写真多め。それではいってみましょ。
【お部屋】
まるで、酒蔵一棟を1泊貸してもらったような。
シンプルな玄関。
お風呂は木の温もりを素肌で感じることが出来る。
料理はこちらで頂いた。
席につくと、ワイングラスが入った戸棚。
岩手の南部鉄器の急須がテーブルの上にのっている。
【料理】
勿論、自家製のどぶろくでスタート。
飲み物は他にワインがあった。ノンアルコールも充実。
メインの料理がくるのを待つ。
①芋さら
じゃがいもを潰したものに味噌を混ぜ込み中にクリームチーズが入ってる。
散らしてある自家製アジュワンシードをまぶして食す。
×遠野のどぶろく、速醸の火入れ。
濃厚なクリームチーズとどぶろくがマッチ。後追いでスパイシー、芋の甘味が残る。
まさか初っぱなから芋を潰してさらに造形したものが出てくるとは思いもしなかった。
アートというか、【美】と言っていいと思う。
②納豆のスフォルマート
自家製の納豆が入っていて梅の餡と卵と合えて食べる。藁っぽい香りがどこか漂う。
合わせるのは遠野1号の水もとのどぶろく。
納豆の旨味が梅の餡と卵のトロリとしたテクスチャーに寄り添ってくる。
岩手県で有名な柳屋というラーメン屋さんはご存知だろうか。
筆者もこの民宿に立ち寄る前にランチで食べてきたのだが、納豆×キムチのラーメンを売りにしている。
地元で愛されておるソウルフードと言っていい。
このラーメンとニュアンスにが似てるこの料理。
酸味はキムチの酸味ではなく梅の酸味だけれども、なんとも岩手らしい。
発酵食の納豆をここまでお洒落に食べたのは人生初めてである。
③ばっけ(蕗の薹)と鳥の藁燻し
ばっけとは蕗の薹のこと。
地方では蕗の薹の味噌のことをばっけ味噌という地域もある。(ちなみに筆者の住んでる関東はフキ味噌と呼ぶ)
今年最後の蕗の薹と鶏肉を自家製の藁で燻して中にクリームチーズを入れたもの。
蕗の薹の苦味がたまらない。
どぶろくは一品目に合わせたものをお燗で。
心地いい「甘苦い」が口の中で出来上がる。
料理で苦いという味は嫌われ易い。
ただ、「旨苦い」や「甘苦い」といった味はどうだろう。またお酒を飲む上では苦味という味覚はとても好かれる。
絶妙な蕗の薹の苦味がお酒を勧め飲食する人間を虜にすると言ってもいい。
④なれずしの茶碗蒸し
なれずしをご存知だろうか。
筆者はこの民宿に宿泊して初めて知った。
主に米と塩と魚を乳酸発酵させる食品で保存食だ。
こちらのなれずしは魚ではなく豚の前足の裏側の肉を使用している。
何故、その部位の肉なのか。
豚の前足の裏側というのはあまり使われなく捨てられてしまうことが多いそう。
なんとかして上手く使えないものか、と試行錯誤した結果、なれずしになったとの話だ。
「ちょっと酸っぱいかもしれません」
と、スタッフさん。
口にしてみる。刺すように最初は酸っぱいけれど、それが消えるのは秒だった。卵のふんわりとした風味にすぐ包まれ豚のキシキシとした旨味にシフトした。
酸っぱ旨いとはこういうのを言うのだろう。
癖があるけれど、癖になる味。
⑤トラフグの白子、ホタテの糠漬けのくずきり
トラフグは釜石産。
くずきりに浸かってるのは出汁。柔らかくて繊細。
くずきりはもっちもっち、うどんを食べているかのよう。
どぶろく水もとの加水のお燗と。
どぶろく酸がど真ん中にきて、旨みをひく。
出し汁に浸かったくずきりなんて、初めて食べましたよ。パラッと散らしてある薬味の紫蘇がまたほんの少しのアクセントになって良い。
⑥トラフグの身をカツオの内臓を発酵させたものにくぐらせて焼いたもの
塩味が程よい。
トラフグは弾力があり、いつまでも噛んでいられる。その都度、旨味が染みでる。
継続でどぶろく水もとのお燗。
ご飯に焼き魚を載せて食べてるような相性の良さ。
小さい身なのに凄く充実感のある一品。
⑦ひっつみ(郷土料理)チーズとホヤ塩を合わせたもの
ひっつみ、とは岩手の郷土料理。
ホヤは三陸メインでよく捕れる海産物。
別名、海のパイナップル。
そのホヤの味を塩にうつしたホヤ塩。
ホヤ塩がチーズと合わさるとまるで、カラスミみたい。
すいとんというより、お餅。
どぶろく(水もとお燗)と合わさるとチーズ感増し増し。甘味がでる。
⑧海のキャラメル
岩手産の牡蠣をキャラメル仕立てに仕上げている。周りにはまつもという海藻がまぶしてある。
合わせたのは玄米のどぶろく。
酸味強め。飲むヨーグルト。
これは驚いた。
合わせるとオレンジチーズケーキみたいな味になった。
海藻と貝がまさかお酒との組み合わせでデザートみたいな味になんてなると思わないじゃない。
また1粒というのが口直しに良い。
⑨鹿肉の藁焼き
藁の香りが凄い。
燻製みたいだけれど、そこまで癖が強いわけではなく、優しい。
塩味は最初強いがすぐ消えて赤身さが出る。ギリギリした感じはない。
ずっと噛んでいられる。
玄米のどぶろくを合わせるとヨーグルトソースと化した。
⑩玄米のリゾット
オキエビを塩漬けにしたものが玄米のリゾットにのっている。
塩漬けじたいは凄くしょっぱい。
リゾットと合わせて良い塩味、旨味が分散される。
土のミルクと共に穏やかで最高な〆だった。
さて、土のミルクとは。
勿論どぶろくは美味しかったことは言うまでもない。
飲み物で一番感動したのはこのノンアルコール飲料なのです。
なんと、これ水と少量の塩と米から出来ているという飲み物。
飲んでみたら、牛乳より癖がなく、豆乳より柔らかい、でもミルクと呼ぶにふさわしい。凄く美味しかった。
口当たりもソフトでしつこくなく、ずーっと飲んでいられる。食事の味も邪魔はせず、むしろピッタリと寄り添ってくる。
遠野のファミリーマート3店舗で取り扱いがあり、ネットでも購入できるそう。
もはや、帰りにファミリーマート寄って買いましたとも。
そして部屋に帰って飲んだのがこれ。(まだ飲むんかい)
どぶきゅ~る(林檎)
世界初のフルーツ味のどぶろく。
原料は果汁と米と米麹だけ。
糖類、糖液の添加は一切なし!
これ、最近調べたら洋梨と林檎の他に白ブドウと赤ブドウっていうのが新しく出てるのね。
洋梨は恵比寿で飲んだことがあったので今回は林檎を。
果汁とどぶろくって凄く合う。
どぶろくで果汁のみずみずしさが加速してる感じ。
食後のデザートにふさわしい飲み物であった。
オーベルジュもやって農家もやって商品も出してって2足どころか3足の草鞋ですよ。
こんなに発酵食品を食べることが出来る民宿もなかなかない。
〆のどぶろくを飲んでぐっすり寝た後の朝ごはん。
釜で炊いた米【とおの1号】
つやっつやのピカピカ。
どぶろくに使用しているお米。
味はあっさりしてるが粘度が少し高くもっちり。
小鉢、佃煮、煮物、味噌汁。
朝ごはんとしての量も丁度良い。
貝の内臓、河豚の皮など発酵させた食材を使用している。
デザートがまた美しかった。
葛餅の上にかかってる、このきな粉みたいな粉。
これ、実は米ぬか。
農薬を使ってると風味が変わってしまうからと無農薬で育てている米だからこそ出来ること。
多分、何にも言われなかったら米ぬかだと分からずに食べてましたね。
きな粉よりあっさり、ほんのちょっぴり塩気があって香ばしい。
コーヒーと一緒に美味しく頂いた。
【泊まってみて】
【食】を中心に凄く楽しませて頂いた。
遠野という場所は岩手県の内陸にあることと1年の半分がほぼ冬と言われる地域柄から発酵食品がより身近な存在になっている。
ただそれを提供するのでなく1つのアート、1つの物語を感じさせてくれる。
普段スーパーで買って食べているパックになってる納豆、プラスチックケースに入ってる味噌。
あれらも発酵食品だけれど藁の香りがするのだろうか、大豆の粒のざらつきも感じるだろうか。
存在する食べ物そのものの素材を大切にする。
発酵という現象は身近で起きてるからこそ、距離が近くなりすぎて、当たり前になって分からなくなってしまっていたと思う。
初心に戻って考える機会をもらった。
季節を変えて何度でも泊まりにいきたい。
■1日1組限定▲1泊1人38000円(2021年現在)
とおの屋 要
読んで頂きありがとうございました。
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